勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【234話】 ミミック保管計画

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ミミック保管計画最終日、明日はフユネコが仕切る商店のミニミミックくじが開催される日。
リリアはミミック保管計画のため世話をしに来ている。


捕獲されたミミックはフユネコのお店の倉庫に檻ごと置かれている。
保管は二泊三日と長くなく、結構危険なのでミミックはロープで縛られ、檻ごと布をかけて鍵がかけられている。
リリアが世話係なのだが、コトロから単独で檻に入らないように厳重に注意されている。

「ガスコインからの報告を聞きました。食べられかけたのですね… 良いですか、保管の間は絶対に一人で世話をしないでください。ミミックの生態までは知りませんが、おそらく一ヶ月に一回、少量の餌でも十分生きていけるはずです。別に2,3日程度放置したって構わないはずです。無理に近づく必要もありません」コトロが厳重注意。
「…何で皆、リリアが齧られた事ばっかり報告するのよ… あたしもっと他に語って聞かせるような大活躍してるんだけど…」リリアは不満そうにしている。
「いいですか!!そんな問題じゃないのですよ!後少し発見が遅れていたら今頃ミニミミックの当選者はリリアの弓とダカットがプレゼントになっていたんですよ!ちょっとは考えてください!」コトロにメッチャ怒られた。


で、リリアはコトロとネーコ、ラビを伴いフユネコさんの商店にやってきている。もちろんミミックのお世話をするため。
「ん?ミミックの生存確認さえすれば餌は必要ない?… そうかも知れんが… やっぱり、丸まると肥えていて元気な方がお客さんも喜ぶよ」
コトロが説明したがフユネコは丸まると肥えたお腹をさすりながら元気に答えている。

「… 仕方がないですね、契約がありますし、リリアも今後仕事しないといけませんし… とにかく慎重にいきましょう。私が落ち着きの調べを奏でるのでリリアは十分気持ちを落ち着かせてから檻に入ってください。ネーコとラビは私達に何かあったらフユネコさんと近くの冒険者ギルドに知らせてください」コトロが指示を出す。
「リリたんはアスタルテとダスクアーナのアイテムで精神プロテクトあるニャン?呪文にかからなはずニャン?」ネーコが聞く。
「確かに効果は符術されているようですが、微弱な上、何といってもリリアが単純な人間ですから、暗示にかかりやすいのですよ。単純思考の人間が暗示にかかりやすいので恐らくリリアの短絡的思考はアイテム効果を凌駕し… いたいたた… リリア、そんな事して私がリュート演奏できなくなったらリリアはミミックのお腹の中ですよ。当選者はリリアの髪の毛を貰う羽目になりますよ」コトロ。
「リリたんが丸のみされたらお葬式も出せないピョン」ラビもビビっている。
「コトロは失礼の極みだよね!失礼の大盤振る舞いか!リリアを見くびり過ぎだよ」
「でも、実際食べられかけたニャン…」
とにかく、リリアは檻から布をどかす。

「これがミミックにゃん?」
「ロープでグルグル巻きピョン」
「リリアが食べられかけた後、ガスコインがぐるんぐるんにしたんだよね」リリアが苦笑い。

コトロがリュートを演奏し始めた。リュートの澄んだ音色とコトロの唄が倉庫に満ちる。
「今日はバーで聞くのと違うニャン」
「素敵ピョン、気合が違うピョン」
うっとりと聞いていると心も安らいでくる。
「コトロは上手だけど、精神効果はいまいちなのよねぇ」
リリアがえっへっへと笑いながら言うとコトロが睨んでいた。



「ガス、縛り過ぎだよね、ほどくのに大変だよ」
檻に入ったリリアはブツブツ言いながらロープをほどいて行く。もちろん一匹づつ餌をやっては縛りなおす、これも約束事。
リリアは普段とあまり変わらない様子だ、呪歌にかかるのにコトロの唄は効かないのか?変な体質の勇者リリア。
「ほら、餌よ!ちゃんと食べて明日は貴重品をドロップするのよ!」
リリアが餌を与えようとするがミミックは全然口を開かない…
「あんまり縛っておいたからきっと死んだニャン」
「あんまり調べ回らない方が良いピョン」
ネーコとラビが様子を見て声をかける。
「死んだのかなぁ…また獲りに行くのいやだよねぇ、時間も無いし… もし死んでたら、またネーコとラビが魔物に扮してもらうしかないかなぁ…」
リリアはミミックを調べている。
「絶対嫌ニャン」
「叩き壊されるピョン」
二人とも首をメッチャ振っている。

「… 生きてはいるみたいだよ… コトロどう思う?ってコトロは答えられないのか… フユネコさんから餌代預かったけど、ケチって安いミンチ肉と枯れかけ野菜を安くバイレルさんから引き取ってきたんだよね… それとパンケーキ・青い鳥で余ったパンのミミ… 餌代ケチったのがバレてるのかなぁ…」
リリアは独り言をいいながらミミックを撫でまわしている。
「… たぶん餌の質は関係無いニャン」
「… 食べないなら放っておくピョン、置いて帰ったら勝手に食べるピョン」
「ミミックの飼い方なんてギルドの資料になくて、王立図書館行ったんだよね、雑食だから何でも食べるらしいよ… 鹿とか丸呑みらしいけど… 鹿肉の方が良かったのかな?」
「… だから餌の種類はたぶん関係無いニャン…」
「よし!こうなったらリリアちゃんも意地よ!テコでこじ開けてでも押し込んでやる!」リリアが変な決意を固めている。
「余計な事しないでください。食べないなら食べたくないのですよ、3匹とも食べないなら今日は報告して帰りましょう」
リリアが危険な発言をしだしたのでコトロが止めに入った。


「フユネコさん、3匹とも見てきたから帰るね。明日のミニミミックは朝から準備だね。えぇ?ミミックはどうだったって?調子よさそうだったよ。食欲はあんまりだったみたいだけど… こういう時は長居しても疲れるだろうし、ちょっと果物だけ置いて帰ってきたよ、ちゃんと痛くないように縛りなおしておいたから安心だよ」リリアが報告する。
「そうか、ありがたい。じゃ、また明日だね。ちょっと早めに来てもらわないといけないが、よろしく」
フユネコはお店と準備で忙しそう。


「良いのですか?肉と野菜持って帰ってきて」
帰り道にコトロがリリアに聞く。
「大丈夫だよ。だってミミック食べなかったし、明日の分は予算もらっているから… 悪くなる前にリリア達で食べちゃいましょう。今日はリリアの鶏鍋しますよ。それにちゃんと果物は置いてきたからばっちりじゃない」
リリアはポニーテールを振り振りしながらさっさと歩いていく。
「お見舞いじゃあるまいし… 縛られてどうやって食べるんですか」
コトロ達は苦笑い。
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