殺人事件ライラック (ブリキの花嫁と針金の蝶々)

尾崎諒馬

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ああ閉幕――カーテン・フォール

尾崎凌駕からのメール 人として……

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   尾崎凌駕からのメール 人として……
   
 ■■さん、人としてどうか? ですか……
 このまま退場するつもりでしたが、そこまで言われれば黙ってはおれませんので、メールいたします。
 是非、Web小説「殺人事件ライラック~」に採用してください。
 まず、

 

 
 この創作漢字に感じた違和感ですが……
 
 国構えの中の呂はいいとして、合の方です。部首でいえば、人屋根の部分――作中で尾崎諒馬=鹿野信吾が、
 
 上が尖った三角屋根
 
 そう言った部分……
 
 呂は気管と食道を表しているが、合は頸椎――つまり首の骨を表している。
 試しに首の後ろを手で押してみると、頸椎、つまり骨の感触があるでしょう? 少し尖った感触がするでしょう? それが合の人屋根の部分――上が尖った三角屋根ですよ。
 私は佐藤良美――旧姓尾崎良美を殺した。心臓を狙って胸に牛刀を差し込んだ。その際に骨を避けて――
 
 私は医者だ。胸骨を避け、第5と第6肋骨の隙間に……
 
 咄嗟の判断だったがそうしたのだ。
 
 それでふと思ったんですよ。斬首の際、刃が骨に当たると大変だろうと、ね。
 斬首の切断面において、上が尖った三角屋根がハッキリするのは頸椎そのものを切断した場合だろうと――
 しかし、それはなかなか大変だと思ったのですよ。
 スッパリと労力少なく斬首するなら、頸椎と頸椎の隙間――第3と第4の隙間なのか? 第4と第5なのか? それはわかりませんが、とにかく頸椎と頸椎の隙間に刃が入れば労力少なく斬首できるはずでしょう?
 しかし、そうすると、切断面に「上が尖った三角屋根」はハッキリとは現れないのではないか?
 
 そう思っただけのことですよ。
 
 それが何か変だな? それの正体でした。
 
 しかし、私は実際の切断面を見たわけではないので何とも言えない。
 尾崎睦美会長の切断面は見て、あれには確かにハッキリと上が尖った三角屋根が確認できましたが、あれは生成AIが作り出した映像でしょう?
 実際の切断面がどうなのか? はよくわからない。
 
 これは「ちょっと変だな?」と思った程度のことで左程気にすることではないんじゃないですか?
 
 この程度のことで、
 
 人としてどうか?
 
 そう言われるのは心外なので、このメールで説明させてもらいますよ。
 
 そして――
 
 私が追加した挑戦状の答えか……
 
 すまないが、これについてはハッキリとは書けない。
 ただ、人としてどうか? とは言われたくはないので、こういうことは考えられないか? とある可能性を上げることで勘弁してほしい。
 
 第一部 月は笑うが……
 
  八章 に
 
 ふと、先ほど見た近藤の寝室の様子が頭に浮かんできた。部屋中央にダブルベッドと入り口近くに机。そして奥にはクローゼットらしき両開きの扉があった。
 ――そこにあいつが隠れていたのか?
 
 そう尾崎諒馬=鹿野信吾が書いている。
 実際に彼は確認してはいないが、本当にそこに誰か隠れていたのかもしれない。
 
 殺し屋首猛夫は外にいたはずだ。
 
 すると、もう一人の……殺し屋?
 
 母屋の二階で勝男は良美ちゃんを殺して首を撥ねている。机の上のクーラー・ボックスの中には良美の生首が入っている。
 勝男は良美ちゃんの生首を半透明のポリ袋に入れて、離れに持っていく準備をする。実際必要なのは良美ではなく良美ちゃんの生首のはずだ。
 それでクーラー・ボックスの良美の生首はベッドのうつ伏せの良美ちゃんの死体の首の部分に置く。勝男はそうしたに違いない。それが自然だ。
 おもちゃの生首はチープすぎて使えない。
 首無し死体がそのままで、首がない状態では誰かに見られた場合に驚かれてしまう。死体はうつ伏せだ。顔はよくは見えないわけだ。斬首した良美ちゃんの首の代わりにクーラー・ボックスの良美の生首をうつ伏せに置いておけば、パッと見は良美ちゃんが寝ているようにしかみえないだろう。実際、小説の中で水沼は「良美ちゃんは寝ている」そう思っている。
 
 しかし、勝男がつい疲れてウトウトした時に……
 
 クローゼットに隠れていた誰かが……
 
 そーっと外に出て来て……
 
 ベッドの上の生首
  
 うつ伏せの状態で顔が見えないその生首と……
 
 ポリ袋の中の生首
 
 ポリ袋が半透明で顔が見えないその生首と……
 
 その二つの生首を……
 
 それが誰の生首なのか確認したいと思って……
 
 うつ伏せの生首を表を向かせ……
 
 ポリ袋からもう一つの生首を取り出して……
 
 二つの生首を並べて確認する。
 
 特に耳の形を気にして……
 
 しかし、二つの生首がふと転がってしまい……
 
 ベッドから転がり落ちて……
 
 どっちがどっちだかわからなくなって……
 
 必死に確認してもどっちがポリ袋から取り出した生首なのか? わからなくなって……
 
 仕方なく、適当に片方の生首をポリ袋に戻したのかもしれない。
 
 それが良美の生首だったのかもしれない。
 
 勝男は良美ちゃんの生首をポリ袋に入れたのだが、そういう風に誰かが偶然にも生首を入れ替えてしまった。
 
 確率は1/2で……
 
 ただそうなっただけ……
 
 とにかく、その誰かは良美と良美ちゃんの顔の区別ができなかった……
 
 ただ、それだけのことなのかもしれない。
 
 ああ、確かに人としてどうか?
 
 そうかもしれない……
 
 しかし、これは、ひょっとしたら、の話です。
 
 その誰かはその後、どうしたか? 
 
 ウトウトしている勝男を起こさないようにそっと部屋から抜け出して……
 
 いや、その後はわからない。
 
 ここまで書いたことはあくまで仮説であって……
 
 事実とも断定できないし、名探偵の推理でもない。
 
 しかし、私が失踪するに十分な仮説かもしれません。
 
               尾崎凌駕


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