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幽霊専門ペットショップ ラブリーゴースト

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 全ての生き物の飼育が禁じられた。偉い人がいうには生き物の意志を尊重したのだと。人工肉が普及し始めた頃から言われた生き物を人間から解放するという考え。飼われることでしか生きれない生き物こそ私たちの側にいたのに。
 見殺しにすることが正しいなんて、おかしい。
そう思われながらも、はや30年後突然その店は開かれた。
 
 幽霊専門ペットショップ
 ラブリーゴースト

 ペットショップという言葉に人々 は驚く。人に飼育されるために生き物を売る悪い昔の仕事だったはず。それがこの町に現れたから。
 幽霊専門というよく意味がわからない枕詞が付いているがペットショップはペットショップ、すぐさま店主を捕まえようと偉い人の手先がやってきた。
 押し入り入ったその先には明るい店内。しかし全てが色褪せたペット用のおもちゃ、消費期限がとっくに過ぎたフード、何より目を引いたのは
 水が入っていない沢山の水槽、何もいないショーケースと回し車しかない籠。しかし、何か気配がする。
 水槽から水が跳ねる音が聞こえ、ショーケースの中ではボールがピプピプと鳴り勝手に跳ねる。そして、回し車が軽快に回っている。その景色にビビる手先。

 そして奥から女の人が出てきた。薄ピンクのエプロンの胸元には幽霊専門ペットショップ・ラブリーゴーストと目立つように書かれている。
「いらっしゃいませ!どのような子をお探しですか?」
 一昔前に言われたら、ペットショップでは当たり前に言われていた言葉が足のない彼女から言い放たれた。彼女を見て幽霊だ。本物だと叫ぶのを忘れて怖がる手先の中に一人、頭が硬い奴がいた。
「ここはペットショップと聞いた。生き物を飼うのは違法だ!今すぐお前を逮捕して、生き物を解放する」
 そういうと手先たちはそうだ、どこに隠していると騒ぎ出す。どうせ特殊映像か何かだという奴もいた。
 フーッと彼女はため息ひとつつくと、口を開いた。
「おっしゃる通り、その生き物を飼うのは違法です。しかし私は生き物を飼っていない。ここにいるのはみんな幽霊、ゴーストです!」
 彼女が笑顔でそう言い切ると、さっきまで見えていなかった物が見えるようになった。
 水槽の中で優雅に泳ぐ尾が長い魚。ショーケースの中でボールで遊ぶ白い子犬。そして回し車の中で毛繕いをするネズミ。
 どれにもいえることは全て半透明だということ。

「みんなかわいいとってもいい子たちです!さあ、どの子を連れて行きますか?」


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