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28.話し合い
数日後のランドロフ侯爵家のティールーム。
アシェルの訪問を告げられて、ノアは急ぎ足で向かった。
ノアがティールームに入った途端、身の置き所がなさそうにちんまりと座っていたアシェルが、ポカンと口を開けた。ノアの後ろからサミュエルがついてきていたからだろう。
ノアも内心で頷いて共感する。アシェルが驚くのは当然だ。ノア自身、サミュエルがこの家にいることが信じられない気持ちだったから。
「――え、なんでサミュエル……?」
「悪いね。君の問題は、私にも大きく関わるものだから、君と秘密裏に話せるよう、ノアに協力してもらったんだ」
「へ……ノア様……もしかして、僕のこと話したんですか……?」
呆然とした様子で尋ねてくるアシェルに申し訳なくなる。許可を得ずにアシェルから聞いたことを話したのは事実だった。アシェルのためを思ってしたことであっても、誠心誠意謝らなくてはならない。
「すみません。アシェルさんの問題を考えるためにも、サミュエル様にご意見を伺う必要がありまして……。ですが、サミュエル様もアシェルさんの話を否定することはなかったのですよ。他の転生者の話も――」
「やっぱり僕以外に転生者がいるんですねっ!? それはどこのどなたで、一体何を考えてシナリオを狂わせているんですか!?」
ノアの言葉を遮りアシェルがサミュエルに詰め寄る。その勢いにノアは戸惑って、止めようと伸ばした手を宙に彷徨わせた。
サミュエルは片眉を上げて少し呆れた様子だったけれど、あらかじめアシェルの非礼に目を瞑ってほしいとノアが頼んでいたからか、ため息一つで受け流している。
「落ち着いて。まずは私が知っている話と、君の話を照らし合わせよう。それから、君の今後についての話をさせてもらいたい」
「っ……僕は、どうなるんですか……?」
今後という言葉に、アシェルの目に怯えが浮かんだ。自分の行動が咎められるものだという自覚はあるようだ。それでもシナリオに縋って行動してしまったのだから、どこかで問題の決着をつけなければならないのは確か。
それが少しでもアシェルにとって辛いものにならないよう頑張るのは、ノアたちの役目だ。
「君がどうなるかについて、私はまだ明確な答えを持っていない。でも、君に全ての責任を取らせるつもりはないよ。それは信じてほしい。……ほら、まずはソファに座って。ゆっくり深呼吸をして、お茶でも飲んで落ち着くといい」
「アシェルさん、座りましょう?」
混乱で呼吸が乱れているアシェルの背に、ノアは手を添えた。ソファに座らせ、その隣に腰かけながら、アシェルの冷えた手に温かな紅茶が入ったティーカップをのせる。
「――一緒に考えると言ったでしょう。一人で抱え込む必要はないんです。まずはお話をしましょう」
「……はい。すみません、僕、すぐパニックになっちゃって……」
肩を落すアシェルに微笑みかける。アシェルを混乱させてしまったのは、サミュエルを呼んでいると伝えなかったノアにも原因があるのだ。
「大丈夫ですよ。僕もサミュエル様も、あなたを傷つけようと思ってここにいるわけではありませんから」
「そうだね。なんなら、君の味方になりえると思うけど。少なくとも、ライアン殿下よりは頼りになると思うよ」
少し皮肉が混じったサミュエルの言葉に、なんと返すべきか分からず、ノアはアシェルと顔を見合わせた。アシェルも同じように感じていたようだ。思わず笑い合ってしまい、サミュエルには肩をすくめられたけれど。決してサミュエルを仲間外れにしたわけではない。
アシェルの訪問を告げられて、ノアは急ぎ足で向かった。
ノアがティールームに入った途端、身の置き所がなさそうにちんまりと座っていたアシェルが、ポカンと口を開けた。ノアの後ろからサミュエルがついてきていたからだろう。
ノアも内心で頷いて共感する。アシェルが驚くのは当然だ。ノア自身、サミュエルがこの家にいることが信じられない気持ちだったから。
「――え、なんでサミュエル……?」
「悪いね。君の問題は、私にも大きく関わるものだから、君と秘密裏に話せるよう、ノアに協力してもらったんだ」
「へ……ノア様……もしかして、僕のこと話したんですか……?」
呆然とした様子で尋ねてくるアシェルに申し訳なくなる。許可を得ずにアシェルから聞いたことを話したのは事実だった。アシェルのためを思ってしたことであっても、誠心誠意謝らなくてはならない。
「すみません。アシェルさんの問題を考えるためにも、サミュエル様にご意見を伺う必要がありまして……。ですが、サミュエル様もアシェルさんの話を否定することはなかったのですよ。他の転生者の話も――」
「やっぱり僕以外に転生者がいるんですねっ!? それはどこのどなたで、一体何を考えてシナリオを狂わせているんですか!?」
ノアの言葉を遮りアシェルがサミュエルに詰め寄る。その勢いにノアは戸惑って、止めようと伸ばした手を宙に彷徨わせた。
サミュエルは片眉を上げて少し呆れた様子だったけれど、あらかじめアシェルの非礼に目を瞑ってほしいとノアが頼んでいたからか、ため息一つで受け流している。
「落ち着いて。まずは私が知っている話と、君の話を照らし合わせよう。それから、君の今後についての話をさせてもらいたい」
「っ……僕は、どうなるんですか……?」
今後という言葉に、アシェルの目に怯えが浮かんだ。自分の行動が咎められるものだという自覚はあるようだ。それでもシナリオに縋って行動してしまったのだから、どこかで問題の決着をつけなければならないのは確か。
それが少しでもアシェルにとって辛いものにならないよう頑張るのは、ノアたちの役目だ。
「君がどうなるかについて、私はまだ明確な答えを持っていない。でも、君に全ての責任を取らせるつもりはないよ。それは信じてほしい。……ほら、まずはソファに座って。ゆっくり深呼吸をして、お茶でも飲んで落ち着くといい」
「アシェルさん、座りましょう?」
混乱で呼吸が乱れているアシェルの背に、ノアは手を添えた。ソファに座らせ、その隣に腰かけながら、アシェルの冷えた手に温かな紅茶が入ったティーカップをのせる。
「――一緒に考えると言ったでしょう。一人で抱え込む必要はないんです。まずはお話をしましょう」
「……はい。すみません、僕、すぐパニックになっちゃって……」
肩を落すアシェルに微笑みかける。アシェルを混乱させてしまったのは、サミュエルを呼んでいると伝えなかったノアにも原因があるのだ。
「大丈夫ですよ。僕もサミュエル様も、あなたを傷つけようと思ってここにいるわけではありませんから」
「そうだね。なんなら、君の味方になりえると思うけど。少なくとも、ライアン殿下よりは頼りになると思うよ」
少し皮肉が混じったサミュエルの言葉に、なんと返すべきか分からず、ノアはアシェルと顔を見合わせた。アシェルも同じように感じていたようだ。思わず笑い合ってしまい、サミュエルには肩をすくめられたけれど。決してサミュエルを仲間外れにしたわけではない。
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