組長と俺の話

性癖詰め込みおばけ

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一章

チンピラと仲良くなる

  目を覚ますと、真っ白の天井が見えた。
  体を起こそうとすると、全身が痛い。特に腰とか。声を出そうとしても、声が思うように出ない。
  あれは夢じゃなかったんだろうなー、と他人事のように思う。
  まぁ、俺女の子じゃないから、子供を産んじゃうかもとか、そういう心配は無いし、ヤクザに犯されるとか、そんな経験、なかなか出来ないし、よかったのかも。
「お前、大丈夫?」
  そんなことを考えていると、目の前にチンピラが現れた。
  なんでそんなこと聞くんだろうと思いながら、大丈夫です、という意味で頷くと、「お前、泣いてるけど。」と言われ、初めて自分が泣いていることに気がついた。
  あれ?おかしいな。そう思っていると、チンビラが涙を拭いてくれた。
「まぁ、今日はとりあえず寝とけよ。」
  その言い方的に、家に帰してくれないんだ。「ご飯食べる?」と聞いてきたチンピラに、「要らないです……」と答えたが、丁度のタイミングでお腹が鳴ってしまい、ご飯を食べることになった。
「はい。」
  チンピラが、皿を雑に渡してきた。「ありがとうございます…」とボソボソ言いながら受け取ると、中にはオシャレなカフェにあっても不思議では無いくらい、高そうで美味しそうなサンドイッチが入っていた。
「いただきます。」
 そう言って、俺はサンドイッチにかぶりついた。うわ、最高。タマネギの程よい甘さと、肉の美味しさ、パンの味。どれをとってもめちゃくちゃ美味しい。
「それ、俺がつくったんだよ。」
  チンピラがニコニコしながら言う。
「えっと、……」
「あぁ、俺はえん。お前は……そうまだったっけ?」
「とうまです。」
  ああ、とうま。そうだったわ。ごめん。と、チンピラ、改めえんさんが言う。あの、……ヤクザにでも聞いたんだろうか。
「あと、水もどうぞ。」
「どうも。」
  水も、ただの水ではなく、ほのかに果物の味がした。美味しい。
「えんさんは、シェフか何かですか?」
  気になって、質問してみた。
「いや、昔はバーを経営してただけだよ。」
  そこそこ有名でさ、雑誌に載ったりもしたんだよ。そう自慢げに話すえんさんを見ながら、そうだろうな、と思う。お世辞じゃなく、すごく美味しくて、お洒落だったからだ。しかも、ボリュームもあって、お腹がいっぱいになった。
「体痛いかもしれないけど、風呂入った方がいいよ。一応、事後処理はしたけど、残ってるかもしれないし。」
  そう言われ、我に返る。料理が美味しくて忘れていたが、俺はレイプされたんだった。でも、あいつの手下だとしても、えんさんは悪い人に見えない。
「タオルと着替えはここに置いとくから。風呂はここ。気が向いたら入れよ。」
  そう言って、えんさんは去って言った。

「俺、カシラの見舞いに行ってくるから。
  とうま、逃がすなよ。」
「分かりました。行ってらっしゃいませ。」
  頭を下げて、組長を見送る。とうまっていうのか、組長が連れてきた子。
  たぶんあの子、まだ起きてないだろうな。てか、お腹空いてるよな。よし、なんかつくってやるか。
  数十分後、組長室に入り本棚を開けると、あの子はもう起きていた。
  うわ、泣いてんじゃん。
「お前、大丈夫?」
  なんで?というような顔でこくっと頷く。
「お前、泣いてるけど。」
  そう言うと、やっと自分が泣いていることに気づいたようで、困惑していた。
  その姿は小さい子供のようで、弟と重なった。可哀想になり、涙を拭ってやる。
  その後、サンドイッチを渡すと、美味しそうにたいらげて、少しこちらに話しかけてきた。空元気ではなく、本当に元気がでたらしい。
  よかった。
「体痛いかもしれないけど、風呂入った方がいいよ。一応、事後処理はしたけど、残ってるかもしれないし。」
  何も考えずに言ってしまってから、とうまの反応を見て後悔した。そうだった。この子は、組長にレイプされたんだ。でもきっと、今俺がするべきなのは同情じゃない。
「タオルと着替えはここに置いとくから。風呂はここ。気が向いたら入れよ。」
  とうまの変化に気付かないふりをして、俺はタオルと着替えをベッドの隣の机に置いた。
  そして、本棚をしっかりと閉めた。
  
「ただいま、とうま。」
  声が聞こえて、目を開ける。
  そこにいたのは、えんさんではなく、ヤクザだった。  
  俺の隣に座り、頬を撫でてきた。鳥肌が立つ。
「俺ね、きょうやって言うんだ、名前。」
  だからさ、俺がただいまって言ったら、おかえりなさいらきょうやさんりって言ってよ。そう言って、ヤクザ……きょうやさんが目を細める。
「言えよ。」
  この人は笑顔でも、絶対に目は笑わない。
「……おかえりなさい、きょうやさん。」
  声が震えた。でも、満足そうに、……きょうやさんが微笑む。
「いい子だ。」
  気持ち悪い。早く離れて欲しい。
  そんな俺の気持ちが分かったのか、ヤクザは俺の方から離れた。
「まぁ、今日はいいや。」
  そう言って、本棚を開けた。
  俺はホッとした。
  と、去り際に
「おやすみ、とうま。」
  とこちらを見て、言ってきた。
「……おかえりなさい、きょうやさん。」
  大人しくそう言うと、満足したようで、ヤクザは本棚を閉めた。

  会議室を出て受付に戻ろうとしていると、ちょうど組長室から出てきた組長と遭遇した。
「帰ってたんですか、組長。
  お疲れ様でございます。」
  組長に頭を下げる。
「あぁ、えん。お疲れ様。」
  ご飯は食べてきたから、要らないから。もう帰っていいよ。と言われた。
  いつもより早い時間だった。じゃあ、セフレとバーにでも行って、そのあとホテルに行こうかな、と思っていると、組長が、
「えん、今日も一日ありがとな。」
  と言って、俺の頭を優しく撫でてきた。
  そして、「じゃあ。」と言うと、会議室の方へさっさと行ってしまった。
  俺はあの人が好きじゃない。怖いし、ほもだし、俺よりめっちゃ強いしモテるし。
  でも、撫でられると気持ちよくて、幸せになってしまう。
  はぁ、とため息をつく。疲れた。子守りに掃除、書類作成、あと簡単な粛清などを1日で終わらせた。明日も、たくさん仕事を押し付けられるだろう。
  スマホを出す。セフレの中から、1番年上の、落ち着いた雰囲気のホステスのママに電話をかける。
「もしもし、玲子さん?おれおれ。今日暇?そっか。じゃあさ~」
  楽しい夜になりそうだ。
  そんなことを思いながら、俺は事務所を後にした。
  

  
  
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