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第1章
4話 エリート
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学校には戦闘に参加しない一般生徒が通う第一校舎と後方支援を含む戦闘員候補が通う第二校舎から出来ている。
第一校舎は石の外壁で作られていて、お城のような構造になっている。
一方、第二校舎では戦闘に特化した超能力の実践や、イシュの研究などを行うため、特殊な物質で部屋の壁をコーティングしているらしい。
一見するど第一校舎とさほど変わらない風貌をしているが、中に入ると鈍く光る銀色の壁に囲まれた空間が広がる。
第二校舎の裏手にある森には戦闘訓練を行う広い演習場があり、シロエの自宅からは正門から入ると遠回りになってしまうのだが、訓練場を通って裏門から入ると10分ほど移動が短縮できるので、人目を忍んでよく裏門を使っていた。
シロエが演習場の差し掛かると、激しい物音が聞こえる。何かがぶつかる衝撃音だ。
木の間から演習場をそっと覗いてみると、ユイトが念動で巨大な岩を持ち上げていた。
ユイトは片手を伸ばしその岩を安定させると、もう一方の手を上に上げて、空中に風の球体を作り出した。
ユイトは額に汗をため、険しい表情をしている。
そして勢いよく手を振りかぶり風の球体を岩に向かって放射した。
球体は周囲の空気を裂きながら猛烈なスピードで岩にぶつかると、岩は粉々に砕けてしまった。
ユイトは力を使い果たしたのか、その場に膝をつき荒く呼吸をする。
ユイトが倒れるのをみたシロエは急いで駆け寄ってユイトの肩を抱いた。
ユイトは驚いた表情を一瞬見せたように見えたが、すぐに疲労でぎこちなくなった笑顔をシロエに向けた。
「恥ずかしいところを見られちゃったね」
そう言うとシロエの手を優しく払い、地面に座り込む。
「あれだけの念動だけでも凄いのに、同時に創造と干渉を使って衝撃波を作るなんて凄いよ!」
干渉とは念動と創造とならぶ超能力の一瞬で、物を動かす念動や物や事象を作り出す想像とは異なり、自然界のエネルギーに干渉して形状や性質をコントロールする最も難しい能力だ。
「僕なんてまだまだなんだ。もっと力をつけないと」
「ユイトは本当にすごいな」
「そんなことないよ、僕はシロエみたいに選ばれた力がないから努力するしかないんだ。もっともっと強くなってイシュを全滅させられる力が欲しいんだ。」
「僕が選ばれたなんて、大袈裟だよ。何にも役に立てないから後方にいくんだ」
「そんなことない。君の力がなければイシュの事は解明できない。解明できなければ沢山の仲間が無駄死にしてしまう。素晴らしい力だよ。」
シロエは更に言い返そうと思ったが、平行線を辿る気がしたので話を変え
「今日は実践演習だし、これくらいにして授業が始まるまで休んだ方がいいんじゃない?」と言って肩を持ってユイトを近くにあったベンチまで運んだ。
「僕はそろそろ教室に向かうよ、ユイトも遅れないようにね」
「色々とありがとう。今日は頑張ろう。」
ユイトは拳を作ってシロエの胸を軽く叩いた。
シロエは未だ息が荒いユイトを背に教室に向かった。
ユイトは今でこそ超能力を含めた戦闘力と学力を両立する校内トップのエリートだが、昔は戦闘はからっきしで学力に秀でた生徒だった。
ユイトはイシュの解剖や分解に興味があり、様々な文献を読み漁ってイシュの弱点を歴史や内部の構成の変化から読み解こうとしていた。
しかし、文献だけで得られる情報には限りがある。イシュはヴェルト一族以外のルミネール人には解剖できない。
いくら努力しても報われない事をユイトは知っていて、それでもこの国の役に立ちたいと死に物狂いま戦闘力を磨いたようだ。
聞いた話では、今までの学生の中で特に得意でもない超能力を努力によって大きく伸ばした前例はユイトだけらしい。
何が彼を突き動かしているかはわからないが、尊敬せずにはいられないような奴だ。
明るく努力家で皆んなのリーダー。
そんなユイトがシロエには眩しかった。
教室に入るとすでに大半の生徒が集まっていた。皆考えることは同じみたいだ。
シロエの背後に、威圧的なオーラを感じて振り返る。トールだ。
「おう、昨日はあれだ、悪かったな、それだけだ」
そうぶっきらぼうに言うと教室の奥に入っていった。トールも基本的には悪いやつじゃない。ただ、トールの血筋というのか興奮して頭に血が昇ると攻撃的になり挑発するような言動が多い。
昨日、彼が本心で言っていない事はシロエもわかっていたのでいつも通りに席に着いた。
シロエより少し後にリン、そして最後にユイトが教室に入り全ての生徒が揃った。
教室は話し声で溢れているが、いつもの賑やかさは無く、緊張感が伝わってくる。
授業開始の鐘が鳴り響くと同時に勢いよく教室の扉が開いて軍服に身を包んだ青年が入ってくる。
姿勢がやけに正しく、軍隊帽からはみ出た銀色の髪が周りを魅了するような容姿を持っていながら、その行動は物凄く規範的だ。
軍服の襟には銀色のバッチが2つ付けられており、胸には「クロム•ブラスト」と書かれたネームプレートが見える。
生徒は少し戸惑いながらも、ブラストに一礼して着席した。
「今日から君たちを受け持つ事になったクロム•ブラストだ。つい先日まで君たちが本日演習に向かうエミルの奪還戦に参加していた。時間は無いが、質問が有れば受け付けよう」
エミルとは、いくつかあるイシュの生産拠点の一つだ。100年ほど前から激しい奪還戦を行なっており、1年前やっとアルマの子核を破壊した事で奪還に成功したのだった。
戦争の後半は同時の新型イシュも加わったことにより熾烈を極めたと聞いている。
そんな戦闘に参加していた人が目の前にいるとこが皆の緊張に拍車をかけた。
そんな中ユイトが質問する。
「前の教官はどうなさったのでしょうか」
「前教官殿は特異な能力があるため、軍からの強い要望でオリブの前線に招集された。急ではあるが、諸君らも軍人を志す者として快く送り出してほしい」
オリブと聞いて皆が動揺する。
今ある前線は9つあり、その中で最も長く激しい戦闘が続いているのがオリブだ。通称「戻らずの国」と呼ばれている通り殆オリブの前線に参加してルミネールに帰ってくるのは稀な事なのだ。
もちろん全員が戦いによって死亡するわけではない。前線は奪還した土地は開拓されているため、危険なのは変わらないが街が出来ていてそこで戦闘員や一般人が暮らしている。
ただ、激しい前線は常に人手不足で軍人をルミネールに返している余裕がないのだ。
よって軍人にとっては片道切符そのものだった。
「みな動揺するのは理解できるが、今日の演習に集中してほしい。他に質問がなければ演習の説明を行う」
教室の黒板にブラストが図をコツコツと音を立てながら書いている。
「今回の実戦演習はエミルの後方支援部隊に合流して、生き残りのイシュが居ないか調査を行うものとする。勿論大半の地域はすでに支援部隊と諜報部隊によって調査済みであるため危険は少ないが油断しない様に」
図を書き終わると教室の中央に立ち説明を始めた。
「エミルはルミネールから約800km離れた場所にあり、中型飛行体を使って移動を行う。通常飛行体には専用の操縦士がつくが、今回は演習のため我々で飛ばしてみたいと思う。このクラスは戦闘員志望が多いが、この機会に支援部隊の仕事を体験するのも良いだろう」
中型飛行体とは、操縦士の念動によって内部の動力装置を動かして長距離を移動する乗り物だ。
乗組員全員が動力となるため、乗組員に比例して速度と飛行距離が伸びる仕組みになっている。
「話をエミルに戻そう。エミルは完全に奪還に成功しているため、本格的な現地調査が始まっている。その調査の中でアルマの手がかりを掴めそうな敵拠点跡地がいくつか見つかっており、ヴェルト•シロエのお父上殿のご厚意である調査拠点に同行させて頂く」
シロエは目を逸らして聞いている。
「この後すぐに訓練所に待機している飛行体に乗り込んでしばらく待機しておいてほしい。持ち物については事前に書類で通達しておいた通りである。余計な物を持ち込むのは禁止されているので留意する事。それでは解散」
皆直立しブラストに敬礼すると、いそいそと準備を始め学校裏手の訓練場に向かっていった。
この後方に出向く実戦演習は毎年行われる「いつも通り」の行事に過ぎないのだが、シロエだけは昨日の夢のせいか胸に少しの不安を抱いて、前に踏み出す一歩がとても重く感じた。
第一校舎は石の外壁で作られていて、お城のような構造になっている。
一方、第二校舎では戦闘に特化した超能力の実践や、イシュの研究などを行うため、特殊な物質で部屋の壁をコーティングしているらしい。
一見するど第一校舎とさほど変わらない風貌をしているが、中に入ると鈍く光る銀色の壁に囲まれた空間が広がる。
第二校舎の裏手にある森には戦闘訓練を行う広い演習場があり、シロエの自宅からは正門から入ると遠回りになってしまうのだが、訓練場を通って裏門から入ると10分ほど移動が短縮できるので、人目を忍んでよく裏門を使っていた。
シロエが演習場の差し掛かると、激しい物音が聞こえる。何かがぶつかる衝撃音だ。
木の間から演習場をそっと覗いてみると、ユイトが念動で巨大な岩を持ち上げていた。
ユイトは片手を伸ばしその岩を安定させると、もう一方の手を上に上げて、空中に風の球体を作り出した。
ユイトは額に汗をため、険しい表情をしている。
そして勢いよく手を振りかぶり風の球体を岩に向かって放射した。
球体は周囲の空気を裂きながら猛烈なスピードで岩にぶつかると、岩は粉々に砕けてしまった。
ユイトは力を使い果たしたのか、その場に膝をつき荒く呼吸をする。
ユイトが倒れるのをみたシロエは急いで駆け寄ってユイトの肩を抱いた。
ユイトは驚いた表情を一瞬見せたように見えたが、すぐに疲労でぎこちなくなった笑顔をシロエに向けた。
「恥ずかしいところを見られちゃったね」
そう言うとシロエの手を優しく払い、地面に座り込む。
「あれだけの念動だけでも凄いのに、同時に創造と干渉を使って衝撃波を作るなんて凄いよ!」
干渉とは念動と創造とならぶ超能力の一瞬で、物を動かす念動や物や事象を作り出す想像とは異なり、自然界のエネルギーに干渉して形状や性質をコントロールする最も難しい能力だ。
「僕なんてまだまだなんだ。もっと力をつけないと」
「ユイトは本当にすごいな」
「そんなことないよ、僕はシロエみたいに選ばれた力がないから努力するしかないんだ。もっともっと強くなってイシュを全滅させられる力が欲しいんだ。」
「僕が選ばれたなんて、大袈裟だよ。何にも役に立てないから後方にいくんだ」
「そんなことない。君の力がなければイシュの事は解明できない。解明できなければ沢山の仲間が無駄死にしてしまう。素晴らしい力だよ。」
シロエは更に言い返そうと思ったが、平行線を辿る気がしたので話を変え
「今日は実践演習だし、これくらいにして授業が始まるまで休んだ方がいいんじゃない?」と言って肩を持ってユイトを近くにあったベンチまで運んだ。
「僕はそろそろ教室に向かうよ、ユイトも遅れないようにね」
「色々とありがとう。今日は頑張ろう。」
ユイトは拳を作ってシロエの胸を軽く叩いた。
シロエは未だ息が荒いユイトを背に教室に向かった。
ユイトは今でこそ超能力を含めた戦闘力と学力を両立する校内トップのエリートだが、昔は戦闘はからっきしで学力に秀でた生徒だった。
ユイトはイシュの解剖や分解に興味があり、様々な文献を読み漁ってイシュの弱点を歴史や内部の構成の変化から読み解こうとしていた。
しかし、文献だけで得られる情報には限りがある。イシュはヴェルト一族以外のルミネール人には解剖できない。
いくら努力しても報われない事をユイトは知っていて、それでもこの国の役に立ちたいと死に物狂いま戦闘力を磨いたようだ。
聞いた話では、今までの学生の中で特に得意でもない超能力を努力によって大きく伸ばした前例はユイトだけらしい。
何が彼を突き動かしているかはわからないが、尊敬せずにはいられないような奴だ。
明るく努力家で皆んなのリーダー。
そんなユイトがシロエには眩しかった。
教室に入るとすでに大半の生徒が集まっていた。皆考えることは同じみたいだ。
シロエの背後に、威圧的なオーラを感じて振り返る。トールだ。
「おう、昨日はあれだ、悪かったな、それだけだ」
そうぶっきらぼうに言うと教室の奥に入っていった。トールも基本的には悪いやつじゃない。ただ、トールの血筋というのか興奮して頭に血が昇ると攻撃的になり挑発するような言動が多い。
昨日、彼が本心で言っていない事はシロエもわかっていたのでいつも通りに席に着いた。
シロエより少し後にリン、そして最後にユイトが教室に入り全ての生徒が揃った。
教室は話し声で溢れているが、いつもの賑やかさは無く、緊張感が伝わってくる。
授業開始の鐘が鳴り響くと同時に勢いよく教室の扉が開いて軍服に身を包んだ青年が入ってくる。
姿勢がやけに正しく、軍隊帽からはみ出た銀色の髪が周りを魅了するような容姿を持っていながら、その行動は物凄く規範的だ。
軍服の襟には銀色のバッチが2つ付けられており、胸には「クロム•ブラスト」と書かれたネームプレートが見える。
生徒は少し戸惑いながらも、ブラストに一礼して着席した。
「今日から君たちを受け持つ事になったクロム•ブラストだ。つい先日まで君たちが本日演習に向かうエミルの奪還戦に参加していた。時間は無いが、質問が有れば受け付けよう」
エミルとは、いくつかあるイシュの生産拠点の一つだ。100年ほど前から激しい奪還戦を行なっており、1年前やっとアルマの子核を破壊した事で奪還に成功したのだった。
戦争の後半は同時の新型イシュも加わったことにより熾烈を極めたと聞いている。
そんな戦闘に参加していた人が目の前にいるとこが皆の緊張に拍車をかけた。
そんな中ユイトが質問する。
「前の教官はどうなさったのでしょうか」
「前教官殿は特異な能力があるため、軍からの強い要望でオリブの前線に招集された。急ではあるが、諸君らも軍人を志す者として快く送り出してほしい」
オリブと聞いて皆が動揺する。
今ある前線は9つあり、その中で最も長く激しい戦闘が続いているのがオリブだ。通称「戻らずの国」と呼ばれている通り殆オリブの前線に参加してルミネールに帰ってくるのは稀な事なのだ。
もちろん全員が戦いによって死亡するわけではない。前線は奪還した土地は開拓されているため、危険なのは変わらないが街が出来ていてそこで戦闘員や一般人が暮らしている。
ただ、激しい前線は常に人手不足で軍人をルミネールに返している余裕がないのだ。
よって軍人にとっては片道切符そのものだった。
「みな動揺するのは理解できるが、今日の演習に集中してほしい。他に質問がなければ演習の説明を行う」
教室の黒板にブラストが図をコツコツと音を立てながら書いている。
「今回の実戦演習はエミルの後方支援部隊に合流して、生き残りのイシュが居ないか調査を行うものとする。勿論大半の地域はすでに支援部隊と諜報部隊によって調査済みであるため危険は少ないが油断しない様に」
図を書き終わると教室の中央に立ち説明を始めた。
「エミルはルミネールから約800km離れた場所にあり、中型飛行体を使って移動を行う。通常飛行体には専用の操縦士がつくが、今回は演習のため我々で飛ばしてみたいと思う。このクラスは戦闘員志望が多いが、この機会に支援部隊の仕事を体験するのも良いだろう」
中型飛行体とは、操縦士の念動によって内部の動力装置を動かして長距離を移動する乗り物だ。
乗組員全員が動力となるため、乗組員に比例して速度と飛行距離が伸びる仕組みになっている。
「話をエミルに戻そう。エミルは完全に奪還に成功しているため、本格的な現地調査が始まっている。その調査の中でアルマの手がかりを掴めそうな敵拠点跡地がいくつか見つかっており、ヴェルト•シロエのお父上殿のご厚意である調査拠点に同行させて頂く」
シロエは目を逸らして聞いている。
「この後すぐに訓練所に待機している飛行体に乗り込んでしばらく待機しておいてほしい。持ち物については事前に書類で通達しておいた通りである。余計な物を持ち込むのは禁止されているので留意する事。それでは解散」
皆直立しブラストに敬礼すると、いそいそと準備を始め学校裏手の訓練場に向かっていった。
この後方に出向く実戦演習は毎年行われる「いつも通り」の行事に過ぎないのだが、シロエだけは昨日の夢のせいか胸に少しの不安を抱いて、前に踏み出す一歩がとても重く感じた。
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