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11話 久しぶりの対面(シルル)
しおりを挟むその日俺は授業が終わると直ぐにリリアンナの所へ使いをやった。
久しぶりの再会は誰にも邪魔されたくないから、予め誰でも使える談話室は予約してある。
俺は片付けを済ませると、教室を出て談話室へと向かおうとした。
「シルル様、どこへ行くんですか? 」
声をかけてきたのはカイとセフィア、それにジュリアスだ。
「ちょっと用事、着いてくるなよ 」
この三人なら着いてくるって言い出しかねないので、予め釘を指しておく。
「えー? 絶対リリアンナ嬢に会いに行くんでしょ? 」
「ジュリアス、分かってるんじゃないか、なら久しぶりの再会なんだ。邪魔しないでくれ 」
「俺たちにも紹介してくださいよ、さっきは遠目でしか見れなかったら実際会ってみたいんです 」
邪魔しないでくれと言っているのにジュリアスは着いてこようとする。
「ジュリアス、シルル様も久しぶりにお会いするのだから今日は控えよう、また今度紹介して頂けばいいじゃないか 」
セフィアがジュリアスの肩を掴んで引き止めてくれた。
さすがセフィア。
「えー? 早く会いたいなー 」
「ジュリアス、リリアンナは僕の婚約者だからね、手を出しちゃいけないよ? 」
ジュリアスのこの食いつきよう、まさか王子の婚約者に手を出すバカなんて居ないと思うけど、とても怪しいので、とりあえず釘を刺す。
「そんなことしませんよ、 俺はただシルル様の可愛い婚約者ちゃんを見てみたいだけですよ 」
真面目に答えてるけど、女の子のことに関しては信用ならない。
でもまあ、ずっと紹介しない訳にもいかないしな・・・
「今日は入学式があってリリアンナも疲れてるだろうから、紹介は明日にしてもいいかな? 」
「分かりました、ありがとうございます 」
ジュリアスはすぐにでも会いたそうだったけど、セフィアがジュリアスの腕を掴んで強引に引き止めている。
セフィア、ナイスだ。
「じゃ、また明日ね 」
俺は3人に手をヒラヒラと振りながらその場を後にした。
予約しておいた談話室に行くと、リリアンナの姿はまだなかった。
良かった、待たせてたらどうしようかと思った。
俺はほっと一息付きながらやわらかいソファに深く腰を下ろした。
本来ならまだ学園に不慣れなリリアンナを教室まで迎えに行ってやるべきなんだろうけど、今回はあえてそれをしなかった。
あまりにも変わったリリアンナに、俺がテンパってしまいそうだったから。
周りに俺のテンパる姿を見られるのはさすがに王子として恥ずかしい。
リリアンナの婚約者がこんな男なのかと思われるのも俺の小さなプライドが許さないので、ここで落ち合うことにしたんだ。
アグリを迎えにやってるからもうすぐ来るだろう。
コンコンコン
俺がひと息ついて落ち着いた頃にドアが鳴った。
「どうぞ 」
俺が声を掛けるとドアが開いて、さっきとお目で見たブルーのドレスを着たリリアンナが姿を現した。
「リリアンナ、久しぶりだね、入学おめでとう 」
俺は立ち上がってリリアンナを迎える。
「シルル様、ご無沙汰しておりました 」
部屋に入ると、リリアンナが淑女の礼をして挨拶をする。
華奢な線の身体が、優雅に、軽やかに流れるように作る動作に、俺は一瞬見とれてしまった。
「とても綺麗になったね 」
俺はドキドキが止まらないのを隠すように平静を保ってニッコリほほ笑みかけた。
すると、リリアンナは頬を赤らめながら少し俯く。
「シルル様こそ、前以上に素敵にならましたわ 」
社交辞令だと分かっていても、他の誰に言われるよりもリリアンナにそう言われると嬉しいのは、やっぱり俺がリリアンナを好きだからだろうか。
「ありがとう、そう言ってもられると嬉しいよ、とりあえず座ろうか 」
椅子に座るよう促しながらも、まじまじとリリアンナを見てしまう自分がいて、人をジロジロと見るなんて、人として、王子としてやってはいけないと心の中の俺が叫んでいた。
「本当に、随分変わってたから最初分からなかったよ、僕がリリアンナを見失うなんてあっちゃいけないのにね 」
冗談交じりにウインクしながらハニカミ笑顔をリリアンナに向けると、リリアンナは目線を逸らして頬を染める。
そこへアグリがお茶を準備して運んできてくれた。
「ありがとう、アグリ 」
リリアンナはアグリにお茶を出されると、アグリに向かってお礼を言う。
リリアンナの外見は随分と変わったけれど、恥ずかしがり屋な所と、礼儀正しく、誰にでも礼を言えるところは変わっていない。
「あの、私何か可笑しいでしょうか? 」
しまった、ついまじまじと見てしまった。
「ごめんね、あまりにも綺麗になってるからつい見とれちゃったよ 」
「そんなこと・・・無いです・・・」
「そんなことあるよ、きっと努力したんだよね、前のリリアンナも素敵だったけど、今のリリアンナは努力の分だけ洗練された美しさがプラスされて、つい見入ってしまうくらい美しくなったよ 」
「あ、ありがとうございます 」
リリアンナは恥ずかしいのか、下を向いたまま目を合わせてくれない。
「学園に慣れるまで大変だと思うけど、分からないことがあったらいつでも言ってね 」
「はい、ありがとうございます 」
そう言って顔を上げて微笑んだ姿は本当に可愛かった。
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