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44話 旧友との再開
しおりを挟む「毒? 親友だと? なんの事だ? 」
「忘れたのか? もう20年以上前だからな、年を取って記憶も曖昧になったか、一国の王にまで上り詰めた強かさは大したものだ、褒めてやるよ 」
「だから、お前はなんなんだ? なんの事を言っているんだ? 」
グレイサスは全く検討がつかないと言うように額から汗を流しながら俺を見る。
「ルル・ジオ・フェルス、まさか復活していたとは・・・・・・いや、それは復活なのか? 脆弱な人間に見えるけど・・・・・・フフっ 、面白いね 」
「え? ルルだって?? 」
グレイサスは自分の後ろからした声に少しほっとしたように振り返った後、その人物が発した名前を確認するように俺に視線を戻した。
「やぁ、久しぶりだね 」
グレイサスの後ろから現れた男は不気味な笑いを浮かべてセルジュを見る。
その姿は体格は人間と変わらないが青い肌をしていて、頭には角が2本生えている。どう見ても人間ではない。
「ああ、本当に久しぶりだな、ゲオルグ」
セルジュは憎しみを込めた瞳でゲオルグを見据えていた。
「私の名前を直ぐに言えるなんて、やっぱりルルだね、どうしたんだ? その身体は 」
「本当にルルなのか? って、ルルは死んだはずだ! ゲオルグが殺したんだ! そうだろ? 」
グレイサスは状況を理解したのか、それでも信じられないと言うようにゲオルグに肯定を求める。
「ああ、そうだ、俺はゲオルグに殺された。お前に毒を盛られて動けなくなったところをな 」
「そ、それを知っているのは確かにルルだけだ、だが、何故? その身体は・・・・・・?」
「生まれ変わった。お前達に嵌められた情けない魔王の姿はもう無い。満足か? 」
俺は皮肉を込めて二人を見た。
「フフっ、その格好はバトラーでもしてるのかな? 最強魔王ともあろう者が使用人? 最高に面白いね、だけど魔力も以前のままのようだし、これは私では適わないね、せっかく時間を掛けて罠を張って最強魔王を倒したと思ったのに、私が魔族を総べる事が出来たのは短い夢だったようだね 」
「ああ、残念だったな、だが今の俺は魔王じゃない。ただの人間だ、魔族にとって人間の一生など瞬きのようなものだろう、お前が何を企んでいるか知らないが、俺が生きている間にお前の企みは阻止させてもらうぞ 」
俺は愚かだった。
ゲオルグは毒の効かない俺にも効く毒を創り出しそれを人間を使って俺に飲ませた。
今でも鮮明に覚えている。
動けなくなった俺を高らかに笑いながら見下ろすゲオルグの姿を。
「ルルには俺達残りの三魔王が力を合わせても勝てないしね、最も、後の二人は君に心酔してるから私に手を貸すなんてことは無いだろうけど、分が悪くなったので私は引かせてもらうよ 」
ゲオルグは不敵に笑みを浮かべてこの場からの撤退を仄めかす。
「逃がすわけないだろ 」
「おや、君が用があるのはこの国の王だろ? 私は邪魔しないから後はゆっくり二人で仲良く話し合ってね 」
そう言ってゲオルグは瞬間移動で消えてしまった。
「そんな! ゲオルグ! 私を置いていくなんて! 戻って来て助けろ! 」
一人置いていかれたグレイサスは情けない声を出してゲオルグが居た場所に向かって叫んでいる。
「呼んでも無駄だ、アイツは勝算のない勝負はしない。お前は見捨てられたんだよ 」
「そんな! まさか! ゲオルグとは20年以上の付き合いなんだぞ! この私を見捨てるなんて有り得ない! ゲオルグ! 戻ってきてくれ! 」
グレイサスは自分が見捨てられた事がまだ受け入れられないのか、もう居ないゲオルグに向かって叫ぶ。
「あいつはそういう奴だよ、俺がお前に裏切られた時の気持ちが分かるか? お前も俺に親友だと言って近付いたのはゲオルグの策略に乗ったからだろ? お前は俺を初めから利用目的で騙した。それと同じ事だよ 」
「そんな! ルル! あの時は魔が差したんだ! 許してくれ! 頼む! 」
グレイサスは唐突に自分の置かれた状況を理解したのか、今度は俺にすがって来た。
だけどお前の後ろにはドス黒いモヤが見え見えなんだよ、また俺を騙す気だって丸わかりだ。
つくづく、以前の俺は間抜けだった。
こんな見え見えの奴に良いように言い含められていたかと思うと本当に自分に腹が立つ。
「グレイサス、俺がわざわざここまで来た理由が分かるか? お前と仲直りするためじゃない 」
「何だ? 何が目的なんだ? 金か? 権力か? 」
「ふっ、確かに俺は金も権力も欲しい。だけどお前から欲しいんじゃない 」
笑える。
お嬢様に見合った権力も金も今なら簡単に手に入りそうだ。
だけどコイツから貰うのは違う。
「じゃあ、何が目的なんだ? そうだ! もうすぐ国が手に入る! その国をお前にやろう! 」
その言葉を聞いた瞬間、俺は瞬時にグレイサスに詰め寄り、グレイサスの襟元を掴みあげていた。
「ひっ! な、何が気に入らなかったんだ? ルル、殺気が盛れてるぞ! 」
「当然だ、お前に殺意を向けているからな、俺がここへ来た理由は復讐だ 」
「や、やっぱり私が裏切った事を根に持ってるんだな? 本当に謝る! 許してくれ! 」
「違う、俺がお前から受けた裏切りなどもうどうでもいい 」
「じゃあ、なんなんだ? 」
「お前は俺の主人を、俺の大事な人の家族を殺した! 」
その言葉を聞いた瞬間、グレイサスの表情が凍りついた。
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