好きをこじらせて

神風団十郎重国

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43話

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後ろから葵を抱き締めながら色々と話ていると葵は少し眠たくなってきたのか反応が鈍くなってきた。ちょっと疲れていると言っていたけどやっぱり疲れはあるようだ。健気な姿に胸が締め付けられる。疲れてるくせに私といたいと思ってくれているのか。しかしまだ午前中だし、少し寝ても良い。

「眠い?」

目を擦っている葵の耳元に顔を寄せる。

「うん、なんか、由季暖かくて。安心してたらちょっとだけ眠くなっちゃった」

決して疲れたとは言わない葵。その優しさに申し訳なくなって耳にキスをした。少しだけ身を捩る葵。

「くすぐったいよ。なぁに?」

「可愛いからしたくなっちゃった。ね、私もちょっと眠くなってきたから、ベッドで横になろう?」

「…うん」

適当に理由を付けて二人でベッドに横になると葵は眠そうだけど嬉しそうにして私を見てきた。

「由季、もうすぐ誕生日でしょ?何か欲しいものある?」

「え?あぁ、そういえば、そうだったね。別に欲しいものは……ないかな」

すっかり忘れていたけど今月末は私の誕生日だった。葵は本当に記憶力が良い。それに嬉しく思うけど、葵は私の返答に不満を漏らす。

「なんで?何かあげたいから考えて?」

「えぇ?でも、欲しいものとか言われても思い付かないよ。それに葵がくれるなら何でも嬉しいよ」

本心で言っても葵は納得していないようだった。度々葵からは要望を聞かれるけど、私はそういうのは特にないから返答に困る。

「…本当にないの?」

「うん。……あ、じゃあ、葵のご飯食べたい!」

思い付いた苦し紛れのそれに葵の表情は変わらない。

「それじゃ、いつもと一緒だよ」

「そうだけど、食べたい!葵のごちそう満喫したい。だめ?」

「由季がそう言うなら良いけど…」

なんとか答えられたかと思ったけどここで疑問が浮かんだ。葵は今仕事が忙しいし無理なのではないか、葵のことだから無理してでもやりそうだし何か違うやつの方が良いかもしれない。私は早速提案し直した。

「あ、でも、葵は今仕事忙しいからやっぱり違うのに…」

「大丈夫!由季の誕生日は、休み……取ったから。お祝いしたくて、一日空けたの。……予定、空いてる?」

「え、あぁうん、空いてるけど。そこまでしてくれたんだね?ありがとう」

遮ってきた葵にもう先に手を打たれていたみたいだ。恥ずかしがる葵にお礼を言う。これは私が何か言わなくても、凄いお祝いをしてくれそうだ。それに、私が言ったこと以外に何か準備をしているかもしれない。

「ううん、良かった。じゃあ、いっぱい美味しいの作るから期待しててね」

「うん。ありがとう」

嬉しくなって顔を寄せてキスをする。お礼も込めて優しくキスを繰り返して至近距離で葵を見つめるともう顔は赤くなっていた。背中に手を回して葵の体温を感じる。

「いつもありがとうね、私のために色々してくれて」

「ううん、由季のためだもん。それに私も……一緒にいたいし」

「うん、ありがとう。好きだよ」

また目を閉じてキスをする。会えなかった分葵がいつもより可愛らしくて愛らしくて触れたくなってしまう。葵は唇を離すといつものように抱きついてきて顔を隠してしまった。

「私も……好きだよ。私が一番由季が好き」

葵の小さな愛の囁きは胸をいっぱいにしてくれた。嬉しくなった私は葵を呼びかけてまたキスをする。すると葵は嬉しそうに笑った。

「誕生日はね、ケーキも焼くから。何か食べたいものある?」

それにさらに私は嬉しくなった。

「え、ケーキも焼いてくれるの?すごい嬉しい!葵が作ってくれるのなら何でも良いけど、……あ、あれ食べたい!ミネストローネ!あれ本当に美味しかったからたまにコンビニでも買うんだよ」

あれは本当に美味しくて私が唯一好きだと胸を張って言える食べ物だ。大体の物は好きだけどミネストローネは郡を抜く。ちょっと勢いよく話してしまったが葵は少し離れてから笑って私を見てくる。

「ふふふ、うん、いいよ。あとは?何かある?」

「あと?……あとは……葵の料理全部美味しいからなぁ……んー、……選べない。葵に任せるよ」

「ふふ、うん、分かった。頑張るね」

葵は本当に楽しそうに笑ってくる。なぜそんなに笑っているのかよく分からなくて目で問いかけるように少し首を傾げた。葵がこんなに笑うのは珍しかった。

「そんなにおもしろい?」

「違うよ、由季が可愛くて、笑っちゃったの」

「えぇ?どうゆう意味?」

葵はよく私を可愛いとか綺麗とかとにかく高評価をしてくるけど本当に普通だから同意できない。好きなのは分かるけど葵の可愛いとかを感じるポイントは謎だ。訝しがる私の顔を葵は愛おしそうに撫でてきた。

「子供みたいで可愛いなって。昨日もね、由季酔っぱらってて大変だったけど子供みたいですっごく可愛かったの。いつも嫌な顔なんかしないのに嫌な顔しながら私の言うこと聞くし、髪乾かしてたら本当に寝ちゃいそうだったし、思い出しただけで可愛くて笑えちゃう」

「……なんか、よく分からないんだけど」

葵が可愛くて笑えるのは分かるけど、今言ったこと全部迷惑かけてやらかしてると思うのだが葵は違うらしい。そんな葵は、可愛いらしく首を傾げるだけだ。

「え?そうかな?いつもは、可愛いというか綺麗だし優しくてかっこよくて頼りになるけど、さっきもちょっとテンションが上がったり考えてるとことか可愛くて、顔が勝手に笑っちゃうの」

「……うん。よく分からないけど分かった」

いつもの部分も同意しかねるけどとにかく私が好きなのは分かった。自意識過剰みたいだけど葵は私を好きすぎるところがあるから、だらしないところも良く見えるんだろう。本当に私には勿体ないくらいだ。すると頬に痛みが走る。

「…痛いんですけど」

葵が不機嫌そうにさっきまで撫でていた頬をつねってきた。地味に痛い。

「だって、分かってないみたいなんだもん」

「あー、分かったよ?だいぶ分かった」

とりあえず笑うけど今度は葵が訝しがる。

「本当に?」

「本当本当、よく分かりましたよ」

「嘘でしょ?」

「本当だよ、私が好きってことでしょ?」

つねっていた手を捕まえて顔を寄せると明らかに動揺する葵。

「え?……そ、そうじゃなくて」

「えぇ?そうでしょ?好きじゃないの?」

「す、好きだけど、……あの、近いから!」

葵は抵抗するように反対を向いてしまった。ちょっとからかっただけでこの反応だ。私は笑いながら後ろから抱き締めて逃げられないように密着する。もう少しからかってやろう。私はいつもみたいに話した。

「葵は甘えん坊だと思ってたけど、頼られたり甘えられたりするのも好きなの?」

「え?……それは……うん。…好きだよ?」

「ふーん。じゃあ、私にはいつもどうしてほしい?」

「そ、そんなの、……そんなの、いつもと一緒で……いい」

「いつもって?」

「いつもは……いつもだよ」

声量がどんどん弱くなる葵。こうやって言葉で攻めてからかうといつもこれだ。葵は押してくる時があるくせに押されるのにとことん弱い。顔は見えないけど、緊張して恥ずかしがってるのが分かる。私がからかってるのをたぶん理解していない純粋さが本当に可愛いくて苛めたくなる。

「それじゃ分かんないよ。教えて?」

「え?……だから、…えっと」

中々言わない葵に埒が明かなさそうなので、ずるいことを言ってみた。

「教えてくれないなら葵とどう接したら良いか分からないよ?こうやって触るのも嫌?もう止める?」

「あ…やだ!だめ!……嫌じゃないから、止めないで」

こう言えば葵が嫌がるのは分かっていた。手を離そうとした私の手を強く握って顔を私に向けて否定する葵は本当に困った顔をしている。この子は本当に真面目というか、可愛らしい。

「じゃあ、こっち向いて?体ごと」

「うん」

葵にこちらを向かせる。素直な葵の可愛らしい困った顔を見ていたら何だか良いことが思い付いた。私は体を起こして壁に背を預けてベッドに座るような姿勢をとった。そして不思議そうに少し起き上がって見ている葵に声をかける。

「葵がさっきみたいに逃げないようにしたいから、ここに座って?」

軽く私は自分の膝を叩く。葵には前にこれで凄い動揺させられたし、今度は私の番だ。以前風呂でやった時のことを思い出したのか葵は真っ赤に顔を染めた。

「…や、やだ。無理。恥ずかしいよ」

動揺しながら視線を逸らす葵。ここで折れる訳がない私は葵の腕を引っ張って笑う。

「早く、前もやったでしょ?さっきの話まだ終わってないし、早くしないと怒るよ?」

「……うん。……やるから、怒らないで?」

いたって普通に言う私に葵は顔を赤くしながら従う。こんなことで怒る訳ないのに葵は信じて恥ずかしそうに私の膝の上に跨がった。わずかな罪悪感を感じるが恥ずかしそうに見つめてくる葵が可愛くてすぐに消え去る。私も性格が悪い。

「……これで、いい?」

「うん。肩に手を置いといて?危ないから」

「うん」

肩に手を置いたのを確認すると腰に手を回して距離を縮める。葵は本当に恥ずかしそうにして目を逸らす。

「……重くない?」

「うん。それより、さっきの続き。どうしてほしいの?」

見上げるように葵を見つめながらまた問いかけた。葵はもう逃げられないのにもじもじするだけだ。それがとても愛らしく感じる。

「い、いつも、みたいに…えっと…」

「なに?」

「……頭撫でたり、抱き締めたり……して?それで……いっぱい、触って?あと、……私にもたまには、甘えてほしい…」

内心葵にやっと言わせたことに満足しながら自然に笑う。彼女の望みに胸が高鳴る。

「甘えてほしいの?」

「うん。……由季はいつも私を甘えさせてくれるし、私は……由季の、か、彼女だから」

「そっか。じゃあ、こんな風に?」

私は恥ずかしがりながら言う葵の胸に顔を埋めた。大きな胸は心地よくて葵の鼓動が聞こえる。甘えてほしいだなんて、そんなことを考えていた葵をまた好きになりそうだ。葵は驚いたような声を出したけど控えめに頭を抱き締めてくれた。

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