マイナー神は異世界で信仰されたい!

もののふ

文字の大きさ
39 / 55

勇者疑惑

しおりを挟む
「……は?勇者、だと?」

フッツメーンか信じられぬものを見るような目で、爺神二柱を見た。

「そんな、馬鹿なことがあるか!!邪神を勇者などと……。また我らを欺く気か!?」

王国軍騎士団長グレッグが、唾を飛ばす。
ルイドートは飛んできた唾を、華麗にバックステップで避けながら言った。

「では、この方々に魔力適正がないのをどう説明するのだ?邪神は魔力の塊のようなもの。魔力が無いなど、ありえぬぞ?」

ドロンズを盾にして唾の射程範囲外から、そう尋ねるルイドートに、フッツメーン達が反論する。

「そ、それは、何かこやつらが細工をしたのだろう!そうに違いない。こんなやつらが勇者であってたまるか!」
「そうだ!勇者は、もっと若く、力強く、魔物を憎むものだ!」
「勇者なら、人前で、尻をさらけ出さない!」
「勇者には、尻穴があるはずだ!!」

尻の話が蒸し返された!
だが勇者とて、クレパスしん君のように尻をさらけ出していきたい特殊性癖のある者くらいはいるだろう。
いや、やはり変態の勇者はどうかとは思う。
穴に関しては、……たまにはイレギュラーなことだってあるさ。

やいやいと喚くフッツメーン達に、ナックが言った。
「ならば、証明しようじゃないか!」

「どうやってだ?」
訝しげに聞いたフッツメーンに、ナックがニヤリと笑う。

「おい、誰か魔法防御に自信兄貴どもはいるか!?」

民衆の中から、「ワイは魔法防御特化やぞ!」「ワイもつかえるで!」と、何人も手が上がる。
ナックは、彼らを呼び、神殿方面に三重の魔法防御壁を張らせた。
そしてその前にフッツメーンとグレッグを立たせ、さらにその前にワクワク顔の勇者疑惑神二柱を据えて言った。

「今からドロンズ様とクリソックス様に魔法をぶつける。勇者なら魔素がないから、魔力が体に作用しないため、魔法は効かずすり抜けて、背後のお前達に当たるだろう。だが、お前達の言う通り邪神ならば、魔法は邪神にぶつかって、お前達の盾となるだろう」
ナックの説明に、ギョッとしてフッツメーンは抗議した。
「な、なんだと!?もし魔法がすり抜けてきたらどうするんだ!」
「ならば、この方達が勇者ということだろ?でも、お前達は邪神だと思ってるんだから、問題ないだろ?」
「も、問題だらけだ!!邪神に魔法が当たっても、場合によっては巻き込まれることだってあるだろう!」
「そうだ!それに何故私とフッツメーン様なんだ!他にも王国の騎士はいるではないか!」
「軍の最高責任者が責任とらないで、誰が責任とるんだよ」
ナックは呆れ気味に、フッツメーンとグレッグに目を向けたが、「仕方ねえな」と魔法防御に自信ニキを一人呼び、フッツメーン達に防御をかけさせた。

「これでいいだろ。ほら、そこに立ってろ。神様方もそこでお願いします」
「うむ」
「いつでも、どうぞー」

ナックは、ルイドートが巻き込まれぬようにその場から、少し移動したのを見届け、両手を空に掲げた。
「炎よっ、俺のバーニングハートを熱々ビッグバン☆最終奥義、フェニックスフィーーッシュッ!!」

「だっさあーー!!呪文、ださあああっっ!!?」
「鳥なのか、魚なのか、どっちなんじゃああ?!!」

クリソックスとドロンズは、心の底から絶叫した。

ナックは、その凶悪すぎる呪文に似合わず、巨大な炎の鳥を空に出現させるや、ドロンズ達に容赦なく放った。
フェニックスフィッシュ(笑)は、炎を撒き散らしながら、尾びれを震わせ、こちらに突っ込んでくる。

フェニックス以下略は、無事にドロンズ達を通過した。

「「いぎゃああああああ!!!!」」

ドロンズ達の後ろで、フッツメーンとグレッグが熱々ビッグバン中である。
一応、魔法防御が効いているようだが、フェニックスフィッシュ(笑)の威力がそれを上回っているのが丸わかりのバーニングっぷりだ。

「いぎゃあああ!!!」

違う方向から悲鳴が聞こえる。
なんとっ、少し離れた所にいるルイドートが延焼している!
火の粉がルイドートの頭部に飛んで、燃え移ったようだ。
ルイドートの古代遺物アーティファクトであるアデラネイチャー(予備)が、熱々ビッグバンしている。

「あ……」

ナックが、(やっべ……!)という表情を浮かべている。
もしかしたら、明日ナックは、国外追放かもしれない。
彼はおっさんでもあるし、なかなか流行りを押さえた展開である。

オーガニックが、慌てて神殿内からたらい一杯の水を持ってきて、ルイドートに頭から浴びせかけた。
気が利くオーガである。
おかげで延焼は食い止められたものの、ルイドートのアデラネイチャーとルイドートの頭部(真)は焼け野原になってしまった。

え?ルイドートの頭部(真)は、元々焼け野原だったって?
やめてやれ。これ以上、傷口に塩を塗ってはならぬ。

次第に炎は鎮火していった。


後に残ったのは、火傷で真っ赤になったフッツメーンとグレッグ。
そして、焼け野原のルイドートである。



ナックは、可及速やかに、ルイドートの前で土下座態勢に入った。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

陸上自衛隊 異世界作戦団

EPIC
ファンタジー
 その世界は、日本は。  とある新技術の研究中の暴走から、異世界に接続してしまった。  その異世界は魔法魔力が存在し、そして様々な異種族が住まい栄える幻想的な世界。しかし同時に動乱渦巻く不安定な世界であった。  日本はそれに嫌が応にも巻き込まれ、ついには予防防衛及び人道支援の観点から自衛隊の派遣を決断。  此度は、そのために編成された〝外域作戦団〟の。  そしてその内の一隊を押しつけられることとなった、自衛官兼研究者の。    その戦いを描く――  自衛隊もの、異世界ミリタリーもの……――の皮を被った、超常テクノロジーVS最強異世界魔法種族のトンデモ決戦。  ぶっ飛びまくりの話です。真面目な戦争戦闘話を期待してはいけない。  最初は自衛隊VS異世界軍隊でコンクエストをする想定だったけど、悪癖が多分に漏れた。  自衛隊名称ですが半分IF組織。  オグラ博士……これはもはや神話だ……!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

転生女神さまは異世界に現代を持ち込みたいようです。 〜ポンコツ女神の現代布教活動〜

れおぽん
ファンタジー
いつも現代人を異世界に連れていく女神さまはついに現代の道具を直接異世界に投じて文明の発展を試みるが… 勘違いから生まれる異世界物語を毎日更新ですので隙間時間にどうぞ

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。 「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...