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77話
しおりを挟む「心配事?」
翔太は驚いたようなよく分からない顔をして私を見た。私は普段から悩みや自分に関することはあまり言わないからだろう。よく分からないでいる翔太に酒を飲みながら軽く話した。
「もしかしたら上手くいかないかもしれないなって思って」
「なんか深いな。まぁ由季はいつも何だかんだ酒入らない限りしっかりしてるし大丈夫じゃないの?」
「そーだよ!平気平気!それよりこないだ葵ちゃんあの有名なファッションショーに出てたんだね!テレビで見たよ」
賛同してきたレイラは興奮気味に目を輝かせていた。この二人は私をよく分かっているからそう言われて安心する。まぁやらないよりはましだし、なるようになるだろう。だけどレイラの発言には少しドキッとした。
「あ、それ俺も見た!めっちゃ綺麗だったな。さすが葵ちゃん」
「だよねだよね!葵ちゃん本当凄いよね!ビシッと決まっててかっこよかった」
私の悩みの元の話になるとは、何だか落ち着かないけどひとまず話は合わせる。
「だねぇ。あんなの出ちゃうなんて葵は凄いよ」
「あれって人気じゃないと出れないしあんな規模のファッションショーって中々ないからな」
「もう自慢だよね!ここまで来ると!秘密にはしてるけどね!」
改めてあのファッションショーの凄さを再確認したところで私はレイラに然り気無く促してみようと思った。葵を外の世界に連れ出すには良い関係の人物だ。
「あ、そういえば葵が暇な時にできる趣味とかを増やしたいみたいでさ、レイラ何かあったら紹介してあげてよ。私じゃあんまり分かんないから」
私の発言にレイラはすぐに乗ってきた。
「え、そうなの!オッケー!最近何でも挑戦してるから何か必ずハマるの紹介できると思う!」
「うん、よろしくね。葵はあんまりアクティブな方じゃないから連れ出してあげて」
「任せろ任せろ!楽しみー!」
にこにこ笑うレイラ。この様子ならたぶん色々紹介するし連れ出そうともするだろうから何か良い刺激になるだろう。葵も興味を持つかもしれない。
「葵ちゃんってあんな綺麗で可愛いのに暇な時あるのか……ていうか、普段何してんだろう…」
翔太は率直な疑問を漏らしたんだろうがそこにレイラはすかさず食いついた。
「そんなのさー決まってんじゃん!良い年した若い女の子だよ?やることは一つだよ!」
「はぁ?若い女の子なのは分かるけど…」
「翔太は全然分かってないなぁ」
にやにやするレイラに私は不安になったから先に手を打った。ここでまた弄られたらたまったもんじゃない。
「レイラ、いい加減にしてよ」
「えー良いじゃん由季!このこの!!」
私を指でツンツンしてくるレイラ。勘弁しろ。翔太にまでばれたらめんどくさいこと極まりない。
「どういうことだよ」
分かっていない翔太に私は適当に言った。
「めんどくさいこと言い出すからさ」
「そりゃいつもだろ」
「何それ!私のどこがめんどくさいの?」
少し怒ったように言うレイラに話がどうにか流れそうでホッとした私はとりあえず話を切り替えた。
「もうそんなの気にしなくても良いでしょ。それより翔太だよ、よっちゃんとどうなったの?」
翔太とこの話をするのは以前付き合って祝福した以来だ。私も少し気になっていたしどうなったのか想像がつかない。
「あ!私もそれ気になる!どうなったの?!」
レイラもすぐに便乗してきた。レイラはあの場にいなかったけど知らないなんてことはないだろう。翔太は笑いながら答えた。
「普通に上手くいってる。てか、よっちゃん優しいしまめだしビックリした」
「そうなの?透を執拗に追いかけ回してとにかくしつこくしてた印象しかないわ…」
よっちゃんはかなり前からずっと透を追い回していた。しかもそれは本当にしつこくて端から見ていて引く程だったので問題がなさそうなのが意外だ。
「それが、まじでやさ男!とにかく優しい。家は高級マンションだし車はベンツで迎えに来てくれるし、ブランド物を買い与えてくれるし、俺本当に玉の輿を実感する」
「へぇー!やっぱよっちゃん医者なだけあるね!幸せになりやがって!でも、よっちゃんって酔ってない時はどうなの?」
レイラの質問は私も気になる所だった。私達は大体酔っぱらっていることが多いからシラフでいることは少ない。だからよっちゃんを含む大体の人の私生活はよく分からないのだ。
「めっちゃ普通。常識人。普通なことしか言わないしよくゴルフ行ってるよ。俺も最近一緒に行くけどあれって難しいのな」
「へぇー。透をしつこくしつこく口説いて潰れてたのに……よっちゃんにそんな一面があるとは意外だね」
感慨深く何度か頷いた。酒が入らなければ普通なのは分かるけどあのよっちゃんがね。まぁでも上手くいっているようで何よりだ。レイラも頷きながら言った。
「確かに!よっちゃんお経みたいな超長ったらしい口説き文句言ってたのにね。あれ正直引いてたよね皆。お坊さんの方が向いてると思ってたけど、翔太大事にしてあげなね?」
「あれは本当に酷かったよな。でも、あんな頭の痛くなるようなこと言わないし俺の方が大事にされてるよ」
「何それ乙女か。まー、でも上手くいってて良かったね。私なんか元彼のせいで恋愛する気にすらならないよ」
レイラは羨ましそうに言うとグラスのお酒を飲んだ。レイラはレイラで彼氏とかいなくてもいつも充実してるけどあの元彼の影響はまだまだあるみたいだ。
「そういえばさ、葵ちゃんこないだ来た時に久々に見たけどまた仕事忙しいの?」
翔太は思い出したように言った。また戻ってしまった。狙った訳じゃないと思うがレイラが何も言わないことを願いながら答える。
「この前は映画の撮影があったから本当に忙しそうだったけど、今はまぁまぁなんじゃないかな?でも葵はいつも忙しそうだからね」
少しグラスの酒を飲むとレイラは駄々をこねるように言ってきた。
「こないだ葵ちゃん来たの?私も会いたかった!ていうか葵ちゃんと全然会えてないしまた皆で何かしたいー!」
「それも良いな。何かのイベントでパーティーみたいなのやっても楽しそうじゃね?」
翔太はそれに頷いた。確かにそれはありだ。葵を外に出す良い機会だし、私もそれには賛同する。
「良いねそれ。葵のこと誘ってみるよ。今の時期だと……ハロウィンとか?店でイベントやるの?」
「ああ、ちょっとしたことはやるかも?ハロウィン前後の金土とかになると思うけどピアノ演奏が派手になって内装変わったり?オーナーが言ってたけど本当かはまだ分からない…」
翔太は首を傾げながら答えた。それなら店は混むかもしれないけど知り合いが多く来そうだからさらに良いと思った。
「良いじゃん良いじゃん翔太!由季、葵ちゃんは一滴も飲めないの?」
レイラは嬉しそうに会話に入ってきた。葵を潰したいのかよく分からないけど私は一応警告するように言った。
「飲めない訳じゃないけど本当に弱いからほとんど飲まないよ?すぐ顔赤くなっちゃうから」
「そうなの?葵ちゃんって本当に可愛いね。分かった!じゃあ弱くても飲めるやつにしよう!」
「うん、だからあんまり飲ませないでよ?グラス一杯で顔赤くして酔っちゃうから」
分かってなさそうなレイラに苦笑いしながらもう一度言ったけど笑うだけだ。本当に分かってるのだろうか…。レイラはたまに話を聞いていないから不安だ。
「オッケーオッケー!それより仮装もありだよね!うちの店でもやるから私なんかやろーかなぁ。由季もやろーよ!」
「えぇ?私は勘弁してよ。私がやったところで誰も喜ばないし目に毒だよ」
もうそんなこと学生の時に楽しんだし今はやる気もない。レイラは仕事柄するだろうけど私はパスの意思表示をした。
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