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18話 レイの過去
しおりを挟むレイが僕がを抱き上げてシャワールームから出ると、ルーラが心配そうに見ていた。
「クリスは大丈夫だ、ルーラ、ありがとう」
レイが言うと、ルーラは安心して一礼すると部屋を出ていった。
それを見てから、僕をベッドに降ろすと、身体に毛布を掛けてくれて、髪をタオルで拭いてくれる。
「・・・で? 何で水浴びをしてたんだ? 」
レイに問いただされて、ドキッとする。
「別に・・・何となく、水浴びしたかっただけだよ」
僕はレイの顔を見れずに俯いたまま話した。
すると、レイが僕の顎を片手で持ち上げて僕の目を見る。
「ふーん? 言いたくないならいいけど・・・寂しかったのか? 」
レイの的確な質問に、一瞬ぴくっと反応してしまう。
「べ、別に・・・寂しかったわけじゃないよ」
寂しくて一人でした訳じゃないし・・・なんか頭冷やしたかっただけなんだけど、言ったら冷やしたくなった訳を聞かれるから言いたくない。
「・・・・・・そっか、風邪引かないようにちゃんと温まっとけよ」
目線を逸らして目が合わないようにしていると、レイが手を離して僕から離れた。
「え? 」
僕はこの流れからすると、レイが温めてくれるかと少し期待してた。
まぁ、自業自得なんだけど、優しいレイならぎゅってしてくれると思ってたのに、僕を離すと出ていこうとする。
レイの背中が少し冷たく感じて焦る。
「え? ちょっと待って! 」
僕は思わず呼び止めてしまう。
「なんだ? 」
レイが立ち止まって僕を見る。
あれ? 僕なんかレイを怒らせるような事したっけ?
なんかレイが怒ってるように見える・・・
「・・・レイ・・・行かな・・・で・・・」
何故か分からないけど、レイの態度に、とても寂しくなって涙が溢れた。
「・・・・・・どうした? 」
それでもレイは立ち止まったままで戻ってくる様子はない。
僕なんかした?
何でレイが急に冷たくなったの?
レイに冷たくされると僕、どうしていいか分からない。
僕にはレイしかないのに、寂しい。
「・・・・・・っ・・・寂しい・・・行かな・・・いで・・・」
溢れる涙を手で拭いながら自分の気持ちを言った後、僕はレイに抱きしめられていた。
「・・・・・・っ・・・ひっ・・・レイ?・・・」
「寂しいなら寂しいってちゃんと言えよ」
「うん・・・ごめんなさい・・・」
レイにぎゅっと抱きしめられて、レイの温もりに安心する。
「・・・で? 何で寂しかった? 」
しばらくぎゅっと抱きしめてくれたあと、レイが話しかける。
「・・・・・・レイは・・・僕の事が好きって言ってくれたけど、僕の前に付き合ってた人とか居たの? 」
話すの恥ずかしいけど、またレイに冷たくされるのが嫌で聞いてみる。
「・・・付き合ってた奴はいない」
そのあまりにも意外な返事に、僕は思わずレイの胸から顔を上げてレイを見上げる。
「え? 居ない? 」
今一瞬安心しかけたけど、いやいや、そんなはずないでしょ、レイのキスは気持ちよくなるのを知ってるキスだし、身体に触れる所も気持ちよくなる所を知ってる。
僕が初めてなんて事は絶対にないはず・・・
「何が言いたいんだ? 」
僕がじっとレイを見つめていると、レイが怪訝な顔で尋ねてくる。
「レイは、その・・・エッチした事あるよね? 」
これ聞くのめちゃくちゃ恥ずかしい。
付き合ったことないって言ってるのに、エッチをしたことあるって言うのは、エッチ目的だよね? それとも付き合ったことないって言うのが嘘?
レイは答えてくれるかな・・・?
「・・・なんだ? ヤキモチ妬いてるのか? それとも、俺に経験があるのか確認してるのか? 」
さすがに答えてはくれないか・・・
「うん・・・」
もし本当にレイに経験がないのなら、今までのエロい行為はどこで学んだの?
「レイはその・・・僕と・・・エッチがしたいんだよね? 」
僕の問いかけに、レイが僕を抱きしめたままボソリと呟く。
「やっぱり・・・あいつ何か吹き込んだな? ・・・」
そして、ゆっくりと僕を抱く腕を緩めて僕を見る。
「そうだ、俺はクリスを抱きたい。だけど、焦らないから大丈夫だよ」
そう言って微笑むレイはとても優しい顔をしている。
「でも・・・レイはずっと我慢してるんじゃないの? 」
「心配しなくても大丈夫だ。俺も経験くらいあるから無茶はしないよ」
そう言って笑うレイ。
やっぱり、経験はあるんだ・・・
「付き合ったことないのに? 」
思わず突っ込んで聞いてしまう。
「ああ、・・・セフレ的な感じの奴なら居た。お互い、遊びみたいな感じでじゃれあってたけど、今はしてないからな」
レイのその言葉に、僕は何故かピンと来てしまった。
僕って感はいい方なんだよね・・・当たってそう・・・
「・・・ナルサス? 」
僕の言葉に、レイは一瞬ぴくりと反応した後、僕を見て柔らかに笑う。
「お前、本当に察しがいいな」
やっぱり。
だからレイはナルサスには甘いんだ。
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