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2話
しおりを挟むカラオケの日程は真奈が皆の予定を聞いてすぐに決まった。来週末に行くカラオケには浮かれてしまうがカラオケの前に学校もバイトもある。それがただただダルいなと思いながら私と綾乃は今日も一緒に学校に向かった。
「ナギちゃん」
「ん?なに?」
いつもみたいに話ながら歩いていると綾乃はなんか困ったような顔をして言ってきた。
「あのね、私、カラオケ行っても平気かな?」
「え?平気だよ。どうしたの?」
綾乃は新学期が始まってからずっと私のそばにいるが他の皆とも打ち解けてきている。何ら問題なんか感じないのに綾乃は表情を暗くした。
「だって……なんか、邪魔じゃない?ナギちゃん皆と仲良いから私邪魔かなって思って……」
「全然邪魔じゃないよ?綾乃何言ってんの?そんなの私も他の皆も思ってないよ」
この感じはなんだか懐かしかった。綾乃は昔から人見知りで自分から話すタイプじゃない。それに消極的でいつも私についてくるような子だった。それは今も変わらないのだ。綾乃は基本自分よりも私をよく気にしている。私は安心させるように笑った。
「綾乃ネガティブ過ぎ。綾乃はいないとダメなんだから平気だよ」
「……うん。分かった。ありがとうナギちゃん」
少し笑ってくれた綾乃は納得したようだ。綾乃は昔からネガティブに考えやすいタイプだけど私が言えば頷いてくれる。私はほっとしながら綾乃と話ながら学校に向かった。
その日もいつも通りダルい授業が始まる。
授業が始まるとすぐに眠くなってしまうのをどうにかしたいがこれはもうどうにもならない。
前の方に座っている綾乃はいつも起きてて凄いなと関心しながら私はうたた寝していた。
そしてなんとか昼休みを迎えるとまた皆と一緒にご飯を食べたのだが、今日は朝からちゃんと来ていた真奈はメイクを始めた。
「ねぇ、ナギ?今日まー君とデートだから髪やってくれない?適当にまとめてくれればいいから」
それは私がよく頼まれる事柄だった。私は特にやる事もないからすぐに受け入れた。
「ん?いいけど。全部まとめる?それともハーフアップとか?」
「ん~、今日はハーフアップかな?」
「はいよ。ピンとかある?」
「はいはい。何でもあるから使ってください」
「おっけー」
メイクを中断しながらピンやゴムを出してきた真奈の髪を私はどうするか少し悩んだ。私はショートが似合わないからずっとロングヘアなのだがいつも自分で編み込みやアレンジをしている。これは特に理由はなくて暇だったからやってみただけだけど、時には髪をアイロンで巻いたり動画を見て編み込みの練習をして自分の髪をアレンジしていたら皆が注目しだして人にやってあげるようになったのだ。
今日はいつものデートみたいだから私は最近覚えた編み込みをしてあげようと思った。
私は真奈の後ろに行くと適当に真奈の髪をサイドから束を何本か作って編み込むと後ろで可愛らしく結びながらピンで止めてあげた。慣れれば五分くらいでできる簡単なやつだが見かけは可愛いし綺麗にまとまってるから靡いてウザくならないだろう。
「真奈こんなんでどう?」
私はできあがってから真奈に訊くと真奈は鏡で確認しながら喜んでいた。
「いやもうナギ本当にありがとう。大好き。明日お菓子買ってくるね」
「うん。チョコで頼むわ」
「任せて任せて。それにしてもいつも可愛くしてくれるよねナギ。こんなうまく編み込めなくない?私も練習するけど全然ナギみたいにうまくできないよ」
ちょっとへこんでる真奈の気持ちはとても共感できた。編み込みは難しいやつは本当に難しくてできなかったり、できても時間がかかったりするし結局は慣れなので何回かやらないとうまくできないのだ。私もこれに関しては夜な夜な真剣に動画を見ながらやってるのでもう努力としか言いようがなかった。
「頑張るしかないよ真奈。頑張るか美容院行くか自分で巻くんだよ。それしかない」
「正論だよねそれ。私もナギみたいにはできないけど頑張るわ。ナギ今度教えて?」
「うん、いいよ。富田とかにやりながら教えてあげるよ」
「うんうん。よろしくお願いします」
実際見た方が早いから実験に今度富田の髪を借りようと思う。編み込んだ髪に嬉しそうに笑いながらメイクに戻った真奈の髪に変なとこがないか最終確認していたらこちらを見ていた綾乃と目があった。綾乃はなんだか羨ましそうな眼差しをしていた。
「綾乃もやる?」
綾乃に軽い気持ちで尋ねると綾乃は驚いてすぐに首を横に振った。
「え?私はいいよ。私はそんな似合わないから…」
「…そう?まぁ、やりたかったらやってあげるから言ってね?」
「うん……」
綾乃はこういうのを誘ってもいつも否定してくるけどやったら可愛くなるのになと私は内心思っていた。
それから何だかんだして待ちに待ったカラオケはすぐにやって来た。私達はその日学校が終わってから皆で歩いて学校の最寄り駅のカラオケに向かったが今日は啓太と大樹も一緒だった。大樹は同じクラスの啓太の友達で真奈が人数多い方がいいからと呼んだらしい。しかし綾乃が人見知りを発揮してしまって私の隣からぴったり離れなくなった。
大樹に関しては啓太のように見かけも中身もいいし富田みたいにフレンドリーで関わりやすいやつだから綾乃以外は皆仲良しなんだけど、男に慣れていない綾乃は大樹よりも綾乃の隣に座った啓太に困っていた。
「綾乃ちゃんってナギと幼馴染みなんだよね?」
「……うん…」
「ナギって昔から変わらないの?」
「……うん。ナギちゃんは、ずっと変わらないよ……」
「そうなんだ。綾乃ちゃんはナギと同じとこに住んでるの?」
「……うん……」
啓太は綾乃に優しく接してくれるのに綾乃はちょっと顔を下げてしまっている。さっき大樹と自己紹介した時もこんな感じだったけど、これは困ったなと思いながら私は綾乃の手を掴んだ。
「綾乃?一緒に歌わない?綾乃の好きなやつ歌おうよ」
とりあえず歌ってしまえばいいだろうと思って電目を操作しようとしたら綾乃は恥ずかしそうに断ってきた。
「ナギちゃん。私恥ずかしいからいいよ」
「え?一緒に歌えば恥ずかしくないよ。一緒に歌おうよ綾乃」
「でも、皆いるから恥ずかしいよ…」
綾乃は普段カラオケなんか行かないから緊張しているんだろう。でも、このままの空気にさせるのもどうかと思う。啓太は優しいから綾乃を気にかけていると思うし私は綾乃の好きな歌を一応入れといた。綾乃が歌わなくても私が歌えばいい。
「綾乃とりあえず綾乃の好きなの入れといたからせっかくだし歌おう?カラオケ来たのに歌わなかったらもったいないよ」
「……うん……」
全く乗り気じゃない綾乃は歌わなさそうだが入れないよりいいだろう。
「ねぇナギ!富田とこれ一緒に歌おう?」
綾乃にまだ何か話しかけようとしたら富田が楽しそうに電目を見せながら話しかけてきた。綾乃を気にかけたいけど皆がいるとそれも叶わなくなる。
「ん?あぁ、これか。うん!いいよ」
「よし!あとさ、これも皆で歌おうよ?」
「うん。いいじゃん。盛り上がるから入れといて」
「おっけー」
私はこうやって皆とも話ながら綾乃の様子を気にかけてカラオケを楽しんだ。だが結果的に綾乃は順番が来た時に恥ずかしがってちょっとしか歌わなかったし皆で歌おうとした歌も歌わなかった。最終的に皆は楽しそうだったけど綾乃は楽しくなかったかもしれない。
私はカラオケの帰り道にいつも通り静かな綾乃に悪く思いながら話しかけた。
「綾乃、カラオケつまんなかった?」
「ううん。そんな事ないよ…」
綾乃はカラオケが終わって二人になってからちょっと暗い感じがする。これは綾乃のキャラじゃなかったし楽しめると思ったのに思わぬイレギュラーがあったからだと思う。それに席がよくなかったよな……。どうにもならなかったけど綾乃をどうしよう。
「ナギちゃん…」
「ん?」
「せっかくナギちゃんが一緒に歌おうって言ってくれたのに歌えなくてごめんね?ちょっと、緊張しちゃって……」
「そんなの気にしてないよ」
明るくさせたかったのに私より綾乃の方が気にしていたようだ。私は綾乃に気を使わせたくなくて明るく話した。
「今日はいつもの皆じゃなかったししょうがないよ。それに、カラオケなんかいつでも行けるんだからまた次行った時に歌えばいいじゃん」
「うん。ありがとうナギちゃん。あとね…」
「ん?」
綾乃は気にし過ぎてしまうからまだ何か気にしているのかもしれない。そう思っていたら全く違う話題を出された。
「あの、啓太君は……人気なの?」
「え?啓太?」
それはつまり気になるって事なの?私は驚いていたがあの態度を見てそんな風には思えない。ちょっと疑問に思いながらも話してあげた。
「まぁ、人気っていうか普通にモテてはいるんじゃないかな?」
「そうなんだ……」
「啓太の事気になるの?」
啓太は普通に誰が見てもイケメンだと思うが綾乃が異性を気になっているのを私はこれまで見た事がない。率直な疑問に綾乃は慌てて否定した。
「違うよ?そんなんじゃないよ?ただ、……優しいなって思ったから…」
「そっか…」
私はとりあえず返事をしておいた。でも、この感じは私の予想通りで間違っていない気がする。だって好きじゃない限り気にならないでしょ。ましてや綾乃だ。異性の話題なんか出ない綾乃が異性の話題を出している。
私はそれから綾乃が気になって綾乃を観察するようになった。そして観察をするに連れて私の予想は確信してくる。
綾乃は富田と啓太、大樹と席が近いからよく四人で話しているがなんか明らかに様子が変だった。男と話すのに慣れていないから困っている感じがするのはあるんだけど綾乃は照れて嬉しそうにもしていた。たぶん私じゃないと普通の人は消極的なんだなと思うだけだが私は綾乃との付き合いが長いからすぐに分かった。
目線も啓太によくいっているし、あれはきっと啓太が好きだ。私はそれを見て綾乃に好きな人ができたら応援して助けてあげようと思っていたのになんかモヤモヤしていた。嫉妬しているはずないし二人は友達で友達以上の気持ちはない。なのに綾乃が啓太と嬉しそうに話していると喜ばしく見られない。
自分でも分からない気持ちを私は複雑に思っていた。
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