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第1章
1話 僕たち
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「旧人類が滅びた1000年前、人工生命体アルマは我々の祖先に宣戦布告した。アルマは「イシュ」と呼ばれる殲滅用アンドロイドを創りこの星の至る所に解き放って暴逆の限りを尽くしているのは皆が知っている通りだ」
軍服に身を包む屈強な青年が10代半ばの学生たちに略奪戦争を説いている。
「我々と瓜二つの風貌をしたイシュは躊躇なく新人類を駆逐した。しかし、我々の祖先であるルミネールの民は勇敢にも立ち上がり、アルマの暴走を止めるべくイシュの軍団と戦闘を始めたのだ」
広々とした教室には静寂と交互に大きな声が響き渡る。
「――旧人類を守るアルマと、我々ルミネールとの戦争は1000年ものあいだ繰り広げられており、略奪戦争と呼ばれている」
一通り説明を終えた教官であろう青年は教室の奥に目を向けた。
「明日から後方にて実践演習を開始する。皆イシュについて特徴は把握しているか。シエロ答えてみろ」
後列に座る黒髪の少年が立ち上がり答える。
「イシュとは人工生命体アルマが産み出す戦闘用アンドロイドの総称です。特徴は全ての機体が20代前半の男を模しており左目の下に黒い点の模様があります。また、周りの風景に同化するマントを着ているため森などに潜伏して待ち伏せている事が多いです」
軍服の青年は軽く頷くとまた威勢の良い声で話し始める。
「先程シエロが述べたようにイシュは我々に擬態した殺人兵器である。肉弾戦はもちろん射撃など様々な攻撃方法を行うため、必ず超能力による防御を展開した上で距離をとって攻撃する事。わかったか」
少しのずれもない返事が教室中に響いたと同時に授業の終わりを告げる鐘が鳴った。
「それでは本日の講義は終わりにする。明日は後方での実践演習となるので確実準備しておく様に」
皆その場に直立し軍服の青年が退出すると、教室は賑やかさを取り戻したかの様に学生たちが友人たちと話し出す。
「流石シエロだな。イシュなんて絵でしか見たことないからさっぱりだよ」
「昔父さんにつれられて後方支援の本部に連れて行ってもらった事があるんだ。それより、君は卒業したら最前線の部隊に配属されるからわからないのは不味いんじゃないか、リン」
リンはニッと笑いながらシエルの肩に手を回す。
「俺は超脳筋の攻撃形だし、とりあえず味方が攻撃しているやつを攻撃しておけば問題ないだろ?」
「それじゃ味方が攻撃してない敵はどう見分けるんだよ」
二人はお互いに顔を見合い笑い合う。
しばらくリンと談笑していると教室の角から挑発的な声がシロエに投げかけられた。
「黒髪はいいよな。イシュに見つかったて仲間だと思われて見逃してもらえるんだろ?」
高身長で赤い髪が特徴的な男がシエロを馬鹿にしたのを見て隣の男が静止する。
「やめないかトール」トールは静寂を振り払い続けて捲し立てる。
「前線に出ないと拝めないイシュにも詳しいし、アルマの回者なんじゃないのか?」
「やめろって言ってるだろ」
「でもよ、ユイト。こいつはー」
トールの話を遮るようにユイトが続けて話した。
「髪の色がイシュに似ているからって何だっていうんだ。シエロが好きで黒髪を選んだんじゃないだろ。それにシエロの一族はこの1000年、諜報員として国に貢献してきた。少なくともアルマの特になるようなことはしていないはずだろ。」
トールは一瞬苛立った様子をみせたが、ユイトの話があまりにも正論だったので反論できず、ふてくされたように教室を出て行ってしまった。
「すまないね、シロエ。トールは明日の実践演習を前に昂っているんだ。」
「気にしてないよ。黒髪は事実だしね。」
シロエは手慣れたようにそういうと立ち上がりリンの襟を掴み教室を後にした。
この時代において黒髪は禁忌の色とされる。散々同胞を葬ってきたイシュの黒髪は、何故かルミネール中をくまなく探してもシロエの一族以外存在していない。
諜報を担う一族として活躍していなければとっくの昔にアルマの手先として国を追放されているだろう。それほどまでにルミエール人にとって黒髪は不吉なものだった。
「それにしてもリン。僕がトールから言われている時に威勢よくにらんでいるのなら、少しは援護してくれよ。」
シロエが隣を歩くリンに笑いかけた。
「あいつの能力は俺の完全上位互換だから無理なの。だからトールの後ろからとっておきの睨みを効かせてただろ?」
リンがキメ顔を作って言うと、二人はまた顔を見合わせて笑った。
「完全上位互換って言っても、全く同じ能力って訳ではないでしょう?」
「それはそうなんだけど、トールの奴は念動が強すぎて俺の念動が通じないしね。それに強い念動だけで創造みたいなことをするから苦手なんだよ。あの摩擦で火を出しちゃうやつ。」
「そっか。リンは火が苦手だったね。」
超能力は3つの種類に分けられている。念動、創造、干渉である。最も基本となる超能力で思念によって物を動かすことのできる念動は、収集が深いほど念動の強度が増し、感情が揺れるほどエネルギーを発散させる力が強まると言われている。
「あれから5年経つのにな。」
リンは比較的強い念動を持っている。人は軽々持ち上げるし、大抵のルミネール人が使う念動も抑え込むことができるだろう。
しかし、最も特徴的なのは彼の持つ創造の力である。彼は創造で火を作ることが得意だった。
赤く燃え上がる大きな炎を上手にコントロールし、よくシエロに花火などを見せてくれた。
そんなある日、いつもの様にリンが花火を作ってシロエと遊んでいた時に、近くにあった火薬に花火が引火してしまい、コントロールできないほどの大きな炎となってシロエを襲ってしまったのだ。
幸い火傷は残っていないが、それ以来リンは火を見ると、また暴走させてしまうのではないかと体が硬直してしまうトラウマを抱えていた。
「またみたいな、リンの花火。」
そういう意地悪言うなよとリンは笑い、指をパチンとならし、人差し指と親指の間から雷の花を作り出す。
「流石リンだね。雷も水も風も創造できる人はなかなかいないよ」
あんまり褒めるなよと俯き照れながらリンは手を上げ、分かれ道をシロエと違う方向に歩いて行った。
「また明日!寝坊するなよ!」
寂しそうに手を振るリンの背中に大声で投げかけるとシロエも一人帰り道を歩いた。
軍服に身を包む屈強な青年が10代半ばの学生たちに略奪戦争を説いている。
「我々と瓜二つの風貌をしたイシュは躊躇なく新人類を駆逐した。しかし、我々の祖先であるルミネールの民は勇敢にも立ち上がり、アルマの暴走を止めるべくイシュの軍団と戦闘を始めたのだ」
広々とした教室には静寂と交互に大きな声が響き渡る。
「――旧人類を守るアルマと、我々ルミネールとの戦争は1000年ものあいだ繰り広げられており、略奪戦争と呼ばれている」
一通り説明を終えた教官であろう青年は教室の奥に目を向けた。
「明日から後方にて実践演習を開始する。皆イシュについて特徴は把握しているか。シエロ答えてみろ」
後列に座る黒髪の少年が立ち上がり答える。
「イシュとは人工生命体アルマが産み出す戦闘用アンドロイドの総称です。特徴は全ての機体が20代前半の男を模しており左目の下に黒い点の模様があります。また、周りの風景に同化するマントを着ているため森などに潜伏して待ち伏せている事が多いです」
軍服の青年は軽く頷くとまた威勢の良い声で話し始める。
「先程シエロが述べたようにイシュは我々に擬態した殺人兵器である。肉弾戦はもちろん射撃など様々な攻撃方法を行うため、必ず超能力による防御を展開した上で距離をとって攻撃する事。わかったか」
少しのずれもない返事が教室中に響いたと同時に授業の終わりを告げる鐘が鳴った。
「それでは本日の講義は終わりにする。明日は後方での実践演習となるので確実準備しておく様に」
皆その場に直立し軍服の青年が退出すると、教室は賑やかさを取り戻したかの様に学生たちが友人たちと話し出す。
「流石シエロだな。イシュなんて絵でしか見たことないからさっぱりだよ」
「昔父さんにつれられて後方支援の本部に連れて行ってもらった事があるんだ。それより、君は卒業したら最前線の部隊に配属されるからわからないのは不味いんじゃないか、リン」
リンはニッと笑いながらシエルの肩に手を回す。
「俺は超脳筋の攻撃形だし、とりあえず味方が攻撃しているやつを攻撃しておけば問題ないだろ?」
「それじゃ味方が攻撃してない敵はどう見分けるんだよ」
二人はお互いに顔を見合い笑い合う。
しばらくリンと談笑していると教室の角から挑発的な声がシロエに投げかけられた。
「黒髪はいいよな。イシュに見つかったて仲間だと思われて見逃してもらえるんだろ?」
高身長で赤い髪が特徴的な男がシエロを馬鹿にしたのを見て隣の男が静止する。
「やめないかトール」トールは静寂を振り払い続けて捲し立てる。
「前線に出ないと拝めないイシュにも詳しいし、アルマの回者なんじゃないのか?」
「やめろって言ってるだろ」
「でもよ、ユイト。こいつはー」
トールの話を遮るようにユイトが続けて話した。
「髪の色がイシュに似ているからって何だっていうんだ。シエロが好きで黒髪を選んだんじゃないだろ。それにシエロの一族はこの1000年、諜報員として国に貢献してきた。少なくともアルマの特になるようなことはしていないはずだろ。」
トールは一瞬苛立った様子をみせたが、ユイトの話があまりにも正論だったので反論できず、ふてくされたように教室を出て行ってしまった。
「すまないね、シロエ。トールは明日の実践演習を前に昂っているんだ。」
「気にしてないよ。黒髪は事実だしね。」
シロエは手慣れたようにそういうと立ち上がりリンの襟を掴み教室を後にした。
この時代において黒髪は禁忌の色とされる。散々同胞を葬ってきたイシュの黒髪は、何故かルミネール中をくまなく探してもシロエの一族以外存在していない。
諜報を担う一族として活躍していなければとっくの昔にアルマの手先として国を追放されているだろう。それほどまでにルミエール人にとって黒髪は不吉なものだった。
「それにしてもリン。僕がトールから言われている時に威勢よくにらんでいるのなら、少しは援護してくれよ。」
シロエが隣を歩くリンに笑いかけた。
「あいつの能力は俺の完全上位互換だから無理なの。だからトールの後ろからとっておきの睨みを効かせてただろ?」
リンがキメ顔を作って言うと、二人はまた顔を見合わせて笑った。
「完全上位互換って言っても、全く同じ能力って訳ではないでしょう?」
「それはそうなんだけど、トールの奴は念動が強すぎて俺の念動が通じないしね。それに強い念動だけで創造みたいなことをするから苦手なんだよ。あの摩擦で火を出しちゃうやつ。」
「そっか。リンは火が苦手だったね。」
超能力は3つの種類に分けられている。念動、創造、干渉である。最も基本となる超能力で思念によって物を動かすことのできる念動は、収集が深いほど念動の強度が増し、感情が揺れるほどエネルギーを発散させる力が強まると言われている。
「あれから5年経つのにな。」
リンは比較的強い念動を持っている。人は軽々持ち上げるし、大抵のルミネール人が使う念動も抑え込むことができるだろう。
しかし、最も特徴的なのは彼の持つ創造の力である。彼は創造で火を作ることが得意だった。
赤く燃え上がる大きな炎を上手にコントロールし、よくシエロに花火などを見せてくれた。
そんなある日、いつもの様にリンが花火を作ってシロエと遊んでいた時に、近くにあった火薬に花火が引火してしまい、コントロールできないほどの大きな炎となってシロエを襲ってしまったのだ。
幸い火傷は残っていないが、それ以来リンは火を見ると、また暴走させてしまうのではないかと体が硬直してしまうトラウマを抱えていた。
「またみたいな、リンの花火。」
そういう意地悪言うなよとリンは笑い、指をパチンとならし、人差し指と親指の間から雷の花を作り出す。
「流石リンだね。雷も水も風も創造できる人はなかなかいないよ」
あんまり褒めるなよと俯き照れながらリンは手を上げ、分かれ道をシロエと違う方向に歩いて行った。
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