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第一章
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ブブブっと、スマホが震え、着信を知らせる。
私は机の上に置いたスマホの画面を覗き込み、発信者の名前を確認する。
画面に表示されているのは、『一ノ瀬玲央』。よりによって、今、一番見たくない人間の名前がそこに表示されている。
時刻は二十一時を少し回ったところだ。
私は気付かなかった振りをして、その着信を無視することにした。
そのまま放置していると、机の上で震えるバイブの音がうるさいので、私は机の隅に置いていたタオルに手を伸ばし、その上にスマホを置く。これで地味に響く振動や音も軽減されるだろう。
今日は残業で、いつもより帰宅時間が遅くなった。疲れ果てて夕飯を作る気力なんてない。私はアパート近くにあるコンビニで、お弁当と缶チューハイを買い、ようやく遅い夕飯にあり着こうとしたタイミングだ。
缶チューハイのプルタブを開封すると、中から圧縮されていた炭酸が、アルコールと共に霧状の液体となり勢いよく飛び出してくる。私はそれに口を付ける。
一分ほどスマホが震えていたけれど、私は完全無視を決め込んで、お弁当を食べていた。私が通話ボタンを押さなければ、そのうち玲央も諦めるだろう。
テレビの大画面で、サブスク配信のアニメを見ながらお弁当を食べ、合間で喉を潤すため缶チューハイに口をつける。
リアルタイムで観ることのできないものを、こうして時間を気にせず視聴できるのはありがたい。
お弁当を食べ終え、空いた容器を軽く水洗いしてゴミ箱へ捨てようと立ち上がったその時、インターホンが鳴った。
こんな時間にだれだろう。
私はインターホンに備え付けられているモニターを覗き込んだ。
防犯のことを考えて、玄関を部屋からチェックできる部屋を借りたのだけど、正解だった。
画面に映り込んでいるのは、一ノ瀬玲央、その人だ。
玲央の訪問に、私は動揺した。
何しにここへ来たのだろう。
居留守を決め込もうと思ったけれど、部屋の電気が外に漏れているだろうから、それは無理だ。
私は諦めて重い足どりで玄関へと向かう。
玄関のドアガードを元の位置に戻し、鍵を開ける。若い女性の一人暮らしは、何はさて置き防犯が一番大事だ。
ドアを開けると、仕事帰りの少しだけくたびれた顔をする玲央が顔を出す。
「遅せーよ、真冬。っつか、スマホ見ろよ」
挨拶もそこそこに、玲央は私の家へと上がり込む。
「私もさっき帰ってきたところだから……」
私は玄関の扉を閉め、鍵を掛けると玲央の後ろを追う。
こうやって、連絡もなく唐突に玲央がうちへやってくる。もしかしたらさっきの連絡は、うちに来る前のお伺いを立てていたのかも知れない。
「あ? そうなのか……。じゃあ悪いことしたな」
「ご飯、作る気にもなれなくて、コンビニでお弁当買って食べ終わったところだよ」
机の上を指差して、現状を見せる。
ちょうど食事を済ませ、テーブルの上にゴミが散乱している。
いつもはだれが来てもいいように身の回りも部屋の片付けもきちんとしているけれど、玲央への気持ちを諦める決意をした私には、このようなアポなし訪問もどうでもいいと思うようになり、自分のペースで生活をすることにした。
だからこのように突然家に来られても、取り繕おうとも思わない。
うちにご飯を食べに来たのかもしれないけれど、そんなの私の知ったことではない。
あわよくば、私の手料理を当てにしていたのだろう。何だか玲央は、ばつの悪そうな表情を浮かべている。
私は机の上に置いたスマホの画面を覗き込み、発信者の名前を確認する。
画面に表示されているのは、『一ノ瀬玲央』。よりによって、今、一番見たくない人間の名前がそこに表示されている。
時刻は二十一時を少し回ったところだ。
私は気付かなかった振りをして、その着信を無視することにした。
そのまま放置していると、机の上で震えるバイブの音がうるさいので、私は机の隅に置いていたタオルに手を伸ばし、その上にスマホを置く。これで地味に響く振動や音も軽減されるだろう。
今日は残業で、いつもより帰宅時間が遅くなった。疲れ果てて夕飯を作る気力なんてない。私はアパート近くにあるコンビニで、お弁当と缶チューハイを買い、ようやく遅い夕飯にあり着こうとしたタイミングだ。
缶チューハイのプルタブを開封すると、中から圧縮されていた炭酸が、アルコールと共に霧状の液体となり勢いよく飛び出してくる。私はそれに口を付ける。
一分ほどスマホが震えていたけれど、私は完全無視を決め込んで、お弁当を食べていた。私が通話ボタンを押さなければ、そのうち玲央も諦めるだろう。
テレビの大画面で、サブスク配信のアニメを見ながらお弁当を食べ、合間で喉を潤すため缶チューハイに口をつける。
リアルタイムで観ることのできないものを、こうして時間を気にせず視聴できるのはありがたい。
お弁当を食べ終え、空いた容器を軽く水洗いしてゴミ箱へ捨てようと立ち上がったその時、インターホンが鳴った。
こんな時間にだれだろう。
私はインターホンに備え付けられているモニターを覗き込んだ。
防犯のことを考えて、玄関を部屋からチェックできる部屋を借りたのだけど、正解だった。
画面に映り込んでいるのは、一ノ瀬玲央、その人だ。
玲央の訪問に、私は動揺した。
何しにここへ来たのだろう。
居留守を決め込もうと思ったけれど、部屋の電気が外に漏れているだろうから、それは無理だ。
私は諦めて重い足どりで玄関へと向かう。
玄関のドアガードを元の位置に戻し、鍵を開ける。若い女性の一人暮らしは、何はさて置き防犯が一番大事だ。
ドアを開けると、仕事帰りの少しだけくたびれた顔をする玲央が顔を出す。
「遅せーよ、真冬。っつか、スマホ見ろよ」
挨拶もそこそこに、玲央は私の家へと上がり込む。
「私もさっき帰ってきたところだから……」
私は玄関の扉を閉め、鍵を掛けると玲央の後ろを追う。
こうやって、連絡もなく唐突に玲央がうちへやってくる。もしかしたらさっきの連絡は、うちに来る前のお伺いを立てていたのかも知れない。
「あ? そうなのか……。じゃあ悪いことしたな」
「ご飯、作る気にもなれなくて、コンビニでお弁当買って食べ終わったところだよ」
机の上を指差して、現状を見せる。
ちょうど食事を済ませ、テーブルの上にゴミが散乱している。
いつもはだれが来てもいいように身の回りも部屋の片付けもきちんとしているけれど、玲央への気持ちを諦める決意をした私には、このようなアポなし訪問もどうでもいいと思うようになり、自分のペースで生活をすることにした。
だからこのように突然家に来られても、取り繕おうとも思わない。
うちにご飯を食べに来たのかもしれないけれど、そんなの私の知ったことではない。
あわよくば、私の手料理を当てにしていたのだろう。何だか玲央は、ばつの悪そうな表情を浮かべている。
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