ある日 森の中

彩茸

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トコトコ トコトコと

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トコトコ、トコトコと歩く音。
珍しく早起きしたキノコは、朝の森を歩いていた。
「朝の空気は気持ち良いねぇ」
キノコは1人呟く。
「めっちゃ分かる」
返事など返ってくるはずがないと思っていたキノコは横から聞こえてきた声に飛び
退く。
「え、何?誰?!!」
キノコが慌てながら横を見ると、そこには金色の長い髪を風になびかせる1人の人間が立っていた。
「え、は?に、人間・・・?」
「いやー喋る茸とか初めて見たからさ、付いて来ちゃった♡」
「いやいやいやいや、付いて来ちゃった♡じゃないよ!」
ニコニコと笑うその人間に若干ビビりつつも、これも縁だとキノコは自己紹介を
する。
すると人間も律儀に自己紹介をしてくれた。
「俺の名前はエレナ。森の外にある村に住んでるんだ」
「どうしてこんな時間にこんな所に?」
「どうして、か・・・知りたい?」
「知りたいから聞いてるんだが」
「朝の散歩だよ」
「は、はあ」
これと言って特別な事情でも何でもなかったため、キノコは微妙な返答しかできな
かった。

その後2人は、森についてや人間の村についてなどの話をしながら散歩を続ける。
その中でキノコが群れの話をした時、エレナが興味津々と言った感じで食いついて
きた。
「え、何それ面白そう」
「愉快な仲間ばっかりで楽しいんだよ」
「良いな、俺も入りたい」
「・・・え?」
突然の申し出にキノコは驚く。
「え、いや、人間って動物の言葉分かるっけ?」
「んー・・・まあ何とかなるでしょ」
本来ならばもう少し悩むところなのだろうが、キノコは何とかなるならいっかぁと
快諾した。
「分かった、皆に紹介するから付いて来て」
「おー」
そうして2人は群れの元へと歩きだす。

――トコトコ、トコトコと歩く音が、1つから2つに増えた。
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みんなの感想(1件)

幽零
2021.09.17 幽零
ネタバレ含む
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