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第十四章

第五話 更なる誤算

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 スーパーシティ入口で終結する国民と、ピラミッドの上の政府との

睨み合いが緊迫する中で超大型台風はとうとう日本列島に上陸を始めた。

車輪とオヤジは倉庫の面々と再度集まり、軽トラやトラクターの牽く

荷車に分乗してスーパーシティを目指した。「こうなってしまっては

行くしか無い。それに堤防が決壊していつ洪水になるか分からん」、、


 国道をスーパーシティに向かって走っていると、同じ様に仕事で車

を使う者は皆住民を乗せて目的地を同じくしている様だ。歩道には

徒歩で向かう者達も列を成しており、真っ暗で激しい風と雨に晒され

ながらも目的は同じなので不思議と秩序は保たれていた。そして車輪達

にもやっとスーパーシティが遠巻きに見えてきた時だった。


 スーパーシティのピラミッドを照らす照明が一気に落ちて、辺り

一面が完全に真っ暗になった。発電所が被災して停電になったのだ。

しばらくして非常用電源に切り替わったが、激しい風で飛んできた

屋根材や看板などが無数にピラミッドを直撃し、それを皮切りに次々

とピラミッドの数々が軋み始め非常用電源はむなしく落ちた。


 入口に集っていた群衆は風に飛ばされない様必死で橋の欄干や電柱等

にしがみついているが、スーパーシティの内部もただ事では無いだろう。

最新の技術を集結させて作られた超コンピューター管理の町は、海外で

先に作られた同型の町のデータとノウハウを基に作られ、一応災害対策

もしていたが、利権が先走りここが日本だという事を軽視していた様だ。


 同時に複数の災害が起きた場合を想定しておらず、コンピューター

は万能、科学が自然を凌駕した、複数同時の災害など先ず起きない、

という机上の空論で作られた町だったのだ。発電所が被災するという

事はその中に原発も含まれる。誤算が誤算を呼び、スーパーシティは

内部も外部も激しい風雨に晒されパニックになっていた。



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