マイナー神は異世界で信仰されたい!

もののふ

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訛ってる教王

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ハビット公国。
トールノア王国から独立した新国である。
その国は、この世界になかった新たな神を奉じているという。
それも、魔物を操る神で、なおかつ勇者であるとか。


アインクーガ教国の教王ペロロビッチ三世は、魔法通信士を通じてもたらされた書簡を机上に投げ、その草木の生えぬ砂漠のような頭を抱えていた。

「これ、絶対邪神じゃん?魔物操るとか、絶対邪神じゃん?!」

勇者を詐称する邪神が、邪神の徒ルイドート・ハビットを傀儡にしてトールノア王国に内乱を引き起こした。
そして、そのルイドートを王とした邪神の国が生まれた。

ペロロビッチ三世は、事態をこのように捉えていた。
何より、主神であるアインクーガをさしおいて、国神に邪神を据えるとは何事か!と、ルイドートに抗議の手紙を送ったが、帰ってきたのはとんでも論理。
邪神を崇めることが、アインクーガのためになるなどと返信してきた。

「ヤバいのが隣国になってもうた……。聖戦不可避じゃね?」

ペロロビッチは、警戒を強めながらも、アインクーガに異界からの勇者の訪れを祈念した。


それからふた月ほどが経った。
トールノア王国は、周辺の有力貴族が次々と離反を始め、かなり弱体化している。
それを機に、東のタマルカン共和国が領土拡大を狙って、国境を接する領主に働きかけを行っているらしい。
今のトールノアは、ハビット公国に攻め入る余裕などないのだ。

そのハビット公国だが、北のロングラード王国の侵攻を警戒し、すぐにロングラードとの外交を始めたようだ。
国境沿いには、監視のために軍の駐留が行われ、ロングラードもその対応の速さに様子見を続けているという。

そんな中、ある招待状が届く。

差出人は、ルイドート・ハビット公王。
ふた月後、ハビット城で舞踏会を催すらしい。

「ダン(ス)パ(ーティー)か。そういうの、嫌いじゃないけど、邪神に洗脳されちゃったらどーしよヘーハ・チローの乱……。なあ、枢機卿、出席に◯しないとアウト系?」

情けない声を上げるペロロビッチに、若き枢機卿のガンダーラは眼鏡をくいっと指で押し上げ、端正な顔をしかめた。

「当然じゃん?マジ、教王なら行くべし、でしょお?」

ペロロビッチは、肩を落とした。

「わしが邪神に洗脳されたらヤバくね?いや、殺されちゃうかも!ガンダーラが行ってよっ」
「呼ばれたの教王でしょお?聖戦不可避にしても、向こうの現状見てからっしょ?私も行って、向こうの民の信仰心取り戻すために、布教ガンガンするつもりだし、そっちはトップなんだから、ルイドート・ハビットの離れた心を取り戻してよね」
「ええ~。無理めなんだけど~……」

アインクーガ地方の方言がキツすぎる。
この辺りは、女神アインクーガを信奉するあまり、神話として伝えられているアインクーガの口調を、方言として使っているのだ。
教王と枢機卿がどこぞのギャルなわけでは、決してない。

「じゃあ、そのつもりで準備に動くから!うちらマジ卍だし、邪神対策で、ダンパ遠征の人員、守れる系揃えとくねっ」
「さっすがガンダーラ!マジ最&高☆」

こうしてペロロビッチ三世は、魔窟ハビット公国に向かうことになったのである。


ガンダーラの差配で防御、解呪の得意な者達で構成された教王一行は、アインクーガ教国と国境を接するメイクロード伯領内に入った。
そこで待っていたのは、年の頃三十代半ばの長身痩躯の男と領の護衛騎士達だ。
彼こそが、パンツ・メイクロード伯爵。
グレーの髪を後ろに流し、穏やかな笑みを浮かべている。
だが、その瞳は油断ならぬ知性を秘めている。
彼は、アインクーガ教国と領地が接する関係上、これまでトールノア王国での教国担当として、何度も静かな外交戦を繰り広げた相手である。

「ようこそ、教王ペロロビッチ三世。我々は、あなた方をマジ歓迎するし、ゆっくりしてちょんまげー☆」

ペロロビッチは満足そうに頷いた。
パンツ・メイクロードはできる男だ。教国の使節を迎える時は、いつもアインクーガ弁で歓迎の意を示してくれる。
微妙に間違っているが、それでも、その気持ちが嬉しいものだ。
アインクーガ教国とは時に緊張した関係になることもあったが、こういう心憎い外交センスが、メイクロードがこの地に封じられている理由であった。
といっても、アインクーガ弁は他国に通じない言葉も多い。
教国を離れたら、基本的にペロロビッチ達はアインクーガ弁を封じている。

「ありがとう、メイクロード伯。いつも、気遣い感謝する」

そう共通語で返したペロロビッチ三世は、メイクロード伯に促され、連れ立って共に出発した。
パンツ・メイクロードとしては、いったん一行を自身の屋敷に案内し、歓待しようというのだ。

そんなこんなで、メイクロード泊の屋敷がある領都に向かって、一行は街道を進んでいく。
教王一行は、ただでさえ守備力重視の編成である。
それに、メイクロード伯の護衛騎士が加わり、その守りは一層強固なものとなって、ペロロビッチ三世は大いに安心した。

(今なら、ドラゴンにエンカ(ウント)しても、生き残れんじゃね?)

そして屋敷にたどり着き、その敷地内に入ったペロロビッチ三世は、バイブス震えた。

広大な敷地内に、リアルガチに小山と見紛うほどに巨大なドラゴンが首をもたげ、こちらを睨んでいたからである。

「わし、オワタ……」

ペロロビッチ三世は、秒で意識を手放した。

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