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364 武装ロイドから人が降りてきている

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<アニムside>



王宮では、アニム王以下重鎮たちが勢ぞろいしていた。

ルナが大広間に入って来る。

人が左右に分かれて道ができた。

まるでモーゼの海割りのようだ。

ルナはその中をゆっくりと歩いてアニム王に近づいていく。

大広間で誰も声を出すものはいない。

静まり返った空間に、アニム王が声を出す。

「ルナ、ご苦労だったね。 ありがとう」

そういいながら、席を立ちルナを迎えた。

「フッ、気にするな。 それよりも、スイーツが食べたいのぉ」

「用意してありますよ。 スーパーエイトのスイーツで良かったのですね?」

アニム王が微笑みながら言う。

「アニムよ、わかっておるではないか」

ルナがうなずく。

二人で奥の部屋へと移動していった。



アニム王にはよくわかっていた。 次元の違う力を見せつけられる人々の反応。

アンタッチャブルな存在。 

人々はルナという存在を認められるだろうか。 無理だろう。

常に付きまとう恐怖。

そういった存在との共生。 

普通ならできるはずがない。



ルナは慣れていた。

ただ、慣れているとはいえ気持ちの良いものではない。

信頼や理解を得ようとか、裏切られるとかの次元ではない。

人間という脆弱な存在。 仕方がない、そういうものだろう。

力あるものにおびえる。 そして、その怯えの影は消えることはない。

生物としては自然か・・。

だが、それらを享受して近くにいるものもいる。

アニムなどは誰とでも対等を貫く。

人間では、最近出会った地球人のテツ。 興味深い。

ルナはアニム王と歩きながらフトそんなことを思っていた。



大広間にはまるで誰もいないような感じだ。

アニム王とルナが奥の部屋へ移動すると、皆そのまま顔を見合わせてそれぞれの持ち場へと静かに散って行った。





帝都ギルドでも、みんながモニターを見つめている。

誰とはなしに言葉が飛ぶ。

「・・あ、あれがヴァンパイアの力なのか・・」

それが通常に戻る始まりの言葉だった。

「ありえねぇな・・」

「俺、この街に住んでいて良かったよ」

「敵にならなくて良かった・・・」

「次元が違う・・」

・・・・

・・・

しばらくして、通常のギルドに戻っていた。



後日、『シンギュラリティ・ポイント・ルナ』と呼ばれるようになった出来事。

地球の旧世界システムの落日。 新しい世界システムの始まり。





「ところでルナ、生き残りはいないのですか?」

アニム王が微笑みながら問う。

「・・・・」

ルナは食べていた動作がピタッと止まり、アニム王の方を向く。

「・・・アニム、すまない」

そういうと、またスイーツを食べていた。



◇◇

<北米エリア:アニムside>



レアたちが向かった北米。

今まさに戦闘が始まろうとしていた。

レアが北米のギルドから外に出てみると、地上には武装ロイドが展開していた。

かなりの数だ。

その奥には戦艦や空母、上空には戦闘機や戦闘ヘリ、地球の現代兵器に魔核を利用し性能を向上させた代物。

ただ、レアたちは単にレベルに属した魔物の存在としてしか捉えていなかった。

レアがつぶやく。

「フローラ、確かトリノ殿が捕らえられていたはずですが、見当たりませんね」

フローラがすぐに答える。

「はい。 ギルド内の人の避難は完了しておりますし、おそらく敵の旗艦にでも連れ去られているものかと思われます」

「そうですわね。 仕方ありませんね。 一度にまとめて戦うわけにはいかなくなりましたわね」

レアは少し面倒そうな感じで言う。

フローラ以下、レアのロイヤルガードたちはうなずきながら微笑んでいた。



そんな中、武装ロイドの1体がこちらにゆっくりと近づいて来る。

どうやら戦闘する感じではないようだ。

レアたちの前面50メートルくらいのところで停止すると、武装ロイドから一人の女の人が降りて来た。

そのまま歩いてレアたちの方へ向かってくる。

セーラだった。

レアの前まで来ると、

「レア様、お久しぶりです」

そういって敬礼をする。

「これはセーラさんではありませんか。 ごきげんよう」

レアも挨拶を返す。



「レア様、こんな形で再会となり、何とも言葉が見つかりません・・・一言お伝えしたくて私はここにいます」

セーラがそういうとレアたち黙って聞いている。

「レア様、私も上司たちに何度も具申したのですが、この結果です。 もし、許されるならレア様、このまま引き下がってもらえませんでしょうか?」

レアは変なことを言うと思った。



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