江戸咲く花にて

暁エネル

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玄太の決意

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水仙の看病のおかげで おいらは 順調に回復した


水仙は あれから お侍さん達に 目を光らせ

おいらに 近づかせない様にしてくれていた



そんな中 おいらは 壮志郎さんの部屋へ 初めて呼ばれ

壮志郎さんが 直接 おいらに 頭を下げる事に・・・




(壮志郎さんと 面と向かって 話をするのは 初めてだ・・・ おいら ちゃんと話が 出来んのかぁ~)



おいらは ドキドキしながら 壮志郎さんの部屋へ


「失礼します」


おいらは そう言って ゆっくりと 壮志郎さんの前に座った




(やっぱりこの人 凄く 整ったキレイな顔をしている・・・)




おいらは つい 壮志郎さんに 見とれてしまっていた


「玄太」


「あっ はい」


「呼び出してすまなかった・・・ もう 体の方は 大丈夫ですか?」


「あっ はい 水仙が おいらに いろいろしてくれたので・・・」


「あの者達が すまなかった・・・ でも あの者達も 悪気はないのだ・・・ 生と死が 隣り合わせで 自分では どうしようも出来ない時があるのだ・・・ だからと言って 玄太にした事・・・ 嫌な思いを させていいとは 私は 思っていない・・・ 水仙が ひどく怒っていた事で あの者達も 反省をしているのだ あの者達は 日頃 水仙には お世話になってるからなぁ~ 水仙には 誰も 文句は言えないのだ・・・ 玄太 本当に すまなかった・・・」


「そっ 壮志郎さん 頭を上げて下さい おいら 正直 何て言うか あんまり覚えていないんです 気が付いたら おいらの体が 痛んで 水仙が 傍に居ました それに おいらは もう 大丈夫なので・・・」


「玄太 ありがとう」




(話も もう続かない・・・ これ以上 おいらが ここに居たら・・・)




「いいえ それじゃ~ おいらは 失礼します」


おいらは 壮志郎さんに 頭を下げ 部屋を出た




(はぁ~ 壮志郎さんの顔が 凄くキレイで おいら まともに 壮志郎さんの顔 見られなかった・・・ 逆に 失礼だったんじゃないか おいら・・・ 水仙は よく 壮志郎さんと一緒に居られるよ)




おいらは みんなが入るお風呂場へ 水仙の掃除を手伝った


「水仙 遅くなった」


「あっ 玄太 ずいぶんと早かったね」


水仙は 手を止めて おいらを見た


「おいら 壮志郎さんに 失礼な事したかも・・・」


「玄太 それは どういう事?」


「おいら 壮志郎さんの顔 まともに見られなかったと思う 壮志郎さんは 謝ってくれたのに・・・」


「玄太・・・ 玄太の考え過ぎだよ・・・ 壮志郎さんは そんな事で 怒ったりはしないよ」


水仙は 少し笑った


「水仙は よく あんなにキレイな顔をした 壮志郎さんと一緒に居られるよ」


「そうかなぁ~」


そう言って また 水仙は 笑っていた





あれから 何日も過ぎ おいらは 前と同じ様に お侍さん達とも 話せる様になって来た頃


おいらが 朝 井戸で 水をくみ上げていた時

そこへ 柳田さんがやって来た


「玄太 手伝うよ」


そう言って 柳田さんは 綱を引っ張り 滑車が勢いよく回り


おいらのオケに たくさんの水を入れてくれた


「ありがとう 柳田さん」




(まともに 柳田さんと 顔を合わせるのは 久しぶりだ・・・)




「あっ あのさぁ~ 玄太・・・ その・・・ 悪かったなぁ~」



「柳田さん」


「そっ それだけ 言いたかった」


そう言って 柳田さんは 行ってしまった




(柳田さん・・・ いけない・・・ このままじゃ~ おいらは 柳田さんともっと 話をしないと・・・)







いつもの様に おいらは 水仙とかまどに居た


おいらは 今朝の 柳田さんの様子が 気になっていた


「柳田さん なんですか?」


水仙の声に おいらは 顔を上げた


「いや~ 何でも・・・」


そう言って 柳田さんは 行ってしまった


「あっ 柳田さん」


「玄太」


水仙は おいらを 呼び止めた


「水仙 おいら 柳田さんの話 聞いて来るよ」


おいらは そう言って 柳田さんのあとを 追いかけた




(良かった・・・ 柳田さんの方から 来てくれた)




「柳田さん あの~ おいら 柳田さんと話がしたいです だから あとで おいらの部屋へ来て下さい」


おいらは それだけを言って 水仙の所へと戻った


柳田さんが 振り返る事はなかった




「あっ 玄太 柳田さんは?」


「柳田さん 飲み足りなかったみたいです でも もう お酒は おしまいですって 言って来たよ」


「そうですか」




(水仙 ごめん・・・ でも 柳田さんと話をするって言ったら 水仙は きっと 心配する・・・ これは おいらの 問題だから・・・)





おいらは 水仙と かまどの片付けを終え 部屋へ


しばらくすると 柳田さんが おいらの部屋へと やって来た


「玄太 いいかぁ~」


「はい どうぞ」





(柳田さんと2人きりで 話をするのは 何だか 緊張する・・・ でも ちゃんと話がしたい)





「玄太 すまなかった・・・ まず 謝らせてくれ」


柳田さんが おいら部屋に 入るないなや おいらに 頭を下げた


「柳田さん」


おいらは びっくりして 少し大きな声を 出してしまった


柳田さんは ゆっくりと 頭を上げた


「玄太・・・ かしらは 俺をとがめる事はしねぇ~ 昔から そうなんだ 態度で俺達に見せてきた でも それが一番 堪える・・・ 水仙みたいに 俺達に 向かって しかってくれた方が まだいい・・・」




(柳田さんは 相当 堪えたみたいだ)




「柳田さん おいらも・・・ おいらもさぁ~ 何も 知らなかったし・・・ 理解してなかったんだ・・・ 壮志郎さんに 話を聞いてさぁ~ おいらには 計り知れない事だって思って・・・ 本当に・・・」




(命がけの・・・ おいらには 分からない・・・ 仲間が 次々と居なくなる・・・ どんなにつらい事だった・・・ そして これからも・・・)




「玄太 かしらと話をしたのか」


「うん それで 少しは分かったよ」


「玄太・・・ ありがとう」


「だから・・・ だからさぁ~ もし どうしようもなくなったら 柳田さん おいらに言ってよ」


「玄太 いいのかぁ~ じゃ~ また 話しに来てもいいのか?」


「いいよ・・・ 聞くよ おいらの話も 聞いてよ 柳田さん」


「あぁ~ ありがとう 玄太」


そう言って 柳田さんは 部屋を出て行った




(良かった・・・ 柳田さんと話が 出来た・・・ おいらは もっと・・・ みんなと仲良くなりたい)




おいらは そう思いながら 眠りについた










その頃 保坂家では いいなずけとの 縁談の話が持ち上がっていた


(つづく)


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