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児童誘拐殺人事件 篇
エデンの支配者
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エデンとジェイルタウンには高額な賞金首やお尋ね者が多い。
デュランの首にも莫大な賞金かかけられており、見ず知らずの賞金稼ぎに命を狙われることもしばしばある。データベース上では国際的な特Aクラスの戦犯者。及び最重要危険人物の一人としてデュランは国際指名手配登録されている。その懸賞額も破格の二千万ドル。しかも、全額米国ドルで支払われるというのだから何とも景気の良い話だ。
そして、この街にはもう一人。デュラン以上に危険視されている特Aクラスの極悪人がいる。
此処こそ、まさしくエデンの中心。デュランは目前に聳そびえる巨大なビルを見上げた。これこそ、エデンの中心にして最悪の象徴。この街を取り仕切るマフィアの本拠地。別名、〝虎城〟とも呼ばれる虎皇会東欧支部の事務所だ。
「おい、ちびすけ。こっち来い」
デュランはアイラを片手で持ち上げると、そのまま抱きかかえた。
「こっから先はちょいとスリリングだ。少しの間、目と耳をしっかり塞いでおけ」
それだけ言うと、デュランは銃を構えてこちらへとやってきた黒服の男たちへ向かって駆け出した。
デュランの腕の中でアイラは言いつけ通り目を瞑り、耳を塞ぐ。そこはまるでちょっとしたアトラクションのよう。上下左右に激しく揺れ動き、時折り感じる浮遊感はまるでジェットコースター。決定的に違う点があるとすれば、耳を塞いでも聞こえる怒声と銃声。鈍い打撃音とデュランを通して僅かに感じる人体を破壊している嫌な感触。今現在、デュランはかなりの人数と抗戦しており、階段を駆け上がっているらしいということだけはわかった。
「おーい、邪魔すんぞー」
ビルの最上階にある仰々しい扉を今朝のウィリアムの部屋同様に無作法にも足で蹴破りながら入室したデュランは、いつぞやの酒場と同じように無数の銃口と、強面の大男に迎えられた。
「誰かと思えば貴様か。どうやら礼儀以前にノックの仕方も知らんようだな」
真っ先に言葉を発した男の名はジェイク・ハワード。身長は百九十を超え、がっしりとした体躯と鋭い眼光が醸し出す威厳と風格は残虐非道なマフィアというよりも歴戦の勇士を思わせる。彼は虎皇会東欧支部のナンバーツーであり、ボスの護衛を任されている。
「仕方ナイネ。デュランノ旦那、行儀悪イカラ。私タチマフィアモビックリヨ」
デュランの背後からスッと現れたのは、カタコトで喋る黒装束の薄気味悪い女。凶星と名乗る虎皇会専属の殺し屋だ。古来より暗殺や呪術を生業としてきた一族の末裔で、虎皇会に飼われてからは主に虎皇会に刃向かう輩の掃除を任されている。
「ちっ、どいつもこいつも朝から同じことを言いやがる。面白くねぇ」
デュランは抱えていたアイラを下ろして両手を上げる。アイラを連れたままで背後と正面をこの二人に立たれたら、流石のデュランでも分が悪い。そもそも、デュランは元より争う為にここへ来たわけではない。
「今日は頼みがあって来た」
デュランの一言に、ジェイクは溜息交じりに右手を掲げた。それを合図に構成員たちは一様に銃を納める。侵入者、もとい来客があのデュランだとわかった以上、無駄な争いは虎皇会も避けたいところ。無益で甚大な被害が出るだけだ。この場で一悶着起こすということが一銭の得にもならないとは皆、重々承知していた。
「あらあら。あなたがお願いごとなんて、珍しいこともあるものねぇ」
色っぽい声の主は、最高級のプレジデントデスクに頬杖をついてニコニコと微笑んでいた。
デュランの首にも莫大な賞金かかけられており、見ず知らずの賞金稼ぎに命を狙われることもしばしばある。データベース上では国際的な特Aクラスの戦犯者。及び最重要危険人物の一人としてデュランは国際指名手配登録されている。その懸賞額も破格の二千万ドル。しかも、全額米国ドルで支払われるというのだから何とも景気の良い話だ。
そして、この街にはもう一人。デュラン以上に危険視されている特Aクラスの極悪人がいる。
此処こそ、まさしくエデンの中心。デュランは目前に聳そびえる巨大なビルを見上げた。これこそ、エデンの中心にして最悪の象徴。この街を取り仕切るマフィアの本拠地。別名、〝虎城〟とも呼ばれる虎皇会東欧支部の事務所だ。
「おい、ちびすけ。こっち来い」
デュランはアイラを片手で持ち上げると、そのまま抱きかかえた。
「こっから先はちょいとスリリングだ。少しの間、目と耳をしっかり塞いでおけ」
それだけ言うと、デュランは銃を構えてこちらへとやってきた黒服の男たちへ向かって駆け出した。
デュランの腕の中でアイラは言いつけ通り目を瞑り、耳を塞ぐ。そこはまるでちょっとしたアトラクションのよう。上下左右に激しく揺れ動き、時折り感じる浮遊感はまるでジェットコースター。決定的に違う点があるとすれば、耳を塞いでも聞こえる怒声と銃声。鈍い打撃音とデュランを通して僅かに感じる人体を破壊している嫌な感触。今現在、デュランはかなりの人数と抗戦しており、階段を駆け上がっているらしいということだけはわかった。
「おーい、邪魔すんぞー」
ビルの最上階にある仰々しい扉を今朝のウィリアムの部屋同様に無作法にも足で蹴破りながら入室したデュランは、いつぞやの酒場と同じように無数の銃口と、強面の大男に迎えられた。
「誰かと思えば貴様か。どうやら礼儀以前にノックの仕方も知らんようだな」
真っ先に言葉を発した男の名はジェイク・ハワード。身長は百九十を超え、がっしりとした体躯と鋭い眼光が醸し出す威厳と風格は残虐非道なマフィアというよりも歴戦の勇士を思わせる。彼は虎皇会東欧支部のナンバーツーであり、ボスの護衛を任されている。
「仕方ナイネ。デュランノ旦那、行儀悪イカラ。私タチマフィアモビックリヨ」
デュランの背後からスッと現れたのは、カタコトで喋る黒装束の薄気味悪い女。凶星と名乗る虎皇会専属の殺し屋だ。古来より暗殺や呪術を生業としてきた一族の末裔で、虎皇会に飼われてからは主に虎皇会に刃向かう輩の掃除を任されている。
「ちっ、どいつもこいつも朝から同じことを言いやがる。面白くねぇ」
デュランは抱えていたアイラを下ろして両手を上げる。アイラを連れたままで背後と正面をこの二人に立たれたら、流石のデュランでも分が悪い。そもそも、デュランは元より争う為にここへ来たわけではない。
「今日は頼みがあって来た」
デュランの一言に、ジェイクは溜息交じりに右手を掲げた。それを合図に構成員たちは一様に銃を納める。侵入者、もとい来客があのデュランだとわかった以上、無駄な争いは虎皇会も避けたいところ。無益で甚大な被害が出るだけだ。この場で一悶着起こすということが一銭の得にもならないとは皆、重々承知していた。
「あらあら。あなたがお願いごとなんて、珍しいこともあるものねぇ」
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