15 / 88
終わりは春を連れ立って
2-4
しおりを挟む
廊下にある掛け時計を見遣る。授業が終わるまで、あと5分だ。柱に凭れ掛かり、穂希は終鈴が鳴るのを待った。
――――自分でも、不思議だった。
明らかな異質さを白眼視されることを承知した上で、この足をまだ一度も踏み入れた事のない教室の前まで運んだのだ。
佳澄椿と話をする、たったそれだけの為に。
不可解な欲求に戸惑いながらも、穂希の中に引き返すという選択肢はなかった。
教師の号令の後、チャイムが響く。
全ての授業を終えた生徒たちは早々と帰り支度をし、教室を後にする。
そして、大半が穂希の姿にギョッと驚き、小走りで目の前を通り過ぎていった。
うわ! やばくない? 誰? あれ見て。あんなの初めて見た。キモイ。
心無い声の数々が、頭の中を交差する。怒りや苛立ちなどは、一切感じない。ただひたすらに、申し訳なさが募る。
興味深そうに瞥見する者。何度か振り向く者。友人と共に囁き合う者。
それらの視線を浴びながら、何とか顔を上げていた穂希の視界に、やたらと姿勢の良い少年の姿が映った。
「椿!」
椿は立ち止まり、瞠目する。クラスメイトの耳目を気にしつつも、足早に歩いてくる。
「穂希くん、どうし……」
顔から、柔らかな相が消えた。
それは明らかに、血の滲んだ包帯を見た瞬間のことであった。
――――予想が、確信に変わった。
「椿、話したいことがあるんだ。保健室で待ってるから一緒に帰らない?」
訊ねると、彼は紅潮した顔を隠すように目を逸らし、頷いた。
――――自分でも、不思議だった。
明らかな異質さを白眼視されることを承知した上で、この足をまだ一度も踏み入れた事のない教室の前まで運んだのだ。
佳澄椿と話をする、たったそれだけの為に。
不可解な欲求に戸惑いながらも、穂希の中に引き返すという選択肢はなかった。
教師の号令の後、チャイムが響く。
全ての授業を終えた生徒たちは早々と帰り支度をし、教室を後にする。
そして、大半が穂希の姿にギョッと驚き、小走りで目の前を通り過ぎていった。
うわ! やばくない? 誰? あれ見て。あんなの初めて見た。キモイ。
心無い声の数々が、頭の中を交差する。怒りや苛立ちなどは、一切感じない。ただひたすらに、申し訳なさが募る。
興味深そうに瞥見する者。何度か振り向く者。友人と共に囁き合う者。
それらの視線を浴びながら、何とか顔を上げていた穂希の視界に、やたらと姿勢の良い少年の姿が映った。
「椿!」
椿は立ち止まり、瞠目する。クラスメイトの耳目を気にしつつも、足早に歩いてくる。
「穂希くん、どうし……」
顔から、柔らかな相が消えた。
それは明らかに、血の滲んだ包帯を見た瞬間のことであった。
――――予想が、確信に変わった。
「椿、話したいことがあるんだ。保健室で待ってるから一緒に帰らない?」
訊ねると、彼は紅潮した顔を隠すように目を逸らし、頷いた。
30
あなたにおすすめの小説
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】
まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。
王様のナミダ
白雨あめ
BL
全寮制男子高校、箱夢学園。 そこで風紀副委員長を努める桜庭篠は、ある夜久しぶりの夢をみた。
端正に整った顔を歪め、大粒の涙を流す綺麗な男。俺様生徒会長が泣いていたのだ。
驚くまもなく、学園に転入してくる王道転校生。彼のはた迷惑な行動から、俺様会長と風紀副委員長の距離は近づいていく。
※会長受けです。
駄文でも大丈夫と言ってくれる方、楽しんでいただけたら嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる