アラフォーおっさんの美少女異世界転生ライフ

るさんちまん

文字の大きさ
50 / 81
ハンマーフェロー編Ⅳ 帰還の章

1 地上への道

しおりを挟む
「無事かいの? お嬢方。随分と疲れ切っているようじゃが」
「この数日間、碌に睡眠も取れずに連戦していましたから」
「なら、安心して休むがええ。周囲への警戒ならワシらに任せておけ」
 八階層に上がった俺達は、その後、付近まで捜索に来ていたガルドらに保護され、共に地上を目指すことになった。
 俺達が行方不明になっている間、既に別パーティーにより罠の仕掛けられた部屋は調べられ、何処かへ転送させられたことは判明していたようだ。
 床や壁などは跳ばされた場所と入れ替わって不自然なことになっていただろうから予想が付いたのだろう。
 そこで黄金級冒険者である『大地の戦鎚』ガルドをリーダーとする特別編成のパーティーが組まれ、捜索が実施されることになった。
 依頼者はギリルとドリルの兄弟。特にドリルは職人ギルドに顔が効くらしく、そのコネを存分に使って異例ともいえる選抜パーティーを実現させたそうだ。
 元はといえば冒険者ギルドの直々の依頼がきっかけだったことも影響しているのだろう。
 もちろん、彼ら兄弟には感謝してもし切れない。地上に戻ったら何らかの恩返しを考えよう。
 そんなわけでガルドの言葉に甘えて、俺達は彼らが設営した休息ポイントにてひと先ず休ませて貰った。
 その後も彼らに護られ、下層階を引き返して行く。
 無論、戦闘になれば俺達も協力は惜しまない。
 ガルドや同じく選抜パーティーに入っていたスヴェンには無理をするなと言われたが、俺達の救援のせいで死者を出しては後味が悪くなること請け合いなので、強引に参加させて貰った。矢の補充だけは後衛メンバーに分けてくれるようお願いしたけどね。

「黄金級冒険者が二人にもなったら、俺の見せ場がなくなっちまうぜ」
 冗談めかした口調でスヴェンが戦闘後の場を和ませる。初対面の時にはあれほどやり合っていたガルドとも上手くやれているようだ。
「ワシらだけじゃないぞ。黒髪と犬耳のお嬢もランクに見合わず大したもんじゃて。模擬戦の時もそう思ったが、さすがは黄金級冒険者とパーティーを組むだけあるの。是非ともうちの一員に加えたいものよ」
 誉めてくれるのは嬉しいが、外見的特徴で人のことを呼ぶのは止めて貰いたい。差別的な意味合いではなさそうだが。
「そりゃダメだ。唾を付けたのはこっちが先なんだから入るとしたら俺達のパーティーに決まっているさ。あんたは引っ込んでな」
 ガルドの言葉を聞き、スヴェンが即座にそう反論する。
 だが、ガルドも当然、言われるままで黙ってはいない。
「何をぬかす。唾なんぞ付けておらんかったくせに。大体、お前のところは壁役タンクが足りておらんのだから、そちらを見つける方が先決じゃろ」
〈ほほぉー、そうなのか。そう言えばうちも攻撃を受け止める役目はいないな。そのうち壁役不足での立ち回りのコツでも聞いてみようか〉
「そっちは壁役タンクが多過ぎんだよ。後衛の呪文使いまで盾持ちって意味ねえだろ」
〈確かにそれは意味不明だ。指摘された当人は『ロマンじゃ』とか言って全然、意に介していないみたいだけど〉
 何にせよ、前言撤回。やはりこの二人は仲が悪いわ。
 他の冒険者達も呆れて、そのやり取りを眺めている。
 そんな軽口を叩き合いつつもベテランらしい慎重さで、危なげなく地上への歩みを進めて行く。
 それでもさすがに踏破済み最深部からだと、即日帰還というわけには行かないようだ。地表に戻るには休息を挟んであと二日ほどは掛かるという。
 その辺りの予定は彼らに任せておけば安心だろう。
「ところでセレス、あの不死の魔物アンデッドの大群が本当にハンマーフェローを襲うとして、勝てると思う?」
 並行して歩きながら俺は隣のセレスに小声でそう話しかける。
「正直言って予想が付かないわ。恐らくあの城壁が簡単に破られることはないでしょうけど、飲まず喰わずで平気な不死の魔物アンデッドの群れに取り囲まれるなんて想像もしたくないわね。それにミアが聞いた話では、これを画策した者の真の目的は周辺国を巻き込んで戦争を起こさせることなんでしょ。だったら長引くのは拙い。それと──」
 セレスが何かを言いかけて口籠る。どうかした? と俺は彼女の横顔を覗き込みながら訊ねた。
「これは個人的なことなんだけど……ハンマーフェローが戦場になればルタ王国で先陣を切って出兵するのは最も近いクーベルタン領からの可能性が高い。それが気がかりなのよ」
 そうか。指摘されるまで気付かなかったが、ルタ王国側でハンマーフェローと緩衝地域を挟み隣接するのはセレスの地元であるクーベルタン領だ。真っ先に出陣を命じられてもおかしくはない。
 俺はクーベルタン市で知り合った領軍の人達──ファビオ中隊長やドリス、サイラス中隊長らの顔を思い浮かべる。
 血を流すことも兵士の仕事のうちとはいえ、彼らが戦場で倒れる姿など見なくて済むならそれに越したことはない。
 たぶんセレスも似た気持ちなのだろう。
「魔物、来る」
 俺達がそんな言葉を交わしていると、ミアが警告を発した。ガルド達が即座に反応する。
 ここ数回の接敵で、ミアの探知能力はすっかりみんなから信頼されたみたいだ。
 スカウトしたいというのも案外本気かも知れない。
 引き抜かれないよう注意しないと。
 戦闘は俺達がほとんど出る幕なく、あっさりと終了する。
「そういえばそっちの……銃じゃったか、魔弾を撃つ道具は壊れでもしたんかの?」
 戦闘終了後に、ガルドがそんな風に話しかけてきた。
「たまたま使うところを目撃した者がギルド内で騒いでおったのを耳にしたのでな。見るのを愉しみにしておったんじゃが、ここまで弩しか使ってなかったろう」
 俺が持つグレランもどきを指差しながら興味深そうな顔で言う。使うところを見たというのはたぶん、野外で試射を兼ねていた時のことだろう。
「いえ、壊れてはいないのですが、肝心の弾をほぼ使い果たしてしまって。何分、単価が高いので、多くは用意できませんから」
 俺は事実をそう告げる。
「それは残念じゃな。機会があれば是非、見せて欲しいものじゃ。もちろん、秘密にする気がなければで良いが」
 開発の経緯は別として、完成した武器そのものはギリル達がこの世界の素材や技術を用いて造ったものなので、特に隠匿するつもりはない。
 普通に冒険者や軍隊が使うには採算が合わない上、オーバーキル気味だから普及は難しいと思うけどさ。
「おいおい、どこに目を付けてるんだ。弩だって普通じゃないだろ」
 そう言って会話に割り込んできたのは、やはりと言うか、当然と言うか、白銀級冒険者のスヴェンだ。この二人は張り合わずにいられないんだろうか?
「お前に言われんでも承知しておるわい。次に訊こうと思っておったのよ。せっかちな奴よのぉ」
 弩の方も只のクロスボウではなく、滑車を使いコンパウンド化したものだから珍しいに違いない。その上、コッキングもコブラシステムと呼ばれるグリップ下にあるレバーを動かし梃子の原理で楽に行える仕様であると共に、ボルトを五本まで装填可能なマガジンを装着した、まさに持てる知識を総動員して作り上げた世界に一つしかない特注品なのだ。
 これもギリルの凝り性の為せる業である。
 簡略化したものはいずれ売りに出すと言っていたから、よく似た装備が冒険者達の間に出回るのもそう遠くない日かも知れない。
「ふーむ、それにしても評価を見直すべきかも知れんの」
「何の話だい?」
 ガルドの独り言にスヴェンが即刻反応した。
「これを作ったのは名匠ドリルの兄のギリルじゃろ?」
 ガルドがそう訊ね、俺が少々驚きつつも頷く。
 ドリルが知られているのはわかるが、ガルドはギリルのことも知っていたようだ。
 もっとも弟とは違った意味での有名人であるらしい。
「ギリルって、あの・・ギリルか?」
 スヴェンもそう言って目を見張る。
 あのが何を指すのか、何となく想像が付きそうだけど黙っておいた。
「へえー、そりゃ意外だな。噂じゃ役に立たない物しか造らないってことだったが、今度試しに剣でも打って貰うか」
 スヴェンが思案顔で呟くが、全身トゲトゲだらけのロングソードとかスペツナズナイフ張りに刀身が飛んでいくダガーとか造られても知らないよ。
 まあ、これを機にギリルの鍛冶師としての評判が上がって、生活に困らなくなるのは俺としても嬉しい。
 借金を盾に手玉に取ろうと画策しているカミラさんには悪いけど。
 もっとも、あの人ならすぐに別の手段を考えそうだ。
 そうこうしているうちに上層階までやって来た。
 潜る時とは違って進むごとに出現する不死の魔物アンデッドは弱くなっていくので、比較的楽にここまで来られた。
 ガルド達の警護が優秀だったことは言うまでもない。
 そうして俺達は遂に地上へ舞い戻った。
 迷宮に足を踏み入れて、実に七日ぶりのことだった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...