4 / 5
とある神社のゆく年くる年
しおりを挟む
雪がちらちらと降る大晦日。大きな神社には新年を迎えると同時に初詣をしようという参拝客で賑わっている。そんな神社から程近い場所。小高い山の頂上にあり、足場が悪く夜に参拝する人はいない小さな神社。その境内には賑やかな音が響いていた。もちろん、その音は人間には聞こえない。
「もうすぐ年が明ける。やれめでたや!」
「ささ、一献どうぞ」
賑やかにどんちゃん騒ぎをしているのはこの辺りを縄張りにしている妖怪たち。狸や狐、猫又に小鬼に天狗。酒樽を中央におき皆が楽しく酒を酌み交わす。ぽわりぽわりと浮かぶまるで海月のような妖怪たちがぼんやり光って境内を明るく照らしていた。
「ここに集うものたちも少なくなったな」
社に座って盃を傾けるのはこの神社に奉られた神。彼の方の言葉にそばにいた妖怪たちはしゅんとした。
「人間たちが増えれば我らの住処は減りまする。今の人間たちは我らを恐れたりもしませぬから」
「電気が通り、暗闇が減った。人間たちにとっては良いことでも、おぬしたちには辛いことよな」
「仕方ありません。これも時代の流れと思っております」
神の言葉に苦笑するのはこの辺りの狐をまとめる長だった。他の狐より体が大きく力もある。それでも往時に比べればかなり衰えてしまっていた。
「詮無いことを言った。許せよ。今日は存分に楽しむが良い」
神は静かに言うと楽しく騒ぐ妖怪たちに目を向けた。
この神社は昔から夜に登るには足場が悪かった。それでも昔は新年を迎えると同時に参拝にくるものもいたが、近くに大きく立派な神社ができると皆そちらに行くようになった。その頃から大晦日の夜は近くに住まう妖怪たちを集めて宴を開くようになった。
神も妖怪も人間が信じてくれなければ力は衰える。いつ消えてしまうかもしれない妖怪たちは大晦日の夜、この神社に集まって楽しむのだ。もしかしたら明日消えてしまうかもしれない恐怖を振り払い、今年も会えた同胞と再会を喜んで酒を酌み交わし、今年は来なかった同胞を偲んだ。
ここに集まるのはせいぜい人を驚かせるだけの妖怪たちだ。人間に害を成すようなものはいない。そのせいか、姿かたちもどこか愛嬌がある。狐や狸は愛らしい童子に化けて舞い躍り、小鬼と天狗は太鼓や笛を奏でる。ぽわりぽわりと浮かぶ海月のような妖怪にぽよんぽよんと跳び跳ねる水風船のような妖怪。猫又は美しい美女に化けて妖怪の長たちに酌をしていた。
「ああ、楽しいなあ」
妖怪たちが歌い騒ぎ、舞い踊る様を見て神が穏やかに微笑む。そうしているうちにどこからか除夜の鐘が聞こえてきた。
「おや、そろそろ年が明けますね」
狐の長の言葉にそれまでどんちゃん騒ぎをしていた妖怪たちが静かになる。妖怪たちは簡単に片付けをすると社の前に並んで座った。
「「神様、新年明けましておめでとうございます!」」
年が明けると同時に妖怪たちが声をそろえて神様に挨拶して頭を下げる。神様は嬉しそうに微笑みながらそれを見つめた。
「おめでとう。またこうして宴を開けたことを嬉しく思う。今年の大晦日もこのように賑やかに過ごしたいものだ。皆、今年も息災で過ごすが良い」
神様の言葉に一同が頭を下げる。そして再びどんちゃん騒ぎが始まった。
年送りの宴から年始めの宴に名前を変えて、神様と妖怪たちの秘密の宴は朝方まで続けられたのだった。
「もうすぐ年が明ける。やれめでたや!」
「ささ、一献どうぞ」
賑やかにどんちゃん騒ぎをしているのはこの辺りを縄張りにしている妖怪たち。狸や狐、猫又に小鬼に天狗。酒樽を中央におき皆が楽しく酒を酌み交わす。ぽわりぽわりと浮かぶまるで海月のような妖怪たちがぼんやり光って境内を明るく照らしていた。
「ここに集うものたちも少なくなったな」
社に座って盃を傾けるのはこの神社に奉られた神。彼の方の言葉にそばにいた妖怪たちはしゅんとした。
「人間たちが増えれば我らの住処は減りまする。今の人間たちは我らを恐れたりもしませぬから」
「電気が通り、暗闇が減った。人間たちにとっては良いことでも、おぬしたちには辛いことよな」
「仕方ありません。これも時代の流れと思っております」
神の言葉に苦笑するのはこの辺りの狐をまとめる長だった。他の狐より体が大きく力もある。それでも往時に比べればかなり衰えてしまっていた。
「詮無いことを言った。許せよ。今日は存分に楽しむが良い」
神は静かに言うと楽しく騒ぐ妖怪たちに目を向けた。
この神社は昔から夜に登るには足場が悪かった。それでも昔は新年を迎えると同時に参拝にくるものもいたが、近くに大きく立派な神社ができると皆そちらに行くようになった。その頃から大晦日の夜は近くに住まう妖怪たちを集めて宴を開くようになった。
神も妖怪も人間が信じてくれなければ力は衰える。いつ消えてしまうかもしれない妖怪たちは大晦日の夜、この神社に集まって楽しむのだ。もしかしたら明日消えてしまうかもしれない恐怖を振り払い、今年も会えた同胞と再会を喜んで酒を酌み交わし、今年は来なかった同胞を偲んだ。
ここに集まるのはせいぜい人を驚かせるだけの妖怪たちだ。人間に害を成すようなものはいない。そのせいか、姿かたちもどこか愛嬌がある。狐や狸は愛らしい童子に化けて舞い躍り、小鬼と天狗は太鼓や笛を奏でる。ぽわりぽわりと浮かぶ海月のような妖怪にぽよんぽよんと跳び跳ねる水風船のような妖怪。猫又は美しい美女に化けて妖怪の長たちに酌をしていた。
「ああ、楽しいなあ」
妖怪たちが歌い騒ぎ、舞い踊る様を見て神が穏やかに微笑む。そうしているうちにどこからか除夜の鐘が聞こえてきた。
「おや、そろそろ年が明けますね」
狐の長の言葉にそれまでどんちゃん騒ぎをしていた妖怪たちが静かになる。妖怪たちは簡単に片付けをすると社の前に並んで座った。
「「神様、新年明けましておめでとうございます!」」
年が明けると同時に妖怪たちが声をそろえて神様に挨拶して頭を下げる。神様は嬉しそうに微笑みながらそれを見つめた。
「おめでとう。またこうして宴を開けたことを嬉しく思う。今年の大晦日もこのように賑やかに過ごしたいものだ。皆、今年も息災で過ごすが良い」
神様の言葉に一同が頭を下げる。そして再びどんちゃん騒ぎが始まった。
年送りの宴から年始めの宴に名前を変えて、神様と妖怪たちの秘密の宴は朝方まで続けられたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について
いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。
実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。
ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。
誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。
「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」
彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。
現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。
それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる