蒼い春も、その先も、

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春昼の愚かな二人

12-2

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 黙考し、明らかに答えを待っている千冬を見遣る。

 彼女を見ている限り、知りたがりなだけで、言い触らす心配は無さそうだ。

「うん、付き合ってる」
「うっそ!」

 声を張り上げた千冬がとっさに口を塞ぐ。
 回答と反応の温度差に、穂希は違和感を抱いた。

「……そんなに変なことかな」
「いや、ちょっとびっくりして……ってか穂希くん冷静すぎ! 他人事みたいに喋るじゃん。普通もっと焦るでしょ、男同士だし」
「あー、あんま気にしてなかった」

 告白された当初、穂希には同性だとか異性だとか言う話よりも、もっと気にするべき事があったのだ。
 千冬に言われてやっと、“同性間での恋愛”が偏見の対象であることを思い出す。

「でも何で? どっちから告ったの?」
「えーと……」

 椿からだと素直に答えてしまえば、千冬は当時の状況や告白のフレーズをしつこく尋ねてくることだろう。
 椿の為にもそれだけは避けなければいけない。

「……それは秘密」
「えーっ」

 やたらとフレンドリーな彼女は、再び周囲を確認して耳打ちする。

「え、エッチした?」
「……してない」
「そっかー、椿らしいなぁ」

 つまんないの、と言いたげな顔だ。
 瞭然たる性への興味に、若干の呆れの色を示す。

 他人の性事情を知りたいのか、話題の中心人物が幼馴染である椿だからなのか、はたまた千冬の性に関する関心が強いだけなのか定かではないが、いずれにしてもそういった感情を持ち合わせていない穂希には彼女の気持ちが理解できなかった。 

「恋人ってそんなもんなの?」
「そんなもんって?」
「何ていうか……俺、付き合っててもその……何するか分かんなくて」

 千冬は存外真面目に考えている。
 情事への関心が絶えない彼女なら、それすらも楽しいのかもしれないが。

「やっぱキスとかデートとかでしょー?」

 まるで模範解答だ。
 しかし彼女の有り触れた発言も、穂希にとってはどこか新鮮だった。

「でもさ、そういうことって相手のこと好きなら自然としたくなるものじゃない?」
「好きなら、か……」

 何の気なしにぼんやりと呟く。千冬もまた、穂希の事を理解出来ないのか困惑を滲ませていた。

「穂希くん変なのー。付き合ってる感ないね」

 千冬の言うとおりだ。
 それでも、椿がただの友人ではない事は明白だ。

 椿との異質な関係の重要性は、きっと自分たちにしか分からないのだろう。
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