転生魔王は今日もお嬢様を愛でる。

さらさ

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19話 街歩き

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「アイリーン、今日は私の買い物に付き合ってくれる? 」

「私も行って良いのですか? 」

今俺達、つまりアイリーンお嬢様、レオルカ様、レオルカ様お付のユリウスと俺は王都にある屋敷に来ている。
一昨日王都に着いて昨日は1日旅の疲れを癒した。
朝食の席でレオルカ様が話しかける。

「3日後にはパーティーがあるからね、その前に少し買い物に出たいんだ、付き合ってくれるよね? 」

「はい、ご一緒致します 」

お嬢様も実は街へ出られるのが嬉しいんだろう。
とても嬉しそうに返事をしている。
その様子を見て、レオルカ様も満足そうに微笑んだ。

「じゃあ、準備が出来たら出掛けようか 」

「分かりましたわ 」

お嬢様はチェスター領育ちで王都に来た事はほとんどない。
なので街を見て回れるのが嬉しそうだ。
それに、レオルカ様は長年この王都で暮らしていたので王都には慣れている。
1人で王都の街を見て回るのは心細くても、レオルカ様が一緒なら頼もしいに違いない。
俺も王都出身だが、お嬢様に使える為にチェスター領に行ってから7年、ほとんど王都には戻っていなかった。7年の間に町は大きく様変わりしている。だから俺は既に田舎者同然だ。

「お嬢様、良かったですね 」

食事を終えて自室に戻るお嬢様は後ろから見ていても良く分かるくらいに、本当に嬉しそうだ。

「うん、レオルカ兄様と街へお出掛けなんて久しぶりだもの、とても楽しみだわ 」

レオルカ様とは10年間離れて暮らしていたし、チェスター領に戻られたこの1年もほとんど忙しくされていたので、あまり兄妹で出掛けたことは無い。
先日のディトス城への同伴は本当に珍しい事だったんだ。
それもお嬢様は喜んでいたけど、あの時はそれ所ではなかった、今日は何も考えずに楽しむことが出来るだろう。

「では、レオルカ様に相応しい淑女の装いでお出掛けしなくてはいけませんね 」

「! そうね! レオルカ兄様の隣に立っても不釣り合いにならないよう、少し大人っぽいドレスがいいわね! 」

お嬢様は俺の言葉に虚をつかれたように目を丸くした後、大きく頷いて微笑む。


「目的地はすぐ近くだから徒歩で行こうと思うんだけど、大丈夫? 」

「ええ、大丈夫ですわ 」

「じゃあ、これをあげる 」

レオルカ様がそう言ってお嬢様に差し出したのはレースがふんだんに使われた白い日傘パラソルだ。

「まぁ、可愛い、いいんですか? 」

「うん、そのドレス素敵だね、何時もの可愛い装いにも似合うけど、今日のドレスにも似合うと思うよ 」

レオルカ様にそう言われて、お嬢様は頬を染めて花がほころぶ様に微笑む。

「レオルカ兄様、ありがとうございます 」

「うん、じゃあ出掛けようか 」

「はい 」

レオルカ様から貰った日傘パラソルを差したお嬢様は花が開いた様に可憐だ。
そこに並んでも見劣りしないレオルカ様、流石美男美女兄妹。
通りを歩くと皆が振り返る。
こうして実感すると、2人のお供をしている俺も鼻が高い。


「あれ? レオルカ? 」

しばらく歩いていると一人の男がレオルカ様を見て声を掛けてきた。

「やあ、キリク、久しぶりだね 」

「本当に久しぶりだな、こっちに来てたのか? 」

「うん、一昨日ね 」

キリクと呼ばれた男は身なりから貴族だというのは分かる。
男にしては小柄で可愛らしい顔つき、髪は薄茶色、目は綺麗なブルーグリーンの瞳だ。
話し方からしてレオルカ様とは仲がいいようだ。
その男がレオルカ様の隣にいるお嬢様の事を上から下まで眺める。
・・・・・・貴族様とはいえ、失礼なヤツめ。

「レオルカ、隣の超綺麗な子は恋人か? 」

「いや、俺の妹だよ、アイリーンだ、アイリーン、王都にいた頃の友人のキリクだよ 」

「キリク様、初めまして、アイリーンと申します 」

お嬢様は完璧な淑女の礼と、愛らしい笑顔をもってキリクに挨拶をする。

「俺はキリク・アシュレイだ、よろしく、まさかレオルカにこんな美人の妹が居たなんて驚きだ、あ、いや、レオルカの妹だから当然か 」

キリクはレオルカ様を見て納得したように頷いた。
うん、レオルカ様も相当に美しい容姿を持っているからな、レオルカ様の妹が普通なわけないって事か。

「あの、アシュレイ様って・・・ 」

お嬢様がキリクの姓に気を留める。
そう言えばアシュレイと言えば・・・・・・

「ああ、そうだよ、キリクはアシュレイ公爵家の跡継ぎだ 」

「まぁ! 公爵家の方でしたの? 大変失礼致しました 」

「ああ、こいつの事は気にしないでいいよ 」

お嬢様の焦りに返したのはキリクではなくレオルカ様だ。

「おい、俺が言うならともかく、なんでお前が言うんだよ 」

「ホントの事だろ? 」

「まぁ、レオルカが言わなくても俺が言うつもりだったけどさ 」

キリクはレオルカ様の言葉に怒るでもなく、仕方ないというように首の後ろを掻きながらため息を着く。

「だろ? で? 公爵家の跡継ぎ様がお供も付けずに何してるんだ? 」

レオルカ様の言うことは最もだ。
公爵家の方が昼日中とはいえ、こんな所を1人でうろついているなんて有り得ない。

「ん? ああ、散歩 」

「散歩? 嘘だろ、また抜け出してきたんだろ 」

レオルカ様はキリクの言葉を見透かすように目を細めてため息を着く。

「それを散歩って言うんだよ! 」

「それは散歩じゃなくてサボりって言うんだよ 」

レオルカ様は呆れたようにキリクを見る。
キリクはレオルカ様には頭が上がらないのか、面白くなさそうに横目で地面を眺めて呟いた。

「でもそのお陰でレオルカと久しぶりに会えたじゃないか 」




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