異能力と妖と短編集

彩茸

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if『幼妖騒動』

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―――霧ヶ山のお堂に戻った俺達は、用事を済ませた晴樹を交え天春達に事の顛末を
説明する。

「何で壺割ったの?」

 天春にそう聞かれ、俺は少し悩んで言った。

「えっと・・・何か、壺が原因な気がして。壊したら何か起こるかなー・・・と」

「どんな勘してるんダ・・・」

 のっぺらぼうが呆れたように言う。
 その時お堂の扉が開き、ニヤニヤと笑う落魅と深い溜息を吐く雨谷が入ってきた。

「初めてあんたに勝った気がしまさあ」

「いやー、まさか過去の自分にしてやられるとは思わなかったよね・・・」

 そんな会話をしている落魅と雨谷に、晴樹が言った。

「何してたの?」

 ニヤニヤと笑いながら口を開いた落魅の頭を、雨谷がガシッと掴む。

「・・・言ったら、容赦なくしごいてあげるよ」

 真顔で言った雨谷に、落魅はブルリと身を震わせる。

「・・・秘密でさあ」

 ボソリと落魅が言うと、秘密秘密~と頷いて雨谷はヘラヘラと笑った。

「お祖父ちゃん、ほんとに覚えてないの?」

「主様、本当に覚えていらっしゃらないのですか?」

 誠と狼昂の声が聞こえる。そちらを見ると、誠と狼昂に詰め寄られる狗神の姿が
 あった。

「覚えているような、いないような・・・」

 狗神はそう言って目を逸らす。そんな狗神に近付いた天狗さんが、狗神の頭に
 手を置いて言った。

「何じゃ、覚えておらんのか。つまらん」

 そのままワシャワシャと頭を撫で始めた天狗さんに、狗神は恥ずかしそうに顔を
 赤くして言った。

「やめんか、阿呆あほ

「あれだけ撫でろとせがんでおいて・・・」

 天狗さんはそう言いながら意地悪そうな笑みを浮かべる。
 よく見ると、狗神の尻尾は嬉しそうにゆらゆらと揺れていた。

「静也様」

 ふと、後ろから声を掛けられる。振り向くとそこには雪華が立っており、雪華は
 しゃがむと俺に耳打ちした。

「私と狼昂様が話した件は、ご内密にお願い致します」

「え?」

 雪華はクスリと笑うと、立ち上がって言った。

「世の中には、知らない方が良いこともありますので」

「・・・分かった」

 俺が頷くと、雪華はペコリと頭を下げて雨谷の元へ向かった。
 騒がしいお堂の中、外から烏の鳴き声が聞こえる。お腹空いたな・・・なんて
 考えながら、俺はゆっくりと立ち上がった。


                                     完
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