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40話 報せ
しおりを挟む「では、一旦レオルカ様の元に飛びます 」
「君は瞬間移動ができるんだね、本当に凄いな、俺はこっちに残るけど、気をつけて、アイリーンも危険だと思ったら逃げるように 」
「はい 」
「コウモリを1羽置いていきます。何かあれば報告を入れますのでこちらの対応はお任せ致します 」
「ははっ、分かった、君なら何とかできる気がしてきた、任せたよ 」
キリクも国の行く末が不安に違いない。
だけど笑顔を作って俺とお嬢様を送り出した。
「驚いた、セルジュとアイリーンじゃないか、どうやってここへ? 」
突然現れた俺たちに驚きの言葉を口にしつつも表情は至って冷静なレオルカ様は隊を止め、馬を降りて俺たちに近づいてくる。
「アイリーン、良かった、無事だったんだね、このコウモリから報告は受けてたけど、無事な姿が見れてよかった 」
「ご心配をおかけして申し訳ありません 」
「いや、無事ならいいよ、怖い思いをしたね 」
謝るお嬢様をレオルカ様はそっと抱きしめた。
「ルーが来てくれるって思ってたのでそれほど怖くはありませんでしたわ 」
「ふふっ、そうか、セルジュは頼りになるからね 」
元気に答えるお嬢様を可笑しそうに笑って眺めるレオルカ様。
少し緊張がほぐれたようだ。
「それで、セルジュ、ここへ来たのは瞬間移動? 」
「はい、チェスター領が危ないのでこのままこの隊をチェスター城まで移動させます 」
「そんな事が出来るの? 本当にセルジュは力を隠してたんだね 」
そう言ってレオルカ様は苦笑しているけど、俺の事は驚いた様子は無いし、力を隠してると確信していた節もある。
「申し訳ありません。では直ぐに移動させますので集まってください 」
「君の家の者は本当に凄い人物ばかりだね、レオルカが問題ないと言うなら僕は任せるよ、でも、チェスター城に移動するよりロアの砦に移動した方が早いんじゃない? 」
そう言ったのはフェリス様だ。
レオルカ様と一緒に行動していたフェリス様も俺が現れた事に少し驚きを見せた後、冷静に自分の馬を降りて俺の話を聞いていた。
「フェリス様、緊急事態である中大変申し訳ありません。私自身がよく知る場所でないと移動の道は作れないんです。正直ロアの砦は行ったことがなく、数人程度ならばロアの砦に居る伯爵様の気配で移動可能ですが、数千の人間を一気に移動させることは出来ないんです 」
「そうなんだ、いや、ここからチェスター城までの距離が短縮出来るだけでも有難い。頼むよ 」
頼むと言ってくれたフェリス様は直ぐに皆を集めるよう指示を出す。
「では、空間転移の門を作ります。チェスター城の庭に繋ぎますので移動してください 」
そう言って、俺は大人数でも通れる大きな門を作り出した。
今は能力を出し惜しみしている場合じゃない、詮索は後でいくらで受ける覚悟だ。
「・・・・・・本当にこれがチェスターに繋がってるのか? 」
門の中は黒いモヤになっていて先が見えない。それを見て少し躊躇いを見せるフェリス様。
まぁ、疑うのは当然だろう。
「じゃあ、私が先に行って確かめてくるよ。セルジュ、繋がってる間は戻ってくることも可能なんだろ? 」
「はい、レオルカ様 」
レオルカ様は俺の返事を聞いて軽く頷くと、そのまま躊躇うことなく門の中に入って行った。
レオルカ様が消えて数十秒後、またモヤの中からレオルカ様が姿を現す。
「大丈夫、モヤの先は我が家だったよ 」
レオルカ様の言葉を聞いてフェリス様も安心して移動の指示を伝えてくれる。
そうして指示を出した後、先陣を切って門の中へ入って行った。
それをレオルカ様、お嬢様と俺も追うように入る。
少し歩いた先は懐かしいチェスター城だ。
「レオルカ様!! 」
レオルカ様の帰宅に顔見知りの兵が気付いて駆け寄ってくる。
突然庭に現れた俺達に驚きの色は見て取れず、それよりも何か切迫した蒼白な表情をしていた。
「どうしたの? 何かあった? 」
「レオルカ様!ロアの砦が落ちました!」
「なんだって? 」
「我々も何とか逃げ切って今知らせを入れにここへ戻った所です。もうすぐ敵はこちらにやって来ます! 」
「こんなに早く? 父上は? 」
「伯爵様は・・・・・・ 」
レオルカ様の質問に兵達は悔しそうな表情を浮かべて下を向いてしまった。
レオルカ様もそれを見て唇をゆがめる。
おそらく伯爵様はもう・・・・・・
「・・・・・・ロアがこんなに早く落ちた要因は? 」
「我々の中に裏切り者が居たんです。グレイズ帝国がロアの砦までやってきた途端、中から門を開いた奴がいたんです 」
「裏切り者だって?? 」
ありえないと言ったように叫んだのはフェリス様だ。
「はい、私は離れた場所から門を見張っていたので見ていました。数ヶ月前にディトス領から移動してきた奴でした 」
ディトス・・・・・・ディトス伯爵の息のかかった奴か・・・・・・アイツは何処まで人間を利用する気だ!
俺の中で怒りが込み上げる。
俺の中に眠る魔王の力が湧き上がろうとした瞬間、誰かに袖を掴まれて我に返る。
見ると、お嬢様が蒼白な表情で今戻ったと言う兵を見ていた。
「お父様は・・・・・・もしかして命を落とされたの? 」
「う、、、は・・・い・・・ 」
兵も言葉にするのが悔しそうに顔を逸らす。
そしてお嬢様が俺の袖を掴む力が一瞬強まったかと思った瞬間、力が抜け、後ろに倒れる姿が目に映る。
「お嬢様!! 」
慌てて受け止めたお嬢様は気を失っていた。
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