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Episode-5
最終話
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突然の雨で狂い咲いた花たちは、太陽光を浴びて伸びやかに天を仰ぐ。
――――アミエルは天国に、そしてきっと自分は地獄に堕ちることだろう。
彼女の夢を叶えること、それは彼女を殺す事と同じことなのだから。
ベルネは飽きれたように溜め息を吐いてアミエルの隣に横たわった。
「これは夢かしら」
「ううん、夢なんかじゃないわ」
「……手を握ってもいい?」
ベルネは返事をするように、アミエルの指と自身の指を絡ませた。
安心したのか、アミエルがまどろむ。
「やっぱり信じられない……。このお花の匂いも、風も、太陽も昔のまんまだもの」
「そうね……」
「夢や写真集と同じ、私がずっとずっと見たかった、……景色だもの……」
「うん、本当ね……」
「ありがとうベルネ、愛してるわ」
指先に温度が滲む。
誰もいない花畑の中心で、青い空を見つめる。
多分、此処が幸せの終着点だ。これ以上の幸せは後にも先にも無いだろう。
すうっと息を吸い込み、アミエルが一瞬微笑んだ。
透けたように白い肌に、涙で濡れた長い睫毛。薄桃色の唇や、赤子のように柔らかな髪。
貴方を愛している。
その言葉は、伝えられる事なく静かに消えた。
もう一度手を握ってみる。ラピスラズリの指輪が、光に照らされきらりと光った。
ベルネは眠りに落ちる彼女の横顔を見つめながら、この時間が続けばいいのにと願うばかりだった。
――――アミエルは天国に、そしてきっと自分は地獄に堕ちることだろう。
彼女の夢を叶えること、それは彼女を殺す事と同じことなのだから。
ベルネは飽きれたように溜め息を吐いてアミエルの隣に横たわった。
「これは夢かしら」
「ううん、夢なんかじゃないわ」
「……手を握ってもいい?」
ベルネは返事をするように、アミエルの指と自身の指を絡ませた。
安心したのか、アミエルがまどろむ。
「やっぱり信じられない……。このお花の匂いも、風も、太陽も昔のまんまだもの」
「そうね……」
「夢や写真集と同じ、私がずっとずっと見たかった、……景色だもの……」
「うん、本当ね……」
「ありがとうベルネ、愛してるわ」
指先に温度が滲む。
誰もいない花畑の中心で、青い空を見つめる。
多分、此処が幸せの終着点だ。これ以上の幸せは後にも先にも無いだろう。
すうっと息を吸い込み、アミエルが一瞬微笑んだ。
透けたように白い肌に、涙で濡れた長い睫毛。薄桃色の唇や、赤子のように柔らかな髪。
貴方を愛している。
その言葉は、伝えられる事なく静かに消えた。
もう一度手を握ってみる。ラピスラズリの指輪が、光に照らされきらりと光った。
ベルネは眠りに落ちる彼女の横顔を見つめながら、この時間が続けばいいのにと願うばかりだった。
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