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いち。

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 私、シェーラ=フェレントは、今日、めでたく17歳になりました。
 幼い頃から家庭教師を雇い、様々な教養を身につけ、マナーを始め、色んなことを身につけてきた。
 そんな私が、唯一身につけることが出来ていないもの。

それは、女性らしさ。

 容姿は、銀色に輝く美しいロングヘア、空のように澄んだ青の瞳と、悪くは無い。

 そんな私でも、婚約者はいる。
 ジーン=レウォン様。
 レウォン伯爵家のご子息だ。
 かく言う私も、フェレント子爵家の娘。
 ジーン様も私に好意的だし(多分)、そこまで悪い話じゃない。そう思ってた。

 それなのに…


「シェーラ=フェレント。私との婚約を破棄して欲しい。」


 それは、私の誕生日パーティーで、大勢の人の目がある中、淡々と告げられた。


「じ、ジーン様、理由を教えていただいても?」


 理由次第では、婚約破棄は無かったことになるかもしれない。
 お父様の期待を裏切らない為にも、私がこの問題を解決しなくちゃ!


「シェーラ、君のその性格さ。男のような勇ましい女性なんて、誰が欲しがると言うんだ」


 それを持ち出されてしまっては、なんとも言えない。
 自分で解決すると張り切ったのも束の間…。
 性格は生まれ持ったもの。言い訳になってしまうけど、そう簡単に変えられない。

 それに…


「どうしてそのような理由だけで婚約を破棄しようとなさるのですか?私たちの家柄を考えれば、悪くない話でしょう?」

「私には、心に決めた女性がいる」

「「「「「えっ…」」」」」


 会場にいた全員が凍りついた。
 そのような発言を、私の、ましてや婚約者のパーティーで言うなんて…。
 それに、この場でそのような話をしてしまえば、ここにいる高位貴族の耳にこの話が入ってしまう。
 そうなれば、私の人生は終わったも同然。


「私は家柄などどうでもいい。愛する女性がそばに居てくれればそれでいいんだ。そういうわけだから、君と私は今日から赤の他人だ。」


 どういうわけ…?

 こうして私は、公の場で、しかも誕生日に、堂々たる婚約破棄宣言を聞かされるのだった。
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