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4話
しおりを挟むおしゃれな店について個室に通されて向かい合って座った。ここは葵が行ってみたいと言っていた洋食の美味しいお店。ラクレットが人気らしい。さすが女子と言った所か、私は食べたことがないのでわくわくしていた。
「じゃあ、私はとりあえずハイボールで、葵は?」
「あ、私はカシスオレンジで」
「定番だね。じゃあ、とりあえず飲み物頼もうか」
呼び鈴を鳴らして注文してメニューを見ながら適当に決めていたらすぐに飲み物が運ばれた。さっき決めたのを注文して私達は乾杯をする。
「はい、じゃあお疲れさま。あと久しぶり」
「うん、お疲れさま」
葵と知り合ってからお酒を控えていたのでとても美味しく感じられた。あぁ、今日は飲みすぎないようにしないと。葵はお酒がかなり弱いらしいしまたあんな姿を晒すわけにはいかない。
「由季はよくここらへん来るんだっけ?」
「うん、まぁまぁかな。よく行くバーがあってさ。後で行ってみる?あそこゲイバーでもあるから楽しいよ」
「ゲイバー?行った事ないけど行ってみたいかも」
「じゃあ、後で行こっか?他にもショットバーとかあるけど、ま、飲んでから決めよう」
「うん」
友達に教えてもらった洒落たバーだから、大丈夫なはず。私が飲み歩くバーの中に入っている所なのでもしかしたら誰か友達が来ているかもしれない。でもその前にせっかくの料理を堪能する。後の楽しみも増えた所で料理が運ばれてきた。
そして、私達は連絡を取り合っていた内容の延長戦を話した。どこのどこで遊んで、何を食べて、何をして……話が尽きることはなく葵も嬉しそうで安心した。
そしてメインのラクレットはインスタ映えや女子が好きそうな感じで驚いた。味も美味しかったしお酒がよく進んだ。
「そろそろ行こっか?」
葵が二杯目を飲み終える頃私は四杯目を飲み終えた。葵はもう顔を赤くしていて本当にお酒が弱いんだなと実感した。友達にお酒の弱い人がいないから心配になってしまう。とりあえずはさっきのバーで良いか次は。
「うん、次はどうする?」
「次は、さっき話したバーに行こっか?」
「うん……分かった」
お会計を終えて少しふらつく葵の腕を引いてすぐのバーに向かう。葵は顔が赤いしなんだか心配でちらちら見てしまう。
「葵、大丈夫?」
「うん……あんまり普段から飲まないから…なんか酔いが早くまわったかも」
「バーついたらお酒以外もあるからちょっと休憩しよう、もうすぐだからね」
「うん、ありがとう」
こないだとは逆な感じで葵は申し訳なさそうにしていたが私には苦でもなかったので笑ってしまった。あんなにしっかりしててもお酒に酔うと誰でもこうなるのだ。
「葵ついたよ。ここ、今日は空いてるかな」
初めて行くなら絶対に入りづらいと思われるビルの中の怪しそうな扉を開く。通い出すともはやそんなことは思わなくなるし中は案外普通だ。
「いらっしゃいませー、あ、由季、なんか久々?今日は見ない友達連れてきたね」
ヒゲを生やした黒髪短髪のバーテン翔太が出迎えた。風貌はいかにも今時のチャラ男ではあるが彼は生粋のゲイである。
今日は翔太と違う客に接客している夢ちゃんらしい。夢ちゃんは音大生で、いる時は必ずピアノを演奏しているいわゆるお嬢様系の女の子のバイトだ。
このバーはカウンター席が左右に二つありその先を進んだ奥にはダーツとピアノがおいてある。マスターが好きな事をしたいらしくコンセプトは定まっていないがピアノの生演奏をよくやっている。
「おはよー、うん。こないだ飲み潰れた時に助けてくれたんだよこの子!本当良い子すぎてさー、感激」
葵の肩に手をまわして肩を揉みながら主張すると呆れた顔をされた。
「また飲み潰れたの?なんかごめんね。由季は酒癖悪くて本当ヤバイから、無視して良いからね次からは」
「え、あぁあ、はぁ」
いきなり話を振られて戸惑う葵を席に座らせて荷物を受けとると翔太に渡した。
「まぁまぁ、これからはちゃんと控えるから大丈夫だよ!荷物預かっといて」
胸を張って答えても呆れられる。なぜだ。翔太は荷物をしまいながらも冷えた目で見てきた。
「あんたのそれは信用ならないから」
「翔太冷たくない?なに、なんなの?」
「はい、で、なに飲むの?」
「え、無視なの?」
ここで葵が隣でくすくす笑っていて、面白いねと肩を震わせていた。いつもこんな感じなんだよと肩を竦めて改めて翔太を紹介した。
「あ、紹介しとくね、翔太はバーテンで葵と同い年だっけかな?ゲイで辛口だけどなんかもう長い付き合いだから潰れても何だかんだ面倒見てくれるし相談も乗ってくれて良いやつなんだよ」
「どうもー」
小さく頭を下げた翔太に葵も小さくどうもと言いながら頭を下げた。律儀だなと思いながら今度は葵の肩に腕を回す。
「で、こちらのスーパー綺麗で可愛い子は葵。すんごく良い子。こないだ終電寝過ごして吐いてるとこを助けてもらってさ。感謝してもしきれないよ……」
頭をポンポン撫でて改めてお礼を言うともう良いからと照れていた。
翔太は変わらず冷めた目をしている。止めてくれないかそろそろ。
「由季本当に酒の飲み過ぎ止めなよ?そのうち事件になってニュースに流れるんじゃないの?てゆうか、葵ちゃんが不憫すぎる。こんなやつを助けてっ……て、もしかして葵ちゃん由季を家に泊まらせたの?」
「え?はい。道端で寝て始発で帰るって言うから…」
その発言にさらに呆れ顔をされた。そんなダメな発想だったかと思い返すもあの時は色々しんどかったのが大半を占めすぎていた。でも昔は大丈夫だったのだ。
「はぁー?もう由季の発言もヤバイけど葵ちゃんこんな見ず知らずのバカよく泊めたな」
「だって、道端で吐いてて、酔ってたし危ないし放っておけなくて……」
「あー、この子……本当に良い子だね」
葵がおどおどしながら話すのを聞いてから翔太は感心したように言った。私にもそれは本当によく分かる。このご時世に良くできた人だ。
「でしょ?だから言ってるじゃん、まぁまぁそんな恥ずかしい話やめてさ、とりあえず私いつもの!葵はノンアルコールにしとけば?大丈夫?」
とりあえず翔太にチクチク言われそうなので飲み物を注文した。葵はさっき歩いたから大丈夫とまた可愛いカクテルを頼んだ。
翔太が手際よくハイボールにカシスのリキュールを混ぜたいつも飲んでいる物とファジーネーブルを作ってくれると早速翔太を交えて乾杯をした。
「あぁー、最近飲んでなかったから体に染みる本当美味しいわぁ。葵は弱いんだから無理しないでね?」
「う、うん、大丈夫。心配しすぎだよ?」
「そりゃ心配だよ!葵飲んだら即顔赤くするしこんな可愛いくて良い子にあんな辛い思いさせられないよ」
今でさえも顔が赤いから心配してしまうのは当たり前だろう。翔太もそれには便乗してきた。
「そうそう、こんな酒飲むしか能がない女に無理して付き合うと死ぬだけだから。あっ、一応水も置いとくね」
「あ、すいません、ありがとうございます」
翔太は何かと気が利くタイプですぐにお冷やをテーブルに置いた。こいつゲイじゃなかったら絶対女たらしだろう。
「あの、翔太さんと由季は長い友達なの?」
少しお水を飲んで訪ねる葵に翔太と目を合わせた。色々ありすぎていつ頃だっただろうか、少し考えて先に話したのは私だった。
「長いもなにも三年くらい?気づいたらいたから思い出せない」
「うん、三年じゃない?てかあんたはずっと潰れてるか騒いでるか泣いてるかのどれかじゃん。今まで大変だった記憶のが強いわ」
「それ言わないでくれますか?本当に」
酒癖が悪いのはもう認めているが葵とはまだ付き合いが浅いから引かれそうで怖いのに翔太はまたしても正確なことを言う。と思ったが葵は笑いながら驚いていた。
「由季は本当に酒飲みなんだね」
「酒飲むってゆうか呑まれてる方が多いけどね、こいつは本当に特に」
「もうやめて、気を付けるから!いやでも今回は本当にやらかしてるから気を付けるよ!まじで!」
酒を煽るとどうだかと翔太が呟いていたがまぁ無視だ。そんな話をしていたら夢ちゃんがピアノの生演奏をするらしくマイクで話し出した。今日はジャズらしい。翔太も何やら演奏の準備を始めだした。
「ピアノの演奏なんかしてるんだね。すごい、初めて聴く」
感嘆の息を漏らしながらキラキラした眼差しでピアノを見た葵は嬉しそうだった。良かったと思っていたら夢ちゃんが演奏を始めたので耳打ちで話した。
「あの子は夢ちゃんって言って現役音大生なんだけどピアノ上手いし可愛いしいる時はピアノ弾いてること多いからあんまり話せないけどおもしろいんだよ、今度話せたら話してみよ?」
「そうなんだ、うん。……由季は皆と仲が良いんだね」
「え?そうかな?まぁ飲み歩いてること多いから友達はできやすいけど……」
笑顔だった彼女がふと視線を下げて少し俯いてしまう、どうしたのだろうか、もしかして具合悪い?膝の上で手を握っていたからその手に自分の手を重ねて軽く握るとようやく視線を上げてくれたが悲しいような怒ったようなよく分からない表情をしていた。一体どうしたんだ。
「葵、どうしたの?」
「……あのね……私……」
「おっ!由季!!超久々だな、今日来てたんなら連絡しろよ!!」
葵が言いかけたところで聞き覚えのある声が後ろからして振り返ると、とてもがたいの良い茶髪の背の高い男がいた。彼は翔太の友達で翔太と飲んでる時に知り合った凄いお酒が強い男だ。爽やかイケメンだけどとてもバカである。だけど話は合うしおもしろいからよく飲みに行く仲の良い友達だ。
「あ、透!!めっちゃ久々、ごめんごめん、今日は友達と来てたからさ」
「そうだったのか、翔太ー、酒くれ酒」
どかっと椅子に座ると手を挙げて軽く振り翔太を呼んでいる、私は慌てて葵に向き直るともうさっきまでの表情はなくて小さく笑っていた。
「本当に友達いっぱいだね、なんか羨ましいよ」
にっこり笑って重ねた手を少し握って離すとお酒をまた飲み出した。よく分からないが具合は悪くない?みたいだ。本当にどうしたんだろう、さっき言いかけた言葉はそんな言葉ではない気がする、誤魔化したような雰囲気に口を開きかけたがまたしても透が口を挟んできた。
「それにしても由季にしては超綺麗な子連れてんな。お前何やらかしたんだ次は?」
「はぁ?もう、飲み潰れた所を助けてもらっただけだから」
「またかよ?由季それが男だったら襲われてるぞ?」
「その点は気を付けるようにしてるから。てゆうか透、私は今日早めに帰るからね。朝までは飲まないよ残念ながら」
透は翔太から酒を貰うと残念そうに一杯飲んだ。よく朝まで飲んでいようがいまいが潰されてしまうし今日は葵もいるしセーブするに決まっている。最初に釘を刺さないとこいつはしつこいのだ。
「えー、なんだよ久々に会ったのによー」
「まぁまぁ、いつでも飲み行けんだからまた次回ね」
「いや、でも一杯飲んどけって。奢るから」
「いや、いりません、いいです。どうせテキーラでしょ?」
「まぁまぁいいからいいから。翔太、テキーラ用意して」
食い下がらない透。本当に酒飲みというのは質が悪い。大きくため息をついても無意味だった。
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https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789
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