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第一章

第八話 スピード

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 後ろ手に縛られ恐怖で顔が引きつる住民の男たちと、目の前で

家族を殺されるであろう女子供の悲鳴が公園に響き渡る中、殺戮党

の組員は次々と刀を抜いて鞘を無造作に地面に投げ捨てた。何故

銃でなくわざわざ日本刀を使うのかと言うと、銃で一発で殺すより

はるかに暴力的でインパクトがあり、恐怖心が増すからだ。


 はだけた迷彩服から入れ墨やサラシを覗かせ、ニヤニヤする

組員達。「パアンッ!」「パンパンパンッ!」、、急に銃声が

鳴り響いたかと思うと日本刀を持った組員は頭や胸を撃ち抜かれ

倒れ込んだ。「やっぱり来たぞっ、すぐ近くだ探せっ」、、もし

車輪が現れたら返り討ちにする手はずまで既にしていたのだ。


 「パンパンパンパンッ」公園近くの建物数か所で張り込みを

して車輪を探す組員を無視するかのように、広場で住民を見張って

いた組員は次々と撃ち抜かれていく。「ちきしょー、速過ぎるっ」

とその時、公園裏のアジトがけたたましい爆音と共に爆破された。

アジトに残って様子を見ていた組員は全員即死だ。


 実は車輪は光組を壊滅させた段階で家を引き払い、旅の者となり、

光組のアジトから武器弾薬を奪いさらに爆弾まで仕掛け、アジトが

見える廃ビルを探して見張っていたのだ。何事もスピードが命、

射撃に限った話では無い。その後に車輪を探したり、光組のアジト

を何も知らずに使っている時点でほとんど勝負はついていたのだ。


 「いたぞ、あのビルだっ」、、ビル屋上の給水塔付近にいる車輪

を見つけた時にはすでに戦力は半分以下、車輪のいるビルに走り

寄る組員は次々と上から撃たれ、裏口から忍び寄ろうとした組員数名

はドアに仕掛けられた手榴弾で爆死、隣のビルの屋上から密かに

飛び移ろうとした組員も空中で撃たれて地面に叩き付けられた。


 
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