上 下
62 / 426

62 ヒロキ:テツとの遭遇まで24時間前・・・英雄ってこういう気分だろうな・・

しおりを挟む







「・・チッ・・で?」

「はい、実は支部長にお貸ししている負債の全部・・

お返しいただこうかと思って参りました」

支部長はヒロキが何を言ってるのかわからなかった。

「・・はぁ?何言うてんのや?」

そう言ってムクッと起き上がってみると、拳銃を自分に向けて立っているヒロキがいた。



「・・・お前・・こんなことしてタダで済むと・・・」

パン!

パン、パン!

支部長と女が撃たれた。

「・・だから、こうやって、返済してもらったんですよ・・経験値としてね」

ヒロキはゆっくりと頭を下げた。



「経験値を獲得しました」



天の声が聞こえた。



女と支部長は消えた。



入り口のドアが勢いよく開かれる。



「支部長!失礼します!」

「「「大丈夫でっかぁ!!!!」」」



怒声とともに、男どもがなだれ込んできた。

それぞれに銃やナイフを持っていた。



ヒロキは迷わず移動して、次々に男どもを片づけて行った。



相手にならなかった。



ヒロキの移動速度は目視できるものではない。

止まるときに一瞬、その姿が見えたかと思うとフッと消える。

その繰り返しで、バタバタと人が倒れていく。

廊下にいたであろう8人がほんの一瞬と呼べる時間で倒れた。



ガードマン達の銃声もいくらか響いたが、当たるはずもない。

ヒロキのナイフと銃で蹂躙されていく。



奥から兵隊が次々と現れてきた。

だが、どこに敵がいるのかわからない。

見えない。

キョロキョロしているうちに音もなく横の仲間が倒れていく。

何が起こっているのか理解できない。





ヒロキが門をくぐってから15分ほど経過した頃だろうか・・・

静かになった。

家の入口からヒロキが出てきた。

そのまま門へ向かって歩き、軽く飛び越えた。

門を背中に遠ざかって行く。

・・・・

・・



門の前にはパトカーが集まってきていた。

1台のパトカーから警官が降りてきて、インターホンを押す。

応答がない。

もう一度インターホンを押して一方的にしゃべってみる。



「失礼します!

こちらで銃声がしたとかで、通報があったもんですから・・・」

・・・・・

・・・

・・



ヒロキはユウジのいるであろう、ファミレスに向かった。

ユウジは中で休憩していた。



ユウジは少し、いや、かなりおびえていた。

まさか、ヒロキが猫だけではなく、警察官も殺害してしまうとは・・・

・・・それで拳銃を持ってどこへ行ったのだろう。

どこかで試し撃ちでもしてるのだろうか?

そんなことを考えながら、ソフトドリンクをおかわりに行った。

オレンジ炭酸を入れて席に戻ってくると、ヒロキが入ってくるのが見えた。



いらっしゃいませ~。

店員の声がする。



ヒロキは、ゆっくりとした足取りでユウジの席のところに座った。。



午前5時前頃だろう。

ユウジはオレンジ炭酸を一口飲むと、ヒロキがどこに行っていたのか聞いてみた。

「ヒロキはん、どこ行ってはったんすか?」

ヒロキはニヤッとして、

「あぁ、連合支部に行ってきたよ。

もう、これからは無理な仕事はないだろう」



そういうと、店員にフレンチトーストを注文していた。

ユウジは、連合支部に行って無茶なことをしただろうとは思ったが、まさか全滅させているとは思っていなかった。

「・・・ほんまでっか?連合支部から許可が下りたんすか?」

「・・・いや、奴ら・・全滅したんだ」



ユウジは動けなくなった。

今、なんて言ったんだ?

全滅・・どういうことだ?

「・・ヒロキはん・・・全滅って・・・なんでっか?」

「・・・言葉通りだよ。

この世界のどこにも、奴らはいない・・・しかも支部にいた全員だ・・」

ヒロキは、こみ上げてくる喜びが我慢できそうになかった。



「クックックック・・・ユウジ・・

死体が残らないんだぞ・・

それに、俺はいいことをしたんだ。

世の中のクズどもを掃除したんだからな・・」

ヒロキは満足そうだった。



・・英雄って、こういう気分なんだろうな・・

そう思った。





しおりを挟む

処理中です...