ある日 森の中

彩茸

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熊さんの 言うことにゃ

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「熊さんの言うことにゃ!間違ってるはずないにゃ!!」
ヤギ、キノコ、アネゴが川のほとりで涼んでいると、突然そんな声が聞こえてきた。
「なんだぁ?揉め事か?」
ヤギが心配そうに声の聞こえた方を見て言う。
「ほっとけほっとけ」
「ヤギ!魚!魚いる!!」
興味が無さそうなキノコと全く別のことにテンションをあげているアネゴを交互に見て、ヤギは溜息を吐く。
「でもよぉ…なんか心配じゃんか…」
ヤギがそう言いながら立ち上がろうとした時、1匹の狸が草むらから飛び出した。
「うわっ!?いつからそこに…にゃん」
「え、にゃん…?」
ヤギとキノコは狸が飛び出してきたことよりも、その狸の語尾がにゃんであることに驚いていた。
キノコが指摘すると、狸は恥ずかしそうに目を伏せ、ボソボソと呟く。
「…好きでにゃんにゃん言ってる訳じゃないし…。罰ゲームなんやもん…。」
「罰ゲーム?狸さん何かしちゃったの?」
先程まで川を覗き込んでいたアネゴがふよふよと狸に近づく。
「ちょっと、ゲームで負けちゃって…にゃん」
なるほど、語尾にゃんは罰ゲームかと一同が納得していると、狸が飛び出してきた草むらから兎がひょこっと顔を出した。
兎は喋ることなく、手に持っていた木の板にサラサラと何かを書いていく。
『タヌキさん、熊さんがほんの冗談だったんだ…って自白しましたけど。あと、皆さんこんにちは。ヤンウサの名前はヤンウサです』
そう書かれた木の板をタヌキ、アネゴ、ヤギ、キノコの順に見せると、ヤンウサはぴょこぴょことその場で跳ねた。
「は、はあ…どうも…」
ヤギはぺこりとお辞儀をすると、俺達は…と仲間の紹介や自分達が群れを作っていることを話し始めた。

『なるほど、群れですか。興味深い』
ヤギの説明が終わるとヤンウサは木の板にそう書いて、またまた皆に見せた。
「あの、群れ…俺も入っていいですか?…にゃん」
座って話を聞いていたタヌキが、そう言って手を挙げる。
「もちろん!タヌキさんも大歓迎だよっ!!」
アネゴが嬉しそうにふよふよとタヌキの周りを飛び回る姿を見て、ヤンウサはまたサラサラと木の板に書き込む。
『ヤンウサは群れるということがなにをすることなのかよく分かりませんが、面白そうなので加わりたいと思っています。もちろんダメなら良いんですが…、ヤンウサは皆さんと一緒にいたいと思いました』
キノコはヤンウサの書いた文章を読みながら長ぇ…と呟いていたが、ヤギは特に気に留めることもなく、
「こちらこそよろしくお願いします!」
と言って頭を下げた。

ーーその様子を遠くから見ていた熊さんの言うことにゃ、2匹増えた群れは大層楽しそうだったそうな。
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