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396 予定通りに

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<邪神教団本部>



「皆さん、ご苦労様でした。 邪神王の復活は間もなくです。 ただ、復活する場所が少々やっかいなのです」

そこまで言って、その中の一人ウルダを倒したアサシンの方を向く。

「あなたに最後の任務を与えます。 完成型の武装ロイドが用意してあります。 横の部屋の連中と他の街の連中も媒介にするとよいでしょう。 武装ロイドに与えなさい。 そしてアサシン、あなたにしかできないのです」

モレクはそう言うと、アサシンの目線まで下りてゆき両手でアサシンの手を取った。



アサシンは驚きつつも狂喜した。 今死んでもいい。

これほどの幸福はない。 

最高だ! 

涙が自然と溢れでていた。

「・・げ、猊下・・」

アサシンは感動のあまり言葉に詰まっている。

モレクはうなずきつつ、アサシンを軽く抱擁する。

アサシンは生涯で最高の瞬間を味わっていただろう。



「お行きなさい。 そして、邪神王の復活をお助けするのです」

モレクの言葉にアサシンは震えながら立ち、武装ロイドのある場所へと移動する。

残ったアサシンたちにもモレクは丁寧に手を取り、労っていた。

どのアサシンも例外なく涙を流していた。



アサシンたちは思う。 我々、私たち、今日この日ほど感動したことはない。

この宗主様のためにこそ我らの命が使われるのだ。

あぁ、宗主様。

アサシンたちの目が陶酔とうすいしていた。

そして、モレクは言う。

「あなたたちにも、武装ロイドを用意してあります。 先に出発した彼はアニム王国帝都を担当してもらいます。 あなた方は、この地域をそれぞれ担当してください」

そう言って、この星のマップを表示し、北米にある魔族国や精霊族周辺。 後は力をつけていそうな小さな街方面を表示させていた。

ただ、完成型の武装ロイドは1体だけだった。

他の武装ロイドは完成型ではない。 だが、それでも連合国が使用していたものよりは、遥かに能力が上回る。

アサシンたちに挨拶を済ませると、モレクはゆっくりと背筋を伸ばし建物の外へ出る。

そのままギルドのあった方へ向かって行く。



ギルドには移動用の飛行船が何隻かあった。

その飛行船を利用して移動しようと考えていた。

モレクに付き添う従者に声をかける。

「家畜たちを飛行船に乗せて待機していてください」

従者たちは無言でうなずくと散って行った。

3つの街の残った住人すべてを飛行船に乗せる。

自分の意思のあるものはいない。

皆、うつろな表情で飛行船に収容されていた。

運ばれる人数は10万人ほどだろうか。

飛行船6隻と、連合国の残りの空母と戦艦群で運ぶ予定だ。







停泊中の飛行船の中。

飛行船には隷属の首輪をつけられたフレイアが乗せられていた。

両手、両足、そして首、すべてに隷属の首輪がつけられている。

フレイアはすべての能力が封じられている状態だ。



柔らかいベッドの上で寝かされているが、常に身体にしんどさが付きまとう。

「こんなものを付けられて・・何もできないわ」

フレイアはそうつぶやきながら、動けない自分を呪っていた。

「私って、こんなにもひ弱だったなんて・・」

そう思いつつ、自嘲する。

「あぁ、テツ・・」

そう思っていると、一人の男が近づいて来る。

フレイアの近くまで来ると、にっこりとして言う。

「これはこれは、お目覚めですかな、ハイエルフ殿」

フレイアは無言でモレクの顔を見つめる。



「申し訳ありませんねぇ、しかし、後少しの辛抱です。 あなたは大事な依り代なのですから」

モレクは続ける。

「ハイエルフ殿はご気分がすぐれませんかな? ですがアニム王国帝都方面に向けて今から出発しますから、一応仮の帰還となりますな」

モレクのその言葉を聞き、フレイアが口を開く。

「帝都に?」

「おやおや、言葉を聞かせてくれるのですね」

モレクは微笑む。

「まぁ、それほど長い時間ではありませんが、ご一緒するわけですから、よろしくお願いしますよ」

モレクをジッと見ながらフレイアが聞く。

・・・・・

・・・

「・・あなた、いったい何者なの?」



「フフフ・・フハハハハハ! これは面白いことを聞きますね。 教団の宗主と呼ばれていますよ」

モレクは答える。

フレイアの監禁されている部屋は、完全防音になっている。

「・・嘘よ。 あなたには生気が感じられない・・どういうこと?」

フレイアのその言葉に少し興味を持ったのか、モレクの顔が変わった。

「・・そうですね、時間もありますし、少しお話でもしますか」

モレクがそう言うと、飛行船が静かに浮かび上がり帝都方面に向かって速度を速めて行った。



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