ReFuse〜死に損ないの魔女は理不尽を許さない〜

矢凪來果

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旅立ち

行き当たりばったり

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『暗い お腹がすいた…』

 そんな声が聞こえたあと、目に光が差し込んで、シンは目を覚ました。
「んん…あれ、どれ位寝てたんだろう?」
 知らない間にサラを枕にして寝てしまっていたようだ。太陽はちょうど山から顔を出したところだが、既に空はずいぶん明るい青色になっていた。目をこすりながらボーっとしているシンに、サンがおはようと声をかけた。
「おはようって言っても、今は昼の少し前かな。東の山が結構高いから日の出が遅いみたいね」
「そっか…昨日も昼まで少し暗かったもんね」
 
 火種が燻っているだけの焚き火のそばで、セルは何かを書いていた。
「何書いてるの?」
「みずうみだよ」
 耳の大きさが左右で違うネコの頭みたいな絵は、二つの山と湖の断面図だそうだ。ネコの額の部分に半円の大きな凹みを付け足す。
「あの草、前に本で見たことあったんだけど、本当はみずうみじゃなくて、りくに生える花なんだ。」
 あの草だろうか、凹みの真ん中に一本の棒を付け加える。

「昨日、みずうみをみてた時は聞こえなかったけど、あの草の近くでね、光が消えて、水がおちてくる時に、悲しい声が聞こえたんだ。だから、多分そうだと思う。」
「あれ、やっぱり聞こえてたんだ」
 シンも「苦しい 暗い」という声を聞いた気がしていた。
 だったら、太陽の光がきっかけなのか…でも、昨日から、天気は晴れで太陽もずっと出ていたが、夕方以外は湖は浮いていない…どうして?
「なんであの時間だけなんだろう」
 シンが首を傾げると、レナードが応えた。
「じゃあ、あの花のとこにいくか」
 いつの間にか起きていたレナードが、セルの絵を覗き込んでいた。
「ここで難しいこと考えるより、せっかくジェマがいてるんだ。行って考えた方が早くない?」
「ジェマみんなにくうきあげるよ」
 ジェマがはい!と元気に手を挙げた。
 昨日死にかけたとは思えない、気軽なレナードとジェマの様子に、サラを入れた他の三人は噴き出してしまった。
「確かに、行き当たりばったりもありかもね」
「ジェマは頼もしいことこの上ないな。」

 その後、昨日と同じように、一行はサラに乗って湖の真ん中にたどり着いた。
「ジェマ、どうすればいい」
「足からじゃぽんってはいってー」
  ジェマの言葉にサラはゆっくりと高度を落とし、足を湖面につけた。
 少しおっかなびっくりしているサラに、ジェマはだいじょーぶ!早くはいって!とせかしていた。

 サラの足が入り始めると、ジェマは少しぎゅっと目をつぶる。すると、サラの足には、小さな気泡がたくさんできてきた。
 気泡同士はくっつき、すぐに大きくなって湖に入るサラを包み込み、やがて湖面のすぐ下で大きな空気の塊になった。
「なんか…すごい。」
「この中に入ればいいのか」
「はやくー!」と言うが早いかジェマはサラの背中から空気の塊を目掛けて、とびこんだ。

「ちょっとジェマ!」
 慌てて、シンもジェマを追いかけて飛び込む。どぷんと、水の中に飛び込む音としては、少し鈍い音がした。大きなゼリーか何かに入るような不思議な感触のあと、目を開けると昨日と同じように、シャボンのような大きな泡玉の中に閉じ込められていた。

 ぐにぐにする足元はなかなか安定せず、シンや後から入ったレナードたちは、尻餅をついたまま座り込んでいたが、ジェマは普通に立ったり水の中で泳ぐように浮いたり、自由にしていた。
 ちなみに、サラは気泡に入るなり小さくなり、シンの肩に乗ってソワソワと尻尾を揺らしている。

「改めてみるとすっげぇな」
「昨日空中に浮いていた魚もこんな気持ちだったのかな」
 感心するレナードに同意しつつ、シンは昨日の異様な光景を思い出しながら想像してみた。

「キラキラしてる」セルが湖面を見上げて呟いた。
 湖面からほど近い、一行のいる場所は、ほぼ真上にある太陽の光を受けてキラキラと輝いていた。

 ただ反対に、湖の真ん中は、深く、底は見えなかった。

「…よし、行くか。」
 みんなでごくりと唾を飲み込む。ジェマ以外。
「したいくよー!」

「うちの特攻隊長つええな」
「レナードもビビってるもんね」
「うるせえよサン!」
 少しずつ、上から差す光が少なくなり、あたりは暗くなっていったが、レナードとサンの口喧嘩のおかげで、緊張感は少しだけ和らいだ。
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