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第五章

第二話 米穀連合会

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 関東から遠く離れたとある地方のスラムに潜伏する為に、車輪と

元レーサーは倉庫のオヤジの旧友を頼ってやってきた。オヤジの

旧友の男は建設会社の社長らしい。しかしこの時代、法律で従業員

は全て政府公認の派遣会社から雇わねばならず、直接雇用の従業員

は居ないので社長と言っても個人の自営業者でしか無い。



 この町は米穀(べいこく)連合会という暴力集団の縄張りだ。

米穀連合会はこの町以外にもいくつも支配地域を持っており、国内

でも最大規模と噂される巨大集団だ。しかし住民の経済が潤えば

自分達の懐も潤うという考え方なので、何でもかんでも締め付ける

と言うよりは緩やかに支配しているイメージだ。


 しかし戦闘能力は誰がどう見ても国内随一であり、武器の増備

や殺し屋の育成にはどの暴力集団よりも力を入れている。過去には

わざと暴力集団同士を抗争させたり、或いは意図的に抗争させ、

武器の密売や抗争終結後の調停役等で莫大な利益を得てきた。戦闘

のみならず頭の良さや組織運営能力はズバ抜けていると言って良い。


 連合なのでいくつかの暴力集団の寄り集まりだが、人種も様々だ。

一番街角で目につくのは有色人系のスキンヘッド入れ墨軍団だが、

少し郊外に出れば白人系の革ジャンを来たバイク軍団が走り回って

おり、なんやかんやでこれらの頂点に立つ同じく白人系の者達が米穀

連合会を仕切っているらしいが、素性を知る者はほとんど居ない。


 この町は過去、この米穀連合会の侵入を頑なに拒み、自警団を

組織して徹底抗戦したが、圧倒的な力の差に町は徹底的に破壊され、

全面降伏したのちに逆に米穀連合会の施しを受けて復興したので、

住民は感謝しているフシがあった。それに加えて緩やかな支配で

特に不自由は無く、むしろ過去の抵抗を後悔してさえいた。


 
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