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第3章 絶海の孤島ダンジョン編
EX17 商人と秘書と魔王の話
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「エド様」
「なんですか、クーネア」
チェインハルト商会の会長であるエドとその秘書クーネア。
二人がいるのは巨大な空間だった。
大陸南部の商業都市群の中心都市フィオナティアーナ。
その郊外に商会が所有する大規模な石造基地。
その地下に作られた実験施設だった。
数日前までバリガンガルドにいた二人がどうしてここにいるのか……。
部下の一部はそんな疑問を抱いていた。
が、詳しく知りたいとは思わない。
この二人には、なにか得体の知れない秘密があると分かっているのだ。
有能で、給金払いがいい。
部下にとってはそれで充分だった。
そんな部下たちと挨拶を交わしつつ、巨大地下空間の階段を下っている途中。
クーネアの問いかけだった。
「絶海の孤島ダンジョンを探索する冒険者部隊に、エンシェント・ドラゴンの復活を知らせなくてよかったのですか?」
「ああ、そのことか」
エドは軽く答えた。
絶海の孤島ダンジョンの探索とゴーレムの発掘。
彼はヴォルフォニア帝国の騎士団長ガイアンにそう依頼した。
そしてその話し合いはバリガンガルドで行われた。
当然ガイアンは、ドラゴンがあの街を襲ったことも知っている。
しかし、エドはガイアンに嘘の報告をしていた。
ドラゴンは「何処へともしれず飛び去った」と。
当然、ガイアンから命令を受けた冒険者部隊にもドラゴンの行き先は知らされない。
彼らは自分たちが向かうダンジョンにドラゴンがいることを知らないのだ。
ドラゴンがいる、などと聞けば、誰も探索に参加しなくなるだろう。
危険度が数桁跳ね上がるからだ。
だからエドは知らせなかったのだろうか。
探索を中止にさせないために。
クーネアはそう思ったが、どうやら違うようだった。
エドは言う。
「あのドラゴンなら、それほど危険はないと判断したからです。まあ何人か死人は出るかもしれませんが、その程度でしょう」
「そうなのですか?」
クーネアは納得できない。
エンシェント・ドラゴンはダンジョンにいる普通のモンスターとはわけが違う。
たいてい「戦う」ではなく「逃げる」が真っ先に選択される災害のような存在。
だが……。
「それは、あのエルフの姫騎士をさらっていったのと関係があるのですか?」
フリエルノーラ国の姫クララ。
ドラゴンは彼女を捕らえ、連れ去った。
「そうですね。きっと、リビングアーマーの彼が、その辺をいい感じにしてくれると思います」
リビタンとかいう奇妙なリビングアーマー。
エドは、彼が自分たちの目的にとって重要な意味を持つかもしれないと言っている。
クーネアにはまだよく理解できない。
冒険者時代からエドと共にいるクーネア。
しかし、いまだに彼の考えていることは謎だらけだった。
この巨大施設もそうだ――
「おお、だいぶ完成に近づいてきましたね」
「ええ……」
階段を降り切った二人の視界には、地下空間の全景が広がった。
そこには空間の半分ほどを埋め尽くす『なにか』があった。
周囲を大量の足場が埋め尽くしている。
ローブを身に纏った魔法使いがそこで作業をしている。
足場に囲まれた中核には、石のような金属のような奇妙な構造物。
そして、それとつながった、巨大な肉塊が横たわっていた。
肉塊は、異形の生物だった。
ドラゴンのようにも見えるが、鱗がない。
海生生物のような肌をしているが、それにしては手足がある。
否、手足はあちこちから無数に生えている。
地上の生物でも、こんな形のものは存在しないだろう。
この世界の、どこにいる生物とも異なる姿をした存在。
ゆっくりと呼吸をしているらしい『それ』に向けて、エドは呼びかける。
「ご機嫌いかがですか、魔王陛下」
「なんですか、クーネア」
チェインハルト商会の会長であるエドとその秘書クーネア。
二人がいるのは巨大な空間だった。
大陸南部の商業都市群の中心都市フィオナティアーナ。
その郊外に商会が所有する大規模な石造基地。
その地下に作られた実験施設だった。
数日前までバリガンガルドにいた二人がどうしてここにいるのか……。
部下の一部はそんな疑問を抱いていた。
が、詳しく知りたいとは思わない。
この二人には、なにか得体の知れない秘密があると分かっているのだ。
有能で、給金払いがいい。
部下にとってはそれで充分だった。
そんな部下たちと挨拶を交わしつつ、巨大地下空間の階段を下っている途中。
クーネアの問いかけだった。
「絶海の孤島ダンジョンを探索する冒険者部隊に、エンシェント・ドラゴンの復活を知らせなくてよかったのですか?」
「ああ、そのことか」
エドは軽く答えた。
絶海の孤島ダンジョンの探索とゴーレムの発掘。
彼はヴォルフォニア帝国の騎士団長ガイアンにそう依頼した。
そしてその話し合いはバリガンガルドで行われた。
当然ガイアンは、ドラゴンがあの街を襲ったことも知っている。
しかし、エドはガイアンに嘘の報告をしていた。
ドラゴンは「何処へともしれず飛び去った」と。
当然、ガイアンから命令を受けた冒険者部隊にもドラゴンの行き先は知らされない。
彼らは自分たちが向かうダンジョンにドラゴンがいることを知らないのだ。
ドラゴンがいる、などと聞けば、誰も探索に参加しなくなるだろう。
危険度が数桁跳ね上がるからだ。
だからエドは知らせなかったのだろうか。
探索を中止にさせないために。
クーネアはそう思ったが、どうやら違うようだった。
エドは言う。
「あのドラゴンなら、それほど危険はないと判断したからです。まあ何人か死人は出るかもしれませんが、その程度でしょう」
「そうなのですか?」
クーネアは納得できない。
エンシェント・ドラゴンはダンジョンにいる普通のモンスターとはわけが違う。
たいてい「戦う」ではなく「逃げる」が真っ先に選択される災害のような存在。
だが……。
「それは、あのエルフの姫騎士をさらっていったのと関係があるのですか?」
フリエルノーラ国の姫クララ。
ドラゴンは彼女を捕らえ、連れ去った。
「そうですね。きっと、リビングアーマーの彼が、その辺をいい感じにしてくれると思います」
リビタンとかいう奇妙なリビングアーマー。
エドは、彼が自分たちの目的にとって重要な意味を持つかもしれないと言っている。
クーネアにはまだよく理解できない。
冒険者時代からエドと共にいるクーネア。
しかし、いまだに彼の考えていることは謎だらけだった。
この巨大施設もそうだ――
「おお、だいぶ完成に近づいてきましたね」
「ええ……」
階段を降り切った二人の視界には、地下空間の全景が広がった。
そこには空間の半分ほどを埋め尽くす『なにか』があった。
周囲を大量の足場が埋め尽くしている。
ローブを身に纏った魔法使いがそこで作業をしている。
足場に囲まれた中核には、石のような金属のような奇妙な構造物。
そして、それとつながった、巨大な肉塊が横たわっていた。
肉塊は、異形の生物だった。
ドラゴンのようにも見えるが、鱗がない。
海生生物のような肌をしているが、それにしては手足がある。
否、手足はあちこちから無数に生えている。
地上の生物でも、こんな形のものは存在しないだろう。
この世界の、どこにいる生物とも異なる姿をした存在。
ゆっくりと呼吸をしているらしい『それ』に向けて、エドは呼びかける。
「ご機嫌いかがですか、魔王陛下」
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