俺の知らなかった世界

暁エネル

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夏祭り④

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俺はお好み焼きと焼きそばを食べ終えて


世話係さんが買って来てくれた飲み物を飲んでいた


屋台の灯りが眩しく違う世界に見えていた



(本当にここだけ取り残された様な静けさなんだよなぁ~)



「忍さんはもういいんですか?」


忍は世話係さんにうなづいていた


「ではあとはあっしがいただいちゃいますね」


俺は立ち上がって忍にこう言った


「それじゃ~忍 俺も食べ終わったからヨーヨーでもするか・・・」


忍は俺の方を向いて小さくうなづいた


俺と忍は釣り上げたヨーヨーを持って 


龍と世話係さんとは少し離れてヨーヨーをする事にした





「忍 この輪っかを指に通して・・・」


忍の小さな指が俺に向けられた



(マジで小さい指だ・・・ カワイイ・・・)



俺は忍の小さな指に輪っかを通した


俺はパンパンとヨーヨーを動かすと辺りに響き渡った


忍が真似をしてヨーヨーを離した


けれどもヨーヨーはそのまま忍にぶら下がったままになってしまった


「忍 ほしい」


俺はそう言って忍の後ろへと回り 


忍に覆いかぶさる様に


忍の手を一緒に持ちヨーヨーを動かした


「そうそうヨーヨーを手に当てるんだ」


何回か一緒にやり俺は忍から離れた


俺は忍の前でまたパンパンとヨーヨーを動かした


忍のヨーヨーは忍の手には当たってはくれず


忍はヨーヨーに振り回されている様でとてもかわいかった


「忍 もう少し・・・ ほしいよ忍・・・ あともうちょっと・・・」


忍は諦める事なくヨーヨーを動かしていた



(スゲーな忍・・・ 手に当たらないのもカワイイけどめげないんだよなぁ~ 普通このくらいの子って出来ないと すぐに諦めちゃうのになぁ~)



それでも少しずつ忍の手にも当たる様になってきた





「悪かったなぁ~」


俺はお好み焼きを食べ終わり世話係にこう言った


「若があっしなんかに謝る事は何もありやせんよ」


「俺をまだ家の問題に関わらない様にしてくれて・・・」


「カシラのお考えはあっしにはわかりませんが 若はまだ学生ですし 学生の時でしか出来ない経験があります あっしは若にその今しかできない経験をしていただきたいとそう思っただけですよ・・・」


「お父さんにお前にお礼を言っておけと・・・」


「そんなお礼だなんて・・・ 忍さんもまだお小さいですし あっしが出来る事でしたらいくらでもしますよ」


「ありがとうな」


「若・・・」


俺は立ち上がった 


これ以上世話係と一緒に居る気恥ずかしさに耐えられそうになかったからだ


「真彦の所へ行って来る」


「へい」


俺はヨーヨーを持って真彦と忍の所へ





「えっ忍スゲー ほらまた・・・」


何度か忍の手に当たり 忍の笑顔が俺に向けられていた



(ヤベ~忍が嬉しそうだ・・・)



俺も忍につられて笑っていた


「真彦が褒め上手だからじゃねぇ~の」


そう言いながら龍はヨーヨーをパンパン鳴らしやって来た


龍のヨーヨーが辺りに響いていた


「なぁ~龍 忍って負けず嫌いなの?」


「まぁ~俺と渚の弟だからなぁ~」


「忍 もうコツを掴んだみたいなんだ・・・」


「そうか 教えてくれたヤツがうまく乗せたからじゃ~ねぇ~の?」


「忍って諦めないんだよなぁ~ こんなに小さいのにスゲーって思った・・・」


「それは俺の弟だからなぁ~」


「龍はそればっかだなぁ~」


俺はそう言ってヨーヨーをパンパンと動かし 辺りにヨーヨーを響かせた





「あ~ここに居た」


渚の大きな声が聞こえ 俺と龍は声のする方へと向いた


渚は浴衣姿で真っ直ぐ俺と龍の方へと進んで来た


「あっみんなもヨーヨーやったんだぁ~」


「渚 友達ほっといていいのかよ・・・」


渚の友達2人は離れた所でこっちを見ていた


「もう帰るところ 龍達見つけたから・・・」


「忍 ヨーヨー少し出来る様になったんだよ」


「えっホント凄いじゃん忍・・・」


忍は嬉しそうに笑っていた


「やってみてよ忍」


「渚 友達待ってんだろう・・・」


「待って龍 忍のヨーヨー見てから・・・」


忍はヨーヨーを動かし2回くらい手に当てた


「えっ凄いじゃん忍・・・ 今練習して出来る様になったの?」


「だろう・・・ でもちょっと教えただけなんだ のみ込みが早いし忍は努力家だよ」


「真彦が教えたの?」


「そう俺が・・・」


「龍は何やってたの?」


「俺は忍の残した焼きそば食べてた」


「あっ渚も食べたよ めっちゃ美味しかったよね あと・・・」


「お嬢・・・ そろそろ・・・」


渚の世話係が大きな声でそう言った


「あっ今行く・・・」


「あとお好み焼きと焼きとうもろこし美味しかったよ じゃ~先に帰るね」


そう言って渚は友達の所へ


「言うだけ言って帰って行きやがった・・・」


「俺達を見つけて嬉しかったんだろう・・・ 焼きとうもろこしうまそうだなぁ~」


「今 焼きそばとお好み焼きを食べたばっかりだろう・・・」


「そうだけど・・・ 聞いたら食べたくなるじゃん」


「それは真彦だけだ・・・」


「えっ俺はまだ食えるけど・・・」


「真彦はそれ以上デカくなるなよな・・・」


「龍は逆にもう少し食べた方がいい・・・」


「おおきなお世話だ・・・ 俺はこれから伸びんだよ」


「そうだなぁ~ もう少し背も欲しいなぁ~」


「ふざけんな 真彦は伸びすぎなんだよ それ以上伸びてみろ 俺が縮めてやるからなぁ~」


「やれるものならやってみろよ」


龍がふと忍の方へと視線を向けた


「ほらみろ 真彦のセイで忍が不安そうな顔してるぞ・・・」


「えっ」


俺は忍に視線を向けた


忍は今にも泣き出しそうな顔をしていた


「忍 どうした?」


俺は思わずしゃがんで忍の顔と龍の顔を交互に見た



(えっ 何で忍がこんな顔してる? ヤベ~俺が忍に何かしたのか?)



「俺と真彦がケンカしてると思ったんだろうなぁ~ 渚と言い合いになった時もよく忍はこう言う顔をするんだ」


「えっ忍が? それで何で?」


俺には訳がわからずとりあえず忍を抱っこした


「忍・・・ 俺と龍はケンカなんかしてないよ ただ話をしてただけ・・・」


俺は出来るだけ優しくそう言った


「仲良し?」


忍の目に涙が溢れていた


「そう仲良し仲良し・・・ ほら・・・」


俺は忍を抱っこしたまま龍の隣へピタリと並んだ


忍は甚平の袖で涙をふいていた


「龍」


俺は龍に救いを求めていた


「俺と渚は慣れっこだけど 真彦も忍の前では気を付けるんだなぁ~」


「あぁ~わかったでも何て事だ・・・ 楽しい祭りのはずが・・・ 忍の涙を見るとかさぁ~」


「真彦 そんなに落ち込むな・・・ 忍はすぐに泣くんだ・・・」


「でも俺は初めてなんだよ・・・」



(ヤベ~忍はスゲー繊細なんだよなぁ~ こんな小さな子に嫌な思いをさせてしまった・・・ ダメだ・・・ よ~しこっからは忍の笑顔しかみねぇ~様に忍の喜びそうな物を見つけるぞ・・・)



俺は忍の顔を見ながらそう思っていた





「若 どうされましたか?」


そう言って世話係さんが俺達の方へ


「あっしはゴミを片付けて参りました」


「そうか」


世話係さんは俺と抱っこしている忍に視線を向けた


「あっすいません 忍が泣いてしまって・・・」


「どこかぶつけてしまいましたか?」


「いえ」


「俺と真彦が話をしてたのを ケンカしてると勘違いしただけだ」


「そうでしたか・・・ 忍さんはびっくりしただけなんですね」


「俺がもう少し忍の事を考えてしゃべれば良かったんです」


「いえ ケガとかではなかったんで良かったです 忍さんも楽しくヨーヨーが出来たご様子だった様にお見受けしておりましたが・・・」


「そうなんですよ 忍がヨーヨー出来る様になったんですよ なぁ~忍・・・」


俺は忍のご機嫌を取ろうと必死だった


「そうなんですね 忍さんあとであっしにも見せて下さいね」


忍は嬉しそうに笑っていた



(良かった・・・ 忍が笑顔になった・・・)



「若 真彦さんそろそろ次に参りませんか?」


「そうだな」


「では参りましょう」


世話係さんを先頭に俺達は屋台へとまた戻る事になった


(つづく)



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