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222.王妃への思い
「王妃の立場が揺らいでいることは、ノア殿も知っているだろうが――」
「はい、もちろん。……カールトン国と、グレイ公爵家の対応によるものですよね?」
念のため確認すると、ルーカスが小さく頷く。その際にチラリとサミュエルの顔に視線を向けたのは、グレイ公爵家の対応の裏側に、サミュエルの意思があると考えているからだろう。
「……公然と批判されたことはないが、王妃には長い間、カールトン国にこの国の情報を渡していた疑惑がある」
密やかな声で囁かれた言葉に、ノアは目を細めた。
ルーカスが語った疑惑については、以前グレイ公爵が言及していた記憶がある。あれは、ノアたちの婚約披露パーティーの後での、マーティン殿下への対応策を考えていた時のことだっただろうか。
その際に、グレイ公爵は王妃にもなんらかの対処をすることを示唆していて、今の状況はその動きによるものだろうと、ノアは理解していた。
「――我が母ながら、愚かだと思う。あの人は、王妃になる心構えなんて、初めから今までなかった。ずっとカールトン国の王女だったんだ」
ルーカスが苦々しい口調で語る。
息子という立場で母親を批判するのは、どれほどの苦痛を伴うものなのだろうかと、ノアは心配になった。
「これまでは、それでも良かったのでしょう。カールトン国の王家は王妃の後ろ楯であり、その権力に靡く貴族も一定数いましたからね」
サミュエルが肩をすくめ、つまらなそうに告げる。それに対し、ルーカスは大きくため息をついた。
「……ああ、だが、状況が変わった。王妃の後ろ楯はすでにないも同然で、最も有力な貴族を、敵に回している。それは、これまでの愚かさが招いた結果だから、俺がそれをどうこう言うつもりはない」
「でしょうね」
ルーカスの言葉を軽く受け入れるサミュエルに、ノアは内心で同意する。
王妃の現状は、過去の言動が招いたものであるという認識を、ノアも持っていた。
「ただ、ひとつ問題があって、王妃がいかに問題がある人物であろうと、俺の母親であることにはかわりない、ということなんだ」
「……あぁ、そうですね」
ノアは話が読めた気がした。思わず苦笑しながら、頭を悩ませる。
ルーカス自身がいかにグレイ公爵家やランドロフ侯爵家の後ろ楯を得ていると喧伝されようと、王妃という存在が足枷になっているのだろう。
王妃への評判は、ルーカスの王太子としての評価にも繋がる。
「――現在の、有力貴族におもねろうとする王妃の対応も、良くないということですか?」
「はっきり言うと、そうだ。王妃は自分のことしか考えていないから気づいていないようだが、確実に、俺や王家を軽んじる者が増えている。王妃の行動が、王家の権威を下げているんだ」
ルーカスが頭痛をこらえるように、こめかみを指先で押さえる。
その悩ましげな表情を見て、ノアも困ってしまった。
「……そのような話をされたところで、僕にできることはないと思うのですが」
すでに、グレイ公爵家とランドロフ侯爵家がルーカスを支持している立場であることを明確にしている。
それに加えて、ノアができることなんて何もないように思えた。
首を傾げるノアを、サミュエルが横目でチラリと見る。ルーカスも、なんとも言いがたい表情で、ノアに視線を向けた。
「いや、ノア殿ならば可能な、現状を改善できる効果的な手があるわけだが……。それを頼むのは、少々俺自身気が咎める部分もあって……正直、判断を迷っている」
曖昧な言葉で言われたノアの方が、困惑するしかない。
いったい自分に何ができるというのか。まったく予想がつかなかった。
「殿下。あまり、ノアを振り回すようなことは、許容できませんよ」
「分かってる。分かった上で、迷ってるんじゃないか」
サミュエルは何かを知っているのか、予防線を張るように、ルーカスを牽制する。
それに対して、ルーカスは苦悩した表情で、ガリガリと頭を掻いた。
「――……一思いに、王妃をどっかに追いやってしまえばいいんじゃないかと、思わなくもないんだ。実際、ライアン兄上から、王妃を引き取ろうかという申し出もあるし」
「ライアン大公閣下が……!?」
唐突に出てきた名前と、その申し出の意外性に、ノアは目を丸くして驚く。
どのような話の流れでそのような発言が出てきたのか気になった。
「まぁ、その申し出は、責任のすべてを俺に放り投げて、一抜けしたことへの贖罪なんだろうけどな」
ルーカスが苦笑して肩をすくめる。ライアンへの親しみが籠った表情だった。
ノアはサミュエルの顔を窺う。サミュエルがどう考えているかが気になったのだ。
「私は、その申し出を受けるも断るも、どちらでもいいとお答えしたよ」
サミュエルはノアの視線に気づき、さらりと答える。すでにルーカスとの間で話し合いが済んでいるようだ。
「……王妃殿下になんらかの責任を取ってもらうという形で、大公領に閉じ込める形をとれば、グレイ公爵家は納得するということですか?」
「納得するかどうかはともかく、罪を問うことはなくなるだろうね。あの領には、今ハミルトンが関わっているし、良いようにしてくれるんじゃないかな」
ハミルトンの名を聞いて、ノアは納得した。グレイ公爵家と繋がりが深いハミルトンならば、意を汲んで王妃に対応することなんて、お手のものだろう。
「あぁ……ハミルトン殿……。その場合、盛大に文句を言われそうですね?」
「文句よりも、いろいろと要求が来そうだよ。適当に交わすけど」
「……あまりつれないことをなさると、思いがけないしっぺ返しが来るかもしれませんよ?」
「私の考えを越える形で、ハミルトンが何かできるものかな?」
サミュエルに良いように使われそうなハミルトンを可哀想に思って、ノアは少し咎めてみたのだけれど、サミュエルにはまったく効果がなかった。むしろ、少し楽しそうである。
「……というか、俺の方が、ライアン兄上に、重荷を背負わせるつもりがないからな。追いやるなら、もっと他所にやる。――それこそ、カールトン国とか」
ルーカスがノアたちのやり取りに口を挟む形で宣言する。それは、言うなれば、王妃の死刑宣告でもあった。
傍系が王位を継ぐカールトン国で、直系の血を継ぐ王妃の存在は、邪魔でしかないだろう。
ノアはそうなった場合の王妃の行く末に思いを馳せ、そっと目を伏せた。
「はい、もちろん。……カールトン国と、グレイ公爵家の対応によるものですよね?」
念のため確認すると、ルーカスが小さく頷く。その際にチラリとサミュエルの顔に視線を向けたのは、グレイ公爵家の対応の裏側に、サミュエルの意思があると考えているからだろう。
「……公然と批判されたことはないが、王妃には長い間、カールトン国にこの国の情報を渡していた疑惑がある」
密やかな声で囁かれた言葉に、ノアは目を細めた。
ルーカスが語った疑惑については、以前グレイ公爵が言及していた記憶がある。あれは、ノアたちの婚約披露パーティーの後での、マーティン殿下への対応策を考えていた時のことだっただろうか。
その際に、グレイ公爵は王妃にもなんらかの対処をすることを示唆していて、今の状況はその動きによるものだろうと、ノアは理解していた。
「――我が母ながら、愚かだと思う。あの人は、王妃になる心構えなんて、初めから今までなかった。ずっとカールトン国の王女だったんだ」
ルーカスが苦々しい口調で語る。
息子という立場で母親を批判するのは、どれほどの苦痛を伴うものなのだろうかと、ノアは心配になった。
「これまでは、それでも良かったのでしょう。カールトン国の王家は王妃の後ろ楯であり、その権力に靡く貴族も一定数いましたからね」
サミュエルが肩をすくめ、つまらなそうに告げる。それに対し、ルーカスは大きくため息をついた。
「……ああ、だが、状況が変わった。王妃の後ろ楯はすでにないも同然で、最も有力な貴族を、敵に回している。それは、これまでの愚かさが招いた結果だから、俺がそれをどうこう言うつもりはない」
「でしょうね」
ルーカスの言葉を軽く受け入れるサミュエルに、ノアは内心で同意する。
王妃の現状は、過去の言動が招いたものであるという認識を、ノアも持っていた。
「ただ、ひとつ問題があって、王妃がいかに問題がある人物であろうと、俺の母親であることにはかわりない、ということなんだ」
「……あぁ、そうですね」
ノアは話が読めた気がした。思わず苦笑しながら、頭を悩ませる。
ルーカス自身がいかにグレイ公爵家やランドロフ侯爵家の後ろ楯を得ていると喧伝されようと、王妃という存在が足枷になっているのだろう。
王妃への評判は、ルーカスの王太子としての評価にも繋がる。
「――現在の、有力貴族におもねろうとする王妃の対応も、良くないということですか?」
「はっきり言うと、そうだ。王妃は自分のことしか考えていないから気づいていないようだが、確実に、俺や王家を軽んじる者が増えている。王妃の行動が、王家の権威を下げているんだ」
ルーカスが頭痛をこらえるように、こめかみを指先で押さえる。
その悩ましげな表情を見て、ノアも困ってしまった。
「……そのような話をされたところで、僕にできることはないと思うのですが」
すでに、グレイ公爵家とランドロフ侯爵家がルーカスを支持している立場であることを明確にしている。
それに加えて、ノアができることなんて何もないように思えた。
首を傾げるノアを、サミュエルが横目でチラリと見る。ルーカスも、なんとも言いがたい表情で、ノアに視線を向けた。
「いや、ノア殿ならば可能な、現状を改善できる効果的な手があるわけだが……。それを頼むのは、少々俺自身気が咎める部分もあって……正直、判断を迷っている」
曖昧な言葉で言われたノアの方が、困惑するしかない。
いったい自分に何ができるというのか。まったく予想がつかなかった。
「殿下。あまり、ノアを振り回すようなことは、許容できませんよ」
「分かってる。分かった上で、迷ってるんじゃないか」
サミュエルは何かを知っているのか、予防線を張るように、ルーカスを牽制する。
それに対して、ルーカスは苦悩した表情で、ガリガリと頭を掻いた。
「――……一思いに、王妃をどっかに追いやってしまえばいいんじゃないかと、思わなくもないんだ。実際、ライアン兄上から、王妃を引き取ろうかという申し出もあるし」
「ライアン大公閣下が……!?」
唐突に出てきた名前と、その申し出の意外性に、ノアは目を丸くして驚く。
どのような話の流れでそのような発言が出てきたのか気になった。
「まぁ、その申し出は、責任のすべてを俺に放り投げて、一抜けしたことへの贖罪なんだろうけどな」
ルーカスが苦笑して肩をすくめる。ライアンへの親しみが籠った表情だった。
ノアはサミュエルの顔を窺う。サミュエルがどう考えているかが気になったのだ。
「私は、その申し出を受けるも断るも、どちらでもいいとお答えしたよ」
サミュエルはノアの視線に気づき、さらりと答える。すでにルーカスとの間で話し合いが済んでいるようだ。
「……王妃殿下になんらかの責任を取ってもらうという形で、大公領に閉じ込める形をとれば、グレイ公爵家は納得するということですか?」
「納得するかどうかはともかく、罪を問うことはなくなるだろうね。あの領には、今ハミルトンが関わっているし、良いようにしてくれるんじゃないかな」
ハミルトンの名を聞いて、ノアは納得した。グレイ公爵家と繋がりが深いハミルトンならば、意を汲んで王妃に対応することなんて、お手のものだろう。
「あぁ……ハミルトン殿……。その場合、盛大に文句を言われそうですね?」
「文句よりも、いろいろと要求が来そうだよ。適当に交わすけど」
「……あまりつれないことをなさると、思いがけないしっぺ返しが来るかもしれませんよ?」
「私の考えを越える形で、ハミルトンが何かできるものかな?」
サミュエルに良いように使われそうなハミルトンを可哀想に思って、ノアは少し咎めてみたのだけれど、サミュエルにはまったく効果がなかった。むしろ、少し楽しそうである。
「……というか、俺の方が、ライアン兄上に、重荷を背負わせるつもりがないからな。追いやるなら、もっと他所にやる。――それこそ、カールトン国とか」
ルーカスがノアたちのやり取りに口を挟む形で宣言する。それは、言うなれば、王妃の死刑宣告でもあった。
傍系が王位を継ぐカールトン国で、直系の血を継ぐ王妃の存在は、邪魔でしかないだろう。
ノアはそうなった場合の王妃の行く末に思いを馳せ、そっと目を伏せた。
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