悠と榎本

暁エネル

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10年前

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広い部屋の中で 僕は 時々 耐え切れなくなって 榎本の大きなベッドへ潜り込む





(榎本のニオイ・・・ 榎本に会いたい・・・ 榎本 帰って来て・・・)





榎本の枕を 抱きしめると まだ かすかに榎本のニオイが残る


僕は もうずいぶんと こうして榎本の帰りを待っている


何カ月先になるのか 何年先になるか 分からない 榎本の帰りを・・・






(榎本は 今 自分の夢を叶える為に 頑張っている・・・ 僕だって 今・・・ でも 榎本は いつから 僕の事を・・・ 確か・・・)






僕が 初めて榎本に会ったのは 中学校2年生の時 同じクラスで


榎本は すでにみんなの人気者で 僕は 目立たない存在だった


でも 榎本は そんな僕の事を ずっと前から 知っていてくれていた





(こんな何のとりえのない 目立たない僕を 選んでくれた榎本に 感謝しかないよ・・・ だから 榎本 早く僕の所へ帰って来て・・・)










10年前



春 暖かな風にふわりと 包まれて 緑の木々も色鮮やかで



真新しい制服を着た 1年生が 僕の横を駆け抜けて行く





(1年生かぁ~ 元気だなぁ~)





グランドをながめながら 僕は 昇降口へと向かった






藤山中学校


2年3組の教室は まだ生徒はまばらで クラス替えをしたばかりの教室は 


皆どことなく よそよそしくて・・・ 僕 高橋悠(たかはしゆう)も その中の1人だ



僕は みんなの邪魔にならない様に 持って来た本を読む


決して 友達を作りたくないとか 暗い訳ではない


こんな僕でも 1年生の時は それなりに 友達もいたし 楽しかった


ただ僕は 人見知りだし 引っ込み思案


はじめての友達に どう話かけたらいいのか 分からない





(僕だって・・・ 話かけてくれさえしてくれたら・・・ 普通に話せる 多分・・・ きっと)










俺は 2年生になってから 毎日 ドキドキしてる


信じられない事に 俺が 気になっていた 悠が 同じクラスに居るからだ






(ヤベ~ マジで 悠が教室に居る・・・ 同じクラスになったんだから 当たり前なんだけどよ・・・ まさか 同じクラスになるとか・・・ 思ってなかったんだよなぁ~ ど~しても 悠を見ちまう 悠の事 探しちまう ドキドキするの分かってる 悠が 居ると思うだけで ドキドキすんの 分かってんだよ・・・ でも・・・)






俺は 友達と一緒に 教室に入る



「正臣・・・ 俺 新しいスパイク買ったんだ・・・」



「正臣 聞いてる?」



「えっ あっ 何?」



俺は 教室に入ってすぐ 悠に 目を奪われていた


悠は いつも 本を読んでいた



俺は 榎本正臣(えのもとまさおみ) そんで 俺に話かけてんのが



小さい頃から 同じサッカークラブで 一緒にサッカーをしている 大塚隆(おおつかたかし)



「だから・・・ スパイク 新しくしたって言ってんだよ・・・」



「へ~ そうなんだ」



「正臣 最近 おかしくねぇ~ ボ~っとしてる事 多いぞ・・・ そんなんだと レギュラーすぐ取られんぞ」



「隆 それはねぇ~から 大丈夫だ」



「そんなの 分かんねぇ~だろう・・・」




俺は 隆にそう言われても 悠に 視線を向けていた



俺は 後ろの方の席で 悠は 前の方 俺から悠は 良く見える








チャイムが鳴り


廊下に居た生徒達が 教室に入って来た




担任の榊(さかき)先生が 教室に入って来た



「みんな~ 席に着け」



榊先生が 教室を見渡した


「よ~し 今日も 欠席者はゼロっと・・・ 連絡事項は 特に無しだ みんな 1時間目の授業の準備をしろ・・・」


そう言って 榊先生は 教室を出て行った






(あっ 今日は 先生に言わなくっちゃ・・・)






僕は 榊先生を追いかけて 廊下に出た






(なんだ・・・ どうしたんだ・・・ 悠が 教室を出てった・・・ 榊先生を 追いかけて・・・)





俺は 悠の事が 気になってしょうがなかった








「先生・・・」



先生は 振り向いて 僕を見た



「悠・・・ どうした?」



「先生・・・ お願いがあります」



先生は 真っ直ぐ 僕を見た



「ううん なんだ」



「放課後 教室に残って勉強をしても いいですか?」



「お母さん 遅いのか?」



「はい 遅い時もあります」



榊先生は 僕の家が 母子家庭だという事を 知っている



先生は 斜め上を向いて 考えている様子



「うん 悠なら 大丈夫だろう・・・」



先生は 何か納得した様子で 僕に話てくれた



「悠・・・ 6時までだ・・・ どの部活も 6時までだから・・・ まぁ~ 熱が入り過ぎて 6時を過ぎちゃう事もあるんだけどなぁ~」



榊先生は 頭をポリポリとかきながら 僕にそう言った



榊先生は 女子バスケットボール部の顧問をしている



「悠・・・ 大丈夫だとは思うけど 一応 帰ったかの確認として 下駄箱を確認するからなぁ~」



「はい・・・ ありがとうございます」



僕は 榊先生に 深々と頭を下げた



「1時間目が 始まるぞ・・・ 教室入れ」



「はい」



榊先生は 急いで階段を下りて行った








(良かった・・・ 図書館とも 考えたんだけど・・・ 僕の家から遠い・・・ 学校なら お母さんも心配しなくてもすむ・・・ やっぱり 榊先生に言って良かった・・・)







僕が 教室に入ると 一斉にみんなが 僕の方を見た



「な~んだ 高橋君かぁ~ 脅かさないでよ」



1番前の席で 立ち話をしている女子に そう言われてしまった







(みんな 1時間目の授業の先生が来たと思って 僕を見たんだ・・・ 後ろのドアから 入れば良かった・・・)






僕は みんなに申し訳ないのと 恥ずかしさで 下を向きながら 自分の席に着いた










(ヤベ~ 悠の顔が赤い・・・ 一瞬しか見られなかったけど・・・ これからは もっと悠の いろんな顔 見られんのかなぁ~)





俺は 悠を見ながら そう思った




(つづく)



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