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15話 レオルカ様の考え
しおりを挟む「で? 何か他にもお話がおありなのでしょう? 」
俺の魔力の事が気になったというのもあるだろう、だけどそれだけじゃない。
「ほんとにお前はつまんないね、せっかく雰囲気を和らげようとしてたのに 」
「申し訳ございません。そういう人間ですので 」
つまらない人間なのは分かっている。
セルジュ・ルーセントとはそういう男だ。
厳しい父と、俺に無関心な母の間で育ってきた。
ただ迷惑をかけない事だけを信条に、人一倍学び、人より優れた魔力の使いこなしが出来る程度に戦闘の訓練も受けた。
学校を出て早々に働きに出るのが俺の目標だったので、住み込みとしてチェスター家に雇って貰えたのは有難かった。
一般人としては裕福な家に育ったが、愛を与えられることは無かった。
なので、こうしてお嬢様やレオルカ様に暖かい眼差しで微笑みかけられる事に対してどう返せばいいのか分からない。
「ごめん、セルジュ、虐めるつもりじゃなかったんだ、そんな顔しないでおくれ 」
そんな顔と言われて我に返る。
どうやら俺は今にも泣き出しそうな、情けない表情をしていたらしい。
「いえ、こちらこそ申し訳ございません 」
「うん、気にしないで、それより、今日のディトス伯爵家での事、どう思う? 」
やはりその事か、俺は分身でディトス伯爵が我が子を使って賊を殺害するところを目撃している。
だけど、目撃していた事をレオルカ様は知らない。
「やはりその事でしたか、私もとても怪しいと思いました。どう考えてもハルバート様殺害に関わっているように思えるのですが、真相を知っていそうなあの賊達は恐らく口封じに殺されたかと思われます 」
「だろうね、俺もそんな気がするよ、だけどやっと掴んだ手掛かりだ、兄さんを殺した奴が誰なのか突き止めるチャンスだ 」
「はい 」
「俺はディトス家を少し探ってるつもりだ、出来ればセルジュにも協力して欲しい 」
レオルカ様は意思の強い眼差しで俺を見る。
「私に出来ることでしたら何なりと 」
「ありがとう、でも俺達は顔が割れてるからね、ユリウスも俺の傍付だから顔が割れてる可能性は高い 」
「そうですね 」
「他の者に探らせるつもりだけど、アイリーンが危険に巻き込まれないよう、気をつけていて欲しい。何か動きがある時には君にも手伝ってもらうことになると思う 」
「分かりました 」
お嬢様をお守りするのは俺の役目なのだから当然の事なのだけど、改めて言われると気が引き締まる思いだ。
「それにしても、今回の事は俺達にとっては僥倖だったね 」
「そうですね、1年前の事件の手掛かりを得ることが出来ましたし、お嬢様の婚約者として相応しくない事も判断することが出来ました 」
本当に、俺がジョルジュに見たあの影のようなモヤには理由があった。
俺がなにかした訳では無いけど、お嬢様が嫁ぐ前にディトス家の裏の部分が暴けて良かった。
「とりあえず、父上にも全てお話したから、明日にでも正式に婚約破棄の申し入れがされるだろう、後・・・・・・ 」
レオルカ様は何かを言いかけて少し黙り込む。その表情からは何時ものレオルカ様の飄々とした笑みは消えていた。
「後? 」
「いや、何でもない、それより来週俺が王都に行くのは知ってるよね? アイリーンも連れて行こうと思うんだけど、どうかな 」
来週、レオルカ様は王都で開かれる第2王子主催のパーティーに呼ばれている。
第2王子であるフェリス王子とはレオルカ様が王都にいた頃に親しくしていた仲らしい。
なので是非にとのお誘いだ。
そのついでに友人とも会う予定をなさっているので、王都の屋敷に1ヶ月ほど滞在する予定だ。
「はい、お嬢様も王都の屋敷に行かれるのは5年ぶりですし、気分転換にもいいのではないでしょうか 」
「うん、婚約の話を破談にしてしまったし、アイリーンも乗り気になってくれてたのに申し訳ないことをしたと思ってるんだ。少しここを離れて気分転換になればと思う 」
お嬢様の事を話される時は本当に穏やかな表情になる。
アイリーンお嬢様を愛されているのがよく分かる。
「そうですね、お嬢様には私からお伝えしても? 」
「うん、お願い 」
「畏まりました。では失礼致します 」
俺は一礼をしてレオルカ様の部屋を後にした。
それにしても、もしもハルバート様を殺害したのがディトス伯爵の指示によるものだとしたら、何故その妹であるアイリーンお嬢様と息子を結婚させようとしたんだ?
チェスター伯爵家と縁を結ぶのにハルバート様が邪魔だった理由は?
今の所レオルカ様が何者かに襲われたという話はない。
跡継ぎが邪魔だと言うならレオルカ様も狙われているだろう。
ディトスの狙いはなんだ?
まあ、俺が考えている事はレオルカ様も既に考えているだろう。
俺が出しゃばることではないか。
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