蒼い春も、その先も、

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冷たい春雷

16-1

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「忙しくなるから、暫く来れないかも」

 一言謝罪した後、椿は眉を下げてそう言った。本当に多忙なようで、今日は家に上がろうとさえしない。

「……そう、分かった。無理しないでね」
「ありがとう。穂希君もね」

 寂しそうな笑顔で手を振って、彼は背を向ける。

 長期休暇である夏休みは学校もない為、本格的に会えなくなる。『寂しい』という言葉をぐっと飲み込み、穂希もその背中を見送った。

 それにしても、椿は律儀だ。たった一言を伝えに、わざわざ会いに来たのだから。

 同時に、とあることに気付く。また連絡先を聞きそびれた。
 追い駆けようとして右足を踏み出すが、すぐに立ち止まる。

 多分、今椿との連絡手段を得たら、何度でも声を聞きたくなってしまう。所謂多忙な彼の生活に、支障を来たす可能性があるということだ。そんなことは、あってはならない。
 学校が始まるまでの二か月の間、我慢するだけだ。

 穂希は気持ちを抑え込み部屋に戻ると、心の中で椿にそっとエールを送った。
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