俺の知らなかった世界

暁エネル

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龍の怒り

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相沢さん達3年生が教室を出て行くと同時に


廊下で見て居た生徒達が龍の周りに集まっていた


龍の顔は歪んだままだった



(龍・・・ 俺は何を言ってやれば正解なんだ ぜんぜんわからねぇ~)



俺はただ龍がみんなに声をかけられているのを ただ黙って見ている事しか出来なかった


「あの3年生藤堂君の知り合い?」


「凄く怖そうな先輩だったけど藤堂君大丈夫?」


「藤堂君って何者なの?」


「あっそれ私も知りたい・・・」


いろいろな言葉が飛び交っていた


チャイムが鳴り俺は龍を残し教室を出た



(龍大丈夫かなぁ~ それにしても龍がヤベ~ あんなに怒った龍を見たのは初めてだ てか今まで龍が怒ったところを俺は見た事があったのかぁ~? あっ一度だけある あれは小学3年生の時 龍が5年生に馬乗りになって殴っていた あれは龍は悪くない 今度も龍は・・・)






チャイムが鳴り俺の周りに居たクラスのみんなが席に着いた



(クソやられた・・・ 何が注目だよ 大きなお世話だっちゅうのふざけやがって・・・ 油断したこんなに早く相沢が俺の所に来るとは思わなかった 授業が終わったらみんなに囲まれないうちに教室を出たい 真彦ならわかってくれるだろう 今日は悪いが先に帰る・・・)



俺の怒りは収まらず 授業をしている先生の声も煩わしく思えていた


授業が終わり先生が教室を出て


俺は素早くカバンを持ち教室を出た


俺を呼び止める言葉を無視して俺は廊下へと出た



(階段・・・ みんなが使う階段はダメだ 誰かにつかまったら抜け出せなくなる・・・)



俺は違う階段を下りていた





俺は龍の事が心配で急いで龍の教室をのぞいた



(龍が俺を待っているはずがねぇ~よなぁ~)



案の定龍の姿は教室にはなかった



(龍が素直にこっちの階段を下りるのか? 俺だったら・・・)



俺は廊下を走り違う階段の上から龍を呼んだ


「龍・・・」



(真彦?)



足音が慌ただしく聞こえて来た



(今 真彦の声がした)



俺は階段を見上げていた



(龍はもう校舎を出たかもしれない・・・)



俺はそう思いながら階段を素早く下りていた


「龍」


「良くわかったなぁ~」


俺は階段を何段か飛ばして下り龍の隣へ



(龍が居た・・・ 良かった・・・)



「良かったやっぱこっちだった・・・ クラスのみんなから逃げるとしたらこっちだと思ってさぁ~」


「真彦なら置いて行ってもわかってくれると思ってた・・・」


「ひでぇ~ これでも龍の事を心配してたんだぞ・・・」


「悪い・・・ だけど・・・」


「あぁ~俺も相沢さんにはびっくりした 俺何も言葉が出なかった・・・」


「あの状況じゃ~しょうがねぇ~」


俺と龍は他の生徒達をよける様に通り抜け学校を出た





「龍 クラスではどうだった?」



(質問攻めにあってたけど 龍があの状況で答えるとかはねぇ~よなぁ~)



「みんなに聞かれる前に教室を出たからなぁ~」


「そうなんだ・・・」


「相沢のヤツゼッテーあれウソだぞ・・・」


「何が?」


「1人で来ようとしたって言ってただろう・・・ そんな訳がねぇ~んだよ 相沢が1人で動くとか有り得ねぇ~よ」


「いつも相沢さんの後ろにはあの2人が居るって事?」


「相沢にしてやられたんだよ俺は・・・」


「今日はクラスのみんなから逃げられたけど 明日はそうはいかないかもよ・・・」


「あぁ~ 俺は静かにクラスのみんなに溶け込みたかったのによ・・・ クソ相沢のヤツ 何が制服姿が見たかっただよ ふざけんなよ・・・ 真彦今日は俺手加減出来ねぇ~からそのつもりでいてくれ・・・」


「いいさ 龍の本気見せてもらおうじゃねぇ~の・・・」


「真彦あとで吠えずらかくなよ」


「あぁ~楽しみだ・・・」


「言ってろ・・・」


俺はそう言った龍に笑いかけていた



(良かったいつもの龍に戻った・・・)






俺と龍がいつもの様に龍の家の塀を曲がったその時


前から世話係さんと忍が手をつないで向こうから歩いて来た



(あれ忍だよなぁ~)



俺がそう思った瞬間 龍が忍を呼んで走り出していた


俺も龍を追いかけ走った


忍も世話係さんの手を離し 龍に向かって走っていた



(何これめちゃくちゃ忍がかわいいじゃん あんなに可愛く走るんだ・・・)



俺は龍の後ろから忍を見ていた


龍はしゃがんで忍を受け止め立ち上がり 


勢い余ってくるりと忍を抱き上げながら回った


忍は嬉しそうに声を出して笑っていた


「若 真彦さんお帰りなさいやし 今門を開けますんで・・・」


そう言って世話係さんは門を開けてくれた


その間忍はしっかりと龍に抱き上げられ とても嬉しそうな笑顔を見せていた


「龍俺忍が声を出して笑ったの初めて見たよ」


「そうだったか? 俺と渚と遊ぶ時はいつも忍は笑っているけどなぁ~」


龍はそう言いながら忍を玄関でおろし靴を脱がせた


「忍さん手を洗っておやつにしましょう 若と真彦さんにはあとであっしが持って行きやす」


そう言って世話係さんと忍は行ってしまった






俺と龍は龍の部屋へ


「龍いいもの見たよ 忍が嬉しそうに龍に向かって走る姿スゲーかわいいなぁ~ 俺だったらいいのにってちょっと思った」


龍は俺の話を聞きながら学ランを脱いでいた


「俺も驚いた 忍が前から歩いて来るとはなぁ~」



(龍のご機嫌も忍のおかげで良くなったかなぁ~?)



俺がそう思っていると 


龍はワイシャツの袖のボタンをはずし


袖をクルクルとまくっていた


「真彦 世話係がおやつを持って来たら始めるぞ・・・」


「龍 機嫌が治ったとかじゃ~ないの?」


「何でだよ 忍は関係ねぇ~だろう・・・ それとも真彦は俺の本気が怖いのか?」


「そんな事ある訳がねぇ~ 俺だって龍の本気が見られるんだ こんなチャンスはそうねぇ~だろう・・・」



(龍の挑発だとわかってる だけど俺も龍にどこまで通用するのか 俺自信が試したい・・・)



俺も学ランを脱ぎワイシャツの袖のボタンをはずした


「龍 相沢さんの苦手意識があるって前に言ってたけど・・・」


「あぁ~これでハッキリしたなぁ~ 笑顔の裏の顔がなぁ~」


「そうかなぁ~?」


「真彦は相沢の肩を持つのか・・・」


「そうじゃないけどさぁ~ 教室に入って来た時の相沢さんの笑顔は本物なんじゃないかなぁ~」


「あの何かをたくらんでいそうな笑顔をかぁ~?」


「相沢さんの後ろに居た2人は めちゃくちゃ感じが悪そうだったけどね あの2人は相沢さんの何なの?」


「さぁ~な俺には関係ねぇ~よ」


「そうだけどさぁ~」



(でも気になるよなぁ~ 何で相沢さんの後ろに居たのか 相沢さん見つかったって言ってた 本当は1人でコッソリ来たかったみたいな口ぶりで言ってた 相沢さんはこんなおおごとには本当はしたくなかったのかも・・・ でも龍は注目されているべきって言ってたよなぁ~? どういう意味なんだ?)






「若すいやせん 忍さんが・・・」


フスマの向こうから世話係さんの声がした


「いいぞ」


「失礼しやす・・・ さぁ~忍さん」


忍がおやつを持って部屋へと入って来た


「どうした?」


「はい 忍さんが若と真彦さんと一緒におやつを食べたいみたいなんです・・・」


忍はゆっくりとおやつをテーブルに置いた


「そっか あとは俺がやる」


「若 ありがとうございやす ではあっしは失礼しやす」


そう言って世話係さんは龍の部屋を出て行った


龍の部屋に俺と龍と忍の3人になった


忍はおやつの前にちょこんと座っていた



(待って・・・ めちゃくちゃかわいいんだけど・・・)



「真彦 忍を見過ぎだ それじゃ~忍も近寄れねぇ~よ なぁ~忍」


そう言って龍は忍の隣に座って忍におやつをあげていた


「龍 俺少しは忍に受け入れてもらってるのかなぁ~」


「そうだなぁ~ 忍がみずから来たんだ 真彦に興味が出て来たのかもなぁ~」


忍はおやつを食べながら俺に目を向けてくれる事が多くなった



(俺からグイグイ行きたいけど 得策ではないよなぁ~ あぁ~忍と遊びたい 俺が忍を笑顔にしたい・・・)



「真彦」


「ううん?」


「真彦は部活に入らなくて良かったのかよ 俺に合わせなくても良かったんだぞ・・・」


「龍はそんな事気にしてたの?」


「別に気になんかしてねぇ~よただ俺は・・・」



(龍は変わらないなぁ~ その顔思い出すなぁ~小学校の入学式に俺に見せた顔そのままだ・・・)



「俺は龍と一緒に体育が出来るし 俺1人で部活に入っても龍が居ないとつまらない」


「そうかよ・・・」


龍は忍を見ながらそう言った


龍は忍の前だからなのか それ以上の言葉を口にはしなかった





おやつを食べ終わり世話係さんが忍を迎えに来た


俺は忍と遊びたかったし 忍も龍と遊ぶきでいたらしく


龍は忍に言い聞かせ世話係さんと龍の部屋を出て行った


俺はテーブルを片付け龍の部屋を広く使える様にした


「それじゃ~始めるぞ・・・」


龍はそう言って俺と向き合った


「あっ ちょっと待った」


「何だよ真彦 おじけづいたか?」


「ちげ~よ 靴下危ねぇ~から脱ぐ・・・」


「今まで脱いだ事ねぇ~だろう・・・」


「でも今日は危ない気がする・・・」


「そっかいいね~ 俺も真彦に習おう」


「別に龍は脱がなくてもいいだろう・・・」


俺が靴下を脱ぎ終わると龍も靴下を脱ぎ立ち上がっていた


龍は世話係さんと小さな頃から何度も


こういう戦い方をしてきている 


俺みたいな大きな人を相手にするのは慣れたものだった



(龍に一方的に攻められるばっかだ かわすだけで精一杯 反撃が出来ない どうすれば・・・)



(真彦が俺について来ている 今までにないくらいに打ち込んでいるのに・・・)



俺は龍に詰め寄られ 柱に背中が当たり 


俺は疲れていて龍をかわすと同時龍の腕を掴んだ


そのまま龍を後ろから抱きしめていた


「おい真彦離せよ」


俺は龍を抱きしめながら 息を荒だてていた


「龍・・・ 休憩・・・」


「わかったから離せよ・・・」


俺が腕をゆるめると龍は俺から離れ


俺は柱に背中をつけながら座った



(俺がこんなに苦しく息をしてるのに 何だよ龍のヤツ 余裕か余裕なのか? ぜんぜん息を乱してねぇ~じゃん 何なのこの違い?)



(真彦にやられた・・・ まさか腕をつかまれるとは・・・ 真彦は疲れてきていたのはわかってた 俺は油断してたのか? 真彦に攻撃をされる訳がねぇ~と思い込んでいた?)



俺と龍は顔を合わさずしばらく黙っていた





「あぁ~龍に押されっぱなしだった・・・」


俺がそう言うと龍は振り返った


「いや 真彦は俺についてきていたよ」


「えっホント でも龍をかわすのに精一杯だった・・・」


「あんだけ出来ればいいんじゃねぇ~の・・・」


「龍ってさぁ~ ホントに凄いなぁ~」


「何だよいきなり・・・ 気持ち悪い」



(真彦は何を言い出すんだ・・・)



「いや~俺も龍みたいになれるのかなぁ~って思ってさぁ~」


「俺みたいになってどうするんだよ」


「何かさぁ~龍は大勢の敵に囲まれても 最後まで1人息も乱さず立っている様な気がするんだよね」


「俺は藤堂組の息子だぞ 俺が倒されたらおしまいだろうが・・・」


「そうだね そうなんだけどさぁ~ 何かそう言うの忘れてたよ」


俺は両手を後ろについて足を広げてそう言った



(つづく)


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