蒼い春も、その先も、

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春意の気配に身を委ねて

11-2

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 椿の持つ傘に入り、ゆっくりと歩く。一歩踏み出す度に、肩が触れ合った。

「千冬さん、良かったの?」
「大丈夫だよ。千冬は家の方向が同じってだけで、僕と一緒に帰りたいわけじゃないから」

 椿と千冬は、本当にただの幼馴染でしかないらしい。男女と言えど、二人の間に特別な感情は無い事を確信し、些か安堵する。

「……椿、忙しかった?」
「いつもと一緒だよ」
「そう、最近会いに来なかったから心配してたんだよ」

 自然体で抑揚のない声に、椿はハッと顔色を変えた。喜んでいるような、悲しんでいるような、どちらともつかない顔だ。
 彼は俯き、さらに歩速を緩めた。

「……やっぱり駄目だって思って」
「駄目?」
「あんなこと良くないって思ったら、会うのも躊躇っちゃって……でも……」

 気が付けば、互いに立ち止まっていた。雨が傘を叩き、椿の声が小さく聞こえる。
 敢えて返事はせずに目線を送ると、椿も切なげな瞳を向けた。

「……本当は会いたくて仕方なかった」

 視線が甘く絡み合う。雑音は雨音で掻き消され、傘の中という空間が、二人きりの世界に変わる。

 椿は僅かに身を寄せると、『俺も』と開きかけた唇にキスをした。
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