マイナー神は異世界で信仰されたい!

もののふ

文字の大きさ
54 / 55

さよならゴブリン

しおりを挟む
ハイパーシャーマンゴブリン達の進化の宴は、夜通し行われた。

その宴の中で、クリソックスは求められるままに、人間の女が進んで苗床になってもらうための神託を授けた。
クリソックスがこれまで読んだ恋愛もの小説や少女漫画、はてはオシャレ女性誌に載っていた恋愛特集コラムなどを網羅したした恋愛テクニックである。

ハイパーシャーマンゴブリン達は、それぞれ、『壁ドン』や『アゴくい』、『筋肉のさりげない見せ方』、はては『ふと見せる寂しげな表情』まで、各自で練習を始めている。
とある者は、パンをくわえて走ってくる女子村人と、曲がり角で出会い頭にぶつかり、倒れそうになる女子をさらりと抱き止め爽やかな笑顔を見せるロールプレイングまで始めてしまった。


そんな熱心なハイパーシャーマンゴブリン達に感心するクリソックス。
少し離れた場所で、ドロンズは、一人いじいじと泥団子を作っていた。

「なんで、わしには誰も苗床化テクニックを聞かぬのじゃ!」

完全にすねている。

「ねえ、ドロンズーー、彼らイケメンイケボになったけど、頭だけは毛がなくて、それがネックでもてそうにないんだよねー。どうしたらいいと思う?」
「わしが知るかーーっっ!!!」

イケメンハイパーシャーマンゴブリン達の集落に、ドロンズの叫びが響く。
(充分な毛髪を)持てる者であるクリソックスは、(毛髪を)持たざる者ドロンズの心を無邪気に抉ったのであった。



夜が明けて、ドロンズとクリソックスは集落の外れで、ハイパーシャーマンゴブリン達の見送りを受けていた。

「ギギッ(イケボ)」
「ギイッギギッ(イケボ)」
「ギイギイ(イケボ)」

イケボで口々に別れの挨拶をしてくるハイパーシャーマンゴブリン達。
ドロンズとクリソックスは、彼らに別れを済ませ、すっかり高校生くらいの緑がかった美少年となったスタニスラスに声をかける。

「じゃあ、スタニスラス。私達、ちょっと魔王と邪神を倒してくるから、それまでここで待っているんだよ。討伐に気をつけて、命大事にね!」
「そうじゃ。わしらの用事が済んで、いざお主をサラに会わせ酔うと思っても、お主がこの世におらぬではどうしようもないならのう」

「ギイッ」
スタニスラスは、神妙に頷いた。

「もし、どうしようもなくなったら、このクリスマスソックスに祈りなさい。この神器は私に直通だから。お供え物を入れてもいいよっ。私に届きます」
「お主の神器は、ええのう。お供え物転送機能は正直ずるいわい」

ドロンズは、クリソックスの神器【クリスマスソックス】を羨ましげに見つめる。
ドロンズの神器【泥団子】だと、お供え物転送機能をつけても泥団子で包む必要があるため、土まみれになってしまうのがオチである。

「まあまあ。ドロンズ宛のお供え物も、この中に入れてもらえばいいじゃない」
「うう……クリソックスありが……いや!わしは昨日の屈辱を忘れておらんぞ!!」
「ちょっとドロンズ、まだ怒ってるのー?」
「神器といい、顔といい、髪といい、お主はズルい!」
「そんな、指を指されてもー」

「ギイギイ、ギギギッギ」
まあまあ、落ち着いて、と言わんばかりにハイパーシャーマンゴブリンの一人が仲裁に入る。
信者を不安にさせることは、信仰にも影響する可能性がある。
ドロンズとクリソックスは、口論を一旦取り止めて、ハイパーシャーマンゴブリン達に別れを告げると、【神は偏在する】でシャリアータ近郊の平原まで戻ってきたのである。



「さて、わしらは、これから魔王を倒しにいくのよな」
「そうだね、ドロンズ」
「魔王は、どこにおるのだったかのう」
「ええと、確かルイドートがこんなことを言ってたな……」

クリソックスは、ルイドート・ハビット公王の言葉を思い出した。

『魔王の住む大陸は、ノースリーブ帝国を北に進み、さらに海を超えた最果ての地にあると伝わっております。どうぞ、お気をつけを。ノースリーブ帝国のあるロングカーデ大陸への船は、ナームの港に用意してあります……』

クリソックスは、もっと思い出した。

『ぼ、ぼく、悪い王太子じゃないよ!』

クリソックスは、深く思い出した。

『ギンッ』


クリソックスは、ドロンズに説明した。

「ノースリーブの女の子はロングカーデを合わせがちで、その女の子に会いに行くにはナームの港に行かなくちゃいけないけど、悪い王太子がギンッとしてしまうから、王太子を懲らしめなくちゃならないんじゃなかったっけ?」                        「なんの話なんじゃ。魔王はどこへ行った?」
「あ……なんか、色々混ざったみたいだ。ちょっと待って。思い出したことを原文ママで君に伝えるよ」

クリソックスは、思い出したルイドートの言葉を、そのままドロンズに伝える。
ドロンズは、腕組みして聞いていた。

「なるほどのう。つまりは、わしらはナームの港に向えばよいのじゃな」
「そうだね!ナームに行こう♪」

二柱の次なる目的地は決まったようだ。
とうとう、新たな大陸へと旅立つのだ。
ドロンズとクリソックスは、新たな冒険に向け、北へと足を向けたのである。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...