好きをこじらせて

神風団十郎重国

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37話

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無事に明日の予定も決まったところで皆で飲みながら少し話して解散した。葵は飲んでいる時に私の服の袖を私にしか分からないように引っ張って飲むのを控えるように促してきたから私は本当に少ししか飲まなかった。本当に心配性である。
それから寝る準備をして早めにベッドに入ることにした私達はおやすみと挨拶をしてベッドに入る。今日全く見ていなかった携帯を確認すると葵から連絡が来ていた。私は不思議に思いながらそれを確認する。

[背中向けないで]

それだけ書いてある文面に私は苦笑いしながら隣のベッドにいる葵の方に体を向けた。前にもこんなことを言っていたのを思い出す。葵は寂しがり屋だから本当に嫌なんだろう。葵の顔を見ると葵は嬉しそうな顔をして携帯を弄っていた。

[こっち向いたままだからね?]

また葵から連絡が来て私は返事を返す。

[はいはい]

葵はそれにすぐに返信した。

[明日は一緒に回りたいから隣にいてもいい?]

[うん、いいよ]

[あと、写真も撮ろうね?]

[分かってるよ]

[絶対だよ?]

[うん。分かってるってば]

こんなに近くにいるのに無言で携帯を弄りながらお互いに笑いあった。暗いけど携帯の明かりで顔がよく見える。葵はそれからおやすみと連絡をしてきたから、私もそれにおやすみと返すと満足したように笑う。でも、寝るかと思いきやまた携帯を弄りだした。なんだろうと思っているといきなり携帯を置いて布団を被ってしまう葵。疑問に思いながら葵から来た連絡を確認するとただ一言だけ書かれていた。

[大好き]

それを見て笑顔になる自分に気づいた。だから照れてあんなことしているのか。可愛いやつめ。私はそれに私もだよと返信をしてから携帯を置くとそのまま目を閉じた。また携帯を見てどうせ照れるんだろうなと思うと内心から笑えてしまう。



朝、目が覚めて時計を確認するとまだ六時だった。葵も遥もまだ寝ている。葵は寝る時に布団を被っていたのにちゃっかり顔を出してこちらを向いていて私は朝から笑ってしまった。それにしても、朝早く目が覚めたし丁度良いので大浴場にでも行くことにした。皆寝てるから静かに準備をして部屋を出る。

大浴場につくと結構広い温泉で外にも温泉があって綺麗で良い感じだった。朝だから人もあまりいなく私は体を洗ってから湯船に浸かる。本当に気持ち良いものだ、足を伸ばしながらゆっくり堪能した。外の温泉も景色が良くて凄く良かった。遥がサウナが良いと言っていたが昨日のぼせたのでサウナは入らずに温泉から上がった。

温泉から出てから気分が良くなった私はロビーの方にある売店を覗いた。地域の名産品等があって最初から少し気になっていたのだ。少し見て回っていると名前を呼ばれて振り向く。そこには翔太がいた。

「翔太?なにしてんの?」

「風呂入ってロビーで休もうと思ってたんだよ。由季は?」

「私も同じようなもんだけど、早いね?」

「ゆっくり浸かろうと思ったからな」

翔太もどうやら仲間のようで私達はとりあえずロビーのソファーに腰掛けて少し休憩することにした。翔太が買ってくれたジュースを飲みながら窓の外を眺める。

「温泉気持ち良かったねー、昨日のぼせたからサウナは入らなかったけど」

「あぁ、それは止めといた方がいいだろ。そういえば、透と近くの商店街まで行ったんだけど色々名産の物が売ってて楽しかったよ」

「え?そうなの?あ、レイラがそんなこと言ってたわ。何か買ったの?」

近くには確か、川と商店街みたいなのがあると言っていたのを思い出す。何か良さそうな物でも合ったなら行きたいなと思ったけど翔太は少し顔をしかめて間を開けてから答えた。

「……置物。熊の」

「ん?なんで?ここに来て置物?」

予想してなかったそれに笑えてしまう。こんな所まで来て置物だなんて、いい若い者が今時センスがなさすぎる。翔太は苦笑いする。

「なんか、インスピレーションを感じる!とか何とか言ってデカイ熊の置物買ってたよ。あとは、酒買ってた。俺は食べ物とか買ったけど」

「インスピレーションって、……意味分かってんのあいつ。何を閃きたいの?」

アホ過ぎて理解できない。それは翔太も一緒だった。

「いや、俺もよく分かんねぇ。部屋に飾れば良いことが起きそうだから部屋に飾るらしいけど、あいつってバカだよな」

「確かに。思考回路がどうにかなってるよね」

「ははは、それは分かる気がする」

二人で笑いながら色々話していると透とレイラ達がやってきた。時計を見るともう朝食の時間だ。私達は立ち上がるとレイラは怒ったように私の近くまで来た。風呂に行ったのがバレてるみたいだ。

「由季、一人でずるい!なんで起こしてくれないの?」

「え、だって、寝てたから起こしたらかわいそうかなって、ごめんね?」

「由季と一緒に入りたかったのにー!」

「まぁまぁ、夜もあるんだから、良いでしょ?」

思いの外怒っているレイラを宥めていると葵も不満そうに私を見ていて、少し肩身が狭く感じる。たかが風呂なのに二人は気にくわないようだ。
とりあえずそのまま皆で朝食に向かうと、朝食はバイキングになっていたので、好きな量と食べたいものを取って軽く食事を済ませる。

「由季温泉入りに行こーよー?」

レイラは朝食を食べて部屋に戻る時に腕に引っ付きながら駄々をこねた。葵からの視線を横から感じながら私は苦笑いする。これは怒っているかもな。

「朝行ったから私はいいよ」

「やだー。なんでよ!」

「夜もあるって言ってんでしょ」

「もー、けち!バカ!葵ちゃんと一緒に入るもん!ね、葵ちゃん?」

私の隣を歩いていた葵は良いよと言っていたけど朝会ってから不満そうに私を見てるし、朝食の時に話しかけてもそっけなかった。機嫌を悪くしてそうだから、どうしようと思いながらそのまま部屋に戻ると葵と遥は部屋についている露天風呂に入った。ここは遥に葵を託そうと思って軽く化粧をしてから暇になった私はせっかくだし遥が言っていた川まで少し歩いてみた。


それからチェックアウトの時間になって私達は宿を出る。車に乗って最初の目的地、ひまわり畑に向かう。レイラは風呂に入ってすっかり機嫌を良くしたのか朝の不機嫌さはないけど葵は少しご機嫌ななめそうだった。私を見る目がまだ不機嫌そうだけど、相変わらずのレイラのマシンガントークが炸裂して話していたらひまわり畑についた。

「うわ、凄いきれいだね!」

「本当だな!」

車から降りた私達は少し歩いてひまわり畑を見た。レイラは透と興奮したようにひまわり畑を見ている。一面ひまわりが咲いているそこは本当に綺麗だった。葵は私の隣に昨日言っていた通りに来ると機嫌良さそうにひまわりを見ていた。

「由季、いっぱい咲いてるね。ひまわり」

「うん、そうだね、早速見て回ろっか」

葵の表情に少しホッとしながら一緒に歩き出そうとするとレイラに手を引っ張られて少し前のめりになる。

「由季!!もっと奥まで行ってみよ!これはヤバイよ!早く早く!!」

「ちょ、分かったから!引っ張らないで、危ないから」

強引に引っ張ってくるレイラに仕方なく承諾して葵に目だけで謝罪を伝えると遠慮がちに笑った。約束したのに少し申し訳ない気持ちになるけどレイラにも悪気はないし私はレイラに引っ張られるように少し走りながらひまわり畑を先に回った。

「由季!すっごい綺麗だね!どこまで行ってもひまわり!」

「そうだね。それより歩かない?足が疲れるし危ないよ」

「気分良いからもうちょっとだけ!」

さっきから小走りでひまわり畑を回っている。足も疲れるし地面は砂だし危ない。レイラは少しヒールがあるパンプス履いてるしよくこれで走るなと思っていると案の定バランスを崩したのか転びかける。私は咄嗟にレイラの腕を引いて抱き締めるようにお腹に手を回す。

「わっ!」

「ちょっと、大丈夫?」

ギリギリ支えられたから転ばなかったけど、レイラに少し呆れる。本当に子供か。

「ありがとう由季」

「もう、だから言ったでしょ?ひまわり畑は逃げないから、はしゃがないの」

「ごめんね、怒んないでよ。もう走らないから」

体を離してレイラは可愛らしく謝ってくるけど本当に分かっているのか?私はため息をついてちゃんと気を付けるようにしっかり言ってから並んで歩き出した。

「由季、由季、写真撮ろーよ?」

しばらく歩くと携帯を取り出したレイラはひまわりに近づいて私を呼ぶ。はいはいと返事をしてからレイラに近づいて写真を撮った。

「良い感じ!思い出いっぱいだね!本当にひまわり綺麗!」

「そうだね」

私もレイラも笑うとレイラは得意気な顔をした。

「ふっふっふ、聞いて驚け、このひまわり畑は私が提案したんだよ!凄いでしょ?」

「そうなの?葵かと思ったけどそうだったんだ。やるじゃん」

得意気なレイラを誉めるとレイラは上機嫌に笑う。

「でしょでしょ?もっと誉めてくれても良いんだよ?」

「じゃあ頭撫でてあげるね」

「ふっふっふ、ありがたい私の頭を撫でれるなんて光栄だよ由季!」

そんなことを言うレイラに私はちょっと意地悪してやろうと思って笑いながらレイラの頭を髪がぐしゃぐしゃになるように撫でた。

「ちょっ!ちょっと!由季!髪ぐしゃぐしゃにしないでよ!バカ!」

「あっはっは、光栄ですレイラ様」

髪を手で直しながらレイラは怒っていたけど私は髪が乱れたレイラがおもしろくて可愛くて笑ってしまった。
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