俺の知らなかった世界

暁エネル

文字の大きさ
92 / 112

正月④

しおりを挟む
俺と渚と忍は玄関で客人を出迎えていた


俺と渚の間で忍は客人に頭を下げていた


客人の中には小さな忍の頭を


クシャクシャとなでて来る客人


そんな怖そうな客人にも忍は嫌な顔はしなかった



(忍も毎年の事で慣れたのか? それとも諦めているのか?)



例年よりも客人の数が多く


俺達は玄関に居続ける時間は長かった


世話係が慌てた様子で俺達の所へとやって来て


俺達はやっと玄関から解放された



(やれやれやっとだぜ・・・ それにしても俺と渚はともかく忍は疲れただろうなぁ~)



俺達はそのままダイニングテーブルへ


ダイニングテーブルには重箱が並び


世話係が雑煮を運んでくれていた


「オヤジの部屋の様子はどうなんだ?」


「へい 皆さんお集まりになり例年通りの事を運ぶとおもいやす」


「昨日の二の舞いにならねぇ~とも限らねぇ~けどなぁ~」


「昨日よりもひどくなったりして・・・」


「お嬢・・・」


「でもまぁ~ オヤジ次第なんじゃねぇ~の・・・」


「若・・・」


「お前はどう思うんだよ・・・」


「あっしの口出し出来る身分ではねぇ~んです あっしはカシラについていくだけっす」


「まぁ~お前はそうだなぁ~」


世話係は頭を下げ行ってしまった


「この際これをきっかけに みんなバラバラに解散すればいいんだけどなぁ~」


「龍 今バラバラはマズイよ ここはもう少しあのオヤジに頑張ってもらわないと・・・」


「そうなんだよなぁ~ 今じゃ~ねぇ~んだよなぁ~」


「それよりも今日は勉強はしないよねぇ~」


渚が雑煮をすすりながらそう言った


「そうだなぁ~ 今日は正月らしい事をするかぁ~ 忍にも出来る事やろうぜ・・・」


俺達はおせち料理を食べ終え


また渚の部屋へと向かっていた





昨日は雪でも降りそうな空模様だった


けれども今日は気持のいい青空で


部屋に居るのはもったいないくらいだった


俺は外で遊べる物を探しに自分の部屋へと来ていた



(確か押入れにあったはず・・・)



俺は押入れに手を突っ込んで小さな箱を取り出した


「あったこれだ・・・」


中には小さな時に遊んだ物がいろいろ入っていた





渚は渋々中庭に出て来て


忍は嬉しそうに笑って


俺のあとについて来た


「龍 渚バドミントンやりたい」


「バドミントンは2人しか出来ねぇ~だろう それに忍には難しい・・・」


「えっ出来るよ 持って来る」


そう言って渚は部屋へと行ってしまった


「兄さん これなあに?」


忍は箱の中から竹とんぼを取り出していた


「忍 見てろよ・・・」


俺は手を合わせて滑らせ竹とんぼを飛ばした


竹とんぼは青い空に向かって飛んで行った


忍は笑って竹とんぼを追いかけていた



(これなら忍も楽しんで遊べるだろう・・・)



忍もすぐに竹とんぼを飛ばせる様になり


あっちへ行ったりこっちへ来たり


忍は竹とんぼの夢中になって遊んでいた


他にもフリスビーに縄跳び コマにゲーム機


輪投げやけん玉が入っていた


忍が竹とんぼに夢中になっている頃


渚がやっと戻って来た


「やっと見つけたよ 龍やろう・・・」


「勝負事は負けねぇ~からなぁ~」


俺はそう言ってラケットを握った


俺は忍を気にしつつ


渚とのバドミントンを楽しんでいた


久しぶりのバドミントンに渚は苦戦をし


俺はそんな渚の事を笑っていた


すると大きな声とお物音が聞こえて来た


すぐに忍は俺に駆け寄り


俺もラケットを置いて忍を抱きしめていた


俺と渚は物音のした方へ視線を向いていた


「渚 ここまでだなぁ~」


「あぁ~あ~ せっかく楽しくなって来たところだったのになぁ~」


俺は忍を抱っこしたまま片付け


俺達は渚の部屋へと戻った


戻ってもなを忍は俺にしがみついていた



(よっぽど怖いんだろうなぁ~ 昨日の今日だもんなぁ~)



俺はそんな忍を抱っこしたまま座っていた


「やっぱり今日もってところだなぁ~」


「どうなるんだろう?」


「オヤジの弱体化は免れねぇ~んじゃねぇ~の?」


「そうかもだけど・・・」


「少しずつでもオヤジが弱体化してくれてたらそれでいい・・・」


「龍は本当にオヤジとケンカすんの?」


「押さえ付けられっぱなしでいい訳がねぇ~からなぁ~ 俺だって自由になりたいんだ・・・」


俺がそう言ったとたん


渚はテーブルに手をついて


俺の方へと身体を近づけていた


「まさか龍 この家を出て行くの?」


渚の言葉に忍も俺の方を向いていた


忍はゆっくりと俺の隣に座った


「それはねぇ~よ 俺はこの家をもっといいもんにしたと思ってんだ・・・」


俺の言葉に渚は腰を落とし


俺は忍の顔に視線を向けていた


「例えばどんな感じによ?」


「そうだなぁ~ まずはご近所と仲良く・・・」


「ご近所と仲良く?」


渚は首をかたむけていた


「あぁ~ 誰でもこの家に入れる 避難場所的な・・・」


「えっ何それ おもしろい 今と真逆じゃん・・・」


渚は顔を変化させながらそう言っていた


「実現できるかはわからねぇ~けどなぁ~」


「でも そうなったら素敵だねぇ~」


「だろう・・・」


俺は渚の言葉が嬉しかった


「龍がそんな事を考えてるなんて知らなかったよ・・・」


「俺だって真彦に会うまではそんな事思わなかった」


「えっ何? 龍は真彦に運命を変えられたって感じなの?」


「ある意味そうかもなぁ~」



(真彦にはホント いろんな意味で教えられたよ・・・ 心も身体までもなぁ~)



俺は真彦の身体の重みを思い出し少し熱くなっていた





あれからオヤジの部屋での物音は聞こえては来なかった


俺達はダイニングテーブルへ


いつも居る世話係の姿は無かった


俺は冷蔵庫を開けて重箱を出した


「渚 手伝ってくれ・・・」


俺は渚に重箱を渡した



(もちはどこにあるんだ?)



俺は引き出しを次々と開けていた


そこへ世話係がやって来た


「若・・・ すいやせん 今支度をしやすから お掛け下さい」


「あぁ~頼む・・・」


俺はそう言ってキッチンを離れた


すぐにもちの焼けるしょうゆのいい香りがしてきた


「若・・・ お待たせいたしやした」


俺を初め渚と忍にも同じ物が並んだ


「さっきの騒ぎはおさまったのか?」


「へい どうやら相沢氏の話を知っていらっしゃったお客人がほとんどで その確認と納得されていらっしゃらないお客人もおりやしたが カシラはどうしても相沢氏を 破門する事には反対のご様子だったので 一部のお客人が・・・」


「暴れたのか?」


「へい」


「で どのくらい残ってる?」


「昨日よりは少なく・・・ ですが昨日は元々相沢氏を煙たがっていたお客人でした なので相沢氏をここで破門出来ると期待していた人達だったので・・・」


「見事オヤジに裏切られたってところかぁ~」


「へい」



(まだまだオヤジを支援するヤカラはたくさん居るって事かぁ~)



「それでみんな納得しているのか?」


「カシラから離れる人は少ないかと・・・」


「そうかぁ~」


「若・・・ カシラにおケガはありやせん」


「他のヤツらは?」


「へい 止めに入った若い衆が少し・・・」


「未然に防いだってところか?」


「昨日の二の舞いはカシラが許さないと思いやす」


「お前らも大変だなぁ~」


俺はつくづくそう思っていた





俺は父さんと母さんとおせち料理を食べ


少し離れた神社へ初詣でに行った


「今年は受験生だから 御守りでも買ってみる?」


母さんは嬉しそうにそう言った


「要らないよ だって久下沼だよ 龍も言ってた俺の成績では絶対に落とされないって・・・」


「そう・・・」


母さんはそう言って歩き出していた



(あぁ~早く冬休みが終わらねぇ~かなぁ~ 龍に会いてぇ~なぁ~)



俺はそう思いながら青い空を見上げ


父さんと母さんの後ろを歩いた



(つづく)



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

煌めくルビーに魅せられて

相沢蒼依
BL
バイト帰りにすれ違った人物に、いきなり襲われて―― バイトを掛け持ちして大学に通う片桐瑞稀。夜遅くの帰宅途中に、意外な人物に出会ったのがはじまりだった。

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました

俺の居場所を探して

夜野
BL
 小林響也は炎天下の中辿り着き、自宅のドアを開けた瞬間眩しい光に包まれお約束的に異世界にたどり着いてしまう。 そこには怪しい人達と自分と犬猿の仲の弟の姿があった。 そこで弟は聖女、自分は弟の付き人と決められ、、、 このお話しは響也と弟が対立し、こじれて決別してそれぞれお互い的に幸せを探す話しです。 シリアスで暗めなので読み手を選ぶかもしれません。 遅筆なので不定期に投稿します。 初投稿です。

ショコラとレモネード

鈴川真白
BL
幼なじみの拗らせラブ クールな幼なじみ × 不器用な鈍感男子

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて… ほのほのです。 ※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

金の野獣と薔薇の番

むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎ 止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。 彼は事故により7歳より以前の記憶がない。 高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。 オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。 ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。 彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。 その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。 来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。 皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……? 4/20 本編開始。 『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。 (『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。) ※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。 【至高のオメガとガラスの靴】  ↓ 【金の野獣と薔薇の番】←今ココ  ↓ 【魔法使いと眠れるオメガ】

処理中です...