4 / 7
ワタシと彼の初めてのキャンバス~事後談~
しおりを挟む
実は、あの甘い初体験には後日談がある。正式には、後日ではなく、事後談というが。
机に寝そべっていた私達は、我に返ったように、はぁとため息をはいた。とにかく蒸し暑かった。彼が先に起き上がり、窓を開けると、夕方特有の風が教室を吹き抜ける。気持ちいと感じた反面、違和感を覚える。密室にこの風は、不自然だ。首を横にし、部屋を見渡す。その時、初めて廊下側の壁の上部についている窓が全開だったことに気付いた。
「ねぇ、あれ見てよ、開いてる」
私が指差す方向を上半身裸のままの彼が見て、あぁと苦笑いを浮かべる。
「お前の声、聞こえてたかもな?」
「最悪。ちゃんと気付いてよ」
そう言い、顔を両手で覆う。
「冗談だよ。夏休み中、前の廊下通ってる奴、一人も見てねぇし」
「本当?」
「うん。本当」
彼は、私の唇に優しく、触れるだけのキスをする。そして、私の手を引く。体重を彼に預け、起き上がる。
脱ぎ捨てた制服とパンツを手に取り、顔を逸らしながら私に渡す彼を見ていると、彼の中で、この行為は、すごく踏み切ったものだったんだろな、と思い、愛しさがこみ上げた。私も恥ずかしさはもちろんあったが、見せてしまえば、もう平気だった。
思春期だとは思えない、割り切った感覚を持っていたように思う。
「ねぇ、腰痛い。おんぶして」
初めての行為であったし、場所が机の上だったのだから仕方ないだろう。じんじんと鈍い痛みが腰から背中に残っていたこともあって、思わず口にする。
「いいんだな?」
彼は、呆れ顔だった。
「……ごめん、冗談」
「だろうな」
学校でそんなことをすれば、いい笑い者にされる。私は、美術部員として、けっこう真面目な印象を周りに与えているし、彼はというと、真面目ではない仲間たちとつるんでいた。
彼は、制服の上から私の腰を何度かさする。おんぶができない代わりだろう。
「無理させた」
「ううん。いいよ……またしようね」
彼の表情が悲しそうだったので、ついそんなことを言ってしまう。とんでもなく恥ずかしいことを言ってしまったと、すぐに後悔する。
「そんなこと女が言うなよ」
「か、関係ないよ。って、そういう意味じゃなくて」
あたふたする私をにやにやとした表情で見つめる彼は、意地悪だと思った。
「あ、これいる?」
「何それ」
彼の手には萎んだヨーヨーのような透明の物体が置かれていた。
彼がその名称を言うのと私が理解するのは、ほぼ同時だった。
「コンドーム」
実物を見たのは、初めてだった。
彼が私の中にソレを挿入する前は、目を閉じていたので、付けていることは気付かなかった。彼の精液についてなど行為中は、夢中で気にする余裕もなかったが、ものを見せられて初めて、はっとする。
ネット上でセックスに関する記事を読んだことはあるが、コンドームなどの避妊具などを嫌がって付けない男性がいることは、頭の片隅程度に入れていた。無責任だ、と思っていた。しかし、彼は、違った。
彼はきちんとしている、私を大事にしてくれていると思うと嬉しくなった。
にこりと笑う私を彼は怪訝そう表情で見る。
正直なところ、嬉しくて記念にとっておきたい、と思ったが、流石にそれは気持ち悪すぎるので、カバンの中に入っていたお菓子のゴミが入った袋を彼に差し出す。
「気持ちは嬉しいけど、丁重に捨てさせてもらうね」
「だよな」
ほっとした表情で、彼は、体液にまみれたコンドームをゴミ袋に放り込む。
そうして、私と彼の思い出の産物は、お菓子のゴミとともに駅のゴミ箱に捨てられた。
机に寝そべっていた私達は、我に返ったように、はぁとため息をはいた。とにかく蒸し暑かった。彼が先に起き上がり、窓を開けると、夕方特有の風が教室を吹き抜ける。気持ちいと感じた反面、違和感を覚える。密室にこの風は、不自然だ。首を横にし、部屋を見渡す。その時、初めて廊下側の壁の上部についている窓が全開だったことに気付いた。
「ねぇ、あれ見てよ、開いてる」
私が指差す方向を上半身裸のままの彼が見て、あぁと苦笑いを浮かべる。
「お前の声、聞こえてたかもな?」
「最悪。ちゃんと気付いてよ」
そう言い、顔を両手で覆う。
「冗談だよ。夏休み中、前の廊下通ってる奴、一人も見てねぇし」
「本当?」
「うん。本当」
彼は、私の唇に優しく、触れるだけのキスをする。そして、私の手を引く。体重を彼に預け、起き上がる。
脱ぎ捨てた制服とパンツを手に取り、顔を逸らしながら私に渡す彼を見ていると、彼の中で、この行為は、すごく踏み切ったものだったんだろな、と思い、愛しさがこみ上げた。私も恥ずかしさはもちろんあったが、見せてしまえば、もう平気だった。
思春期だとは思えない、割り切った感覚を持っていたように思う。
「ねぇ、腰痛い。おんぶして」
初めての行為であったし、場所が机の上だったのだから仕方ないだろう。じんじんと鈍い痛みが腰から背中に残っていたこともあって、思わず口にする。
「いいんだな?」
彼は、呆れ顔だった。
「……ごめん、冗談」
「だろうな」
学校でそんなことをすれば、いい笑い者にされる。私は、美術部員として、けっこう真面目な印象を周りに与えているし、彼はというと、真面目ではない仲間たちとつるんでいた。
彼は、制服の上から私の腰を何度かさする。おんぶができない代わりだろう。
「無理させた」
「ううん。いいよ……またしようね」
彼の表情が悲しそうだったので、ついそんなことを言ってしまう。とんでもなく恥ずかしいことを言ってしまったと、すぐに後悔する。
「そんなこと女が言うなよ」
「か、関係ないよ。って、そういう意味じゃなくて」
あたふたする私をにやにやとした表情で見つめる彼は、意地悪だと思った。
「あ、これいる?」
「何それ」
彼の手には萎んだヨーヨーのような透明の物体が置かれていた。
彼がその名称を言うのと私が理解するのは、ほぼ同時だった。
「コンドーム」
実物を見たのは、初めてだった。
彼が私の中にソレを挿入する前は、目を閉じていたので、付けていることは気付かなかった。彼の精液についてなど行為中は、夢中で気にする余裕もなかったが、ものを見せられて初めて、はっとする。
ネット上でセックスに関する記事を読んだことはあるが、コンドームなどの避妊具などを嫌がって付けない男性がいることは、頭の片隅程度に入れていた。無責任だ、と思っていた。しかし、彼は、違った。
彼はきちんとしている、私を大事にしてくれていると思うと嬉しくなった。
にこりと笑う私を彼は怪訝そう表情で見る。
正直なところ、嬉しくて記念にとっておきたい、と思ったが、流石にそれは気持ち悪すぎるので、カバンの中に入っていたお菓子のゴミが入った袋を彼に差し出す。
「気持ちは嬉しいけど、丁重に捨てさせてもらうね」
「だよな」
ほっとした表情で、彼は、体液にまみれたコンドームをゴミ袋に放り込む。
そうして、私と彼の思い出の産物は、お菓子のゴミとともに駅のゴミ箱に捨てられた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる