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怪盗ライフ
予告状はどうしよう
しおりを挟む「エクス!起きて!学校へ行こう!」
布団の上からバンバンと叩いて起こす
「いっ…痛……」
「早く起きろ!」
さらに強く叩く
「わかりましたから!!叩くのやめてください!」
エクスが少し不機嫌になった
今日学校へ行くと決めたのは怪盗バトルについて学生たちがどう思っているのか、どれくらい興味を持っているのか調査するためだ
「ご飯はパンを食べよう、着替え出してくれ!」
「持ってきますから、どうか朝はゆっくりさせて……」
エクスが自分の家へ着替えを取りに行った。その間に布団を畳んで部屋の角へ押しやり、床にラップを敷いてその上にパンを置く
日用品を買う、といって買ったものは歯ブラシとコップ、シャンプーにボディソープ
本当に必要なものだけしか買っていない。皿とテーブルは必要ないと判断したために購入は先送りになった
「持ってきました。ワイシャツにズボンです。学校へ行くならこの格好でいいでしょう?」
「うん。助かる」
制服など持っていない。行く学校があると言えど、あるのは名前と本校在籍という事実だけ
「このお茶はパックのお茶ですか?それともペットボトル?」
「ああ…違うのよこれは水出しの緑茶。どう?美味しい?」
エクスが一気にお茶を飲み干す。冷たくて美味しいはずだ
「おお……確かに美味しいですね」
「そうでしょうそうでしょう!!昨日ショッピングモールで君がトイレに行ってる時に買ったの!!」
「いいものを見つけましたね」
「ご自由にお飲みください、って置いてあったんだ。一口飲んだら「これしかない!」と思って買ったわけさ」
ジェスチャーを使って説明してくるあたり、本当に好きなのだと伝わってくる。冷えた緑茶は確かに美味い。水筒に入れて持ち歩きたい
「次は調理器具と食材を買ってきてください……ね!!」
叩き起こされた仕返しに叩かれる
「痛……わかってるって」
「服のサイズは問題なさそうですね。着てみてください」
パンを咥えながらエクスがいう。背はあまり高いとは言えないが、それが何かと便利ではある
「とりあえずもう行こう!情報収集しに学校へ!」
***
この世界で16歳は高校1年生にあたる。身分証明書を改めて見てみると校章が入っており、何年何組か記されている。学校で発行された身分証明書だ
クラスはエクスと同じ1年C組。アルファベットでクラスを分ける理由がさっぱりといっていいほど理解できない
高校は遠くからも通学する学生がいるので早くから開いていた
「下駄箱がありますが……」
「靴だけ脱いで教室へ行こう」
下駄箱に空きがあったのでそこへ入れる。
ドア付きなので開けられることはまず無い
1年C組の教室は、正面玄関を右に少し進み左に曲がると教室棟に着く。手前からA組、B組、C組、空き教室となっている
「一番乗りみたいですよ、私たち」
「静かだね」
「人が集まるまでお話しします?」
「その前に確認します。人が集まってきたらエクスは教室で、私は廊下で情報収集する。OK?」
「わかりました」
若者たちは怪盗バトルをどう思っているだろうか……
怪盗バトルの開催は明日の夜。それまでに宝石を1人3つ集めなければならない。
昨日突然に怪盗バトル開催が宣言されたので、宝石集めの計画性は皆無だ
「宝石は昨日の美術館から盗るとして、予告状はどうしましょう?」
「こうなったら電子メールしかないでしょ」
怪盗としては前代未聞、今から予告状を作り画像を美術館へ送りつける
「はい……?正気です……?」
「本気だよ?」
「えっ……?あっ、文面はどうしますか?」
普通では考えられないことをしようとしているのでエクスが絶句している。頭も混乱しているようだ
「『今夜、貴方の美術館から絵画を頂きに参ります』文面はこれっ。良い?」
「イリス、今日は本当に冷静ですか?イリス本人ですか?」
「こういうのは時間の問題なの。」
エクスに圧がかかる
「少しくらい狡猾じゃなきゃね!」
「あっ…はい。お任せします」
エクスが圧に負けて計画に賛同してしまう。主催者は『役者は揃いました』と言っていた。他の怪盗が参加する以上、熾烈な戦いになることは避けられない
「にしても他に怪盗なんていたんですね。驚きですよ」
「そろそろ定位置に着こう」
エクスの話を遮るような形で廊下へ出る
***
「おはよー!」
「昨日のやつ見た?」
「怪盗バトルのやつ?なんか楽しそうだよね~!」
雰囲気を出してうまく溶け込んでいるので気づかれにくい
「怪盗って華麗にお宝盗っていくものじゃないんだね」
「本でしか見たことないからわかんないや」
あちらの世界では普通に予告状を出しお宝を颯爽と盗って行ったので、他の怪盗と衝突することはまずなかった
他の生徒の話を聞いてみると『かっこいい』
『俺も怪盗になりたい』『惚れそう』と好評である
これは全員ファンにするしかないでしょう
「君誰?見ない顔だなっ…名前は?」
気配も消してうまく溶け込んでいるつもりだったが1人の少女によって破られた
「舞月だけど、君は?」
「藍本 浅日、学級委員長!!ふっふっふ……春から来なかった舞月ちゃんがまさか来てくれるとはね!HRの時に紹介するよ~!」
アイモト アサヒ 学級委員長
「果子ちゃんも来てるのかなー??」
「いや…来てない」
春から来ず、夏にいきなり来た。ということで十分に目立っているだろうが、紹介され
クラスメイトに囲まれ質問攻めにあったらボロが出てしまいそうで……
とにかくこの状況から抜け出さなければ
「ごめん!トイレ行ってくるね!!」
教室にいるエクスにサインを飛ばして走る
「先生呼んでおくよ~♪」
職員室は正面玄関の反対方向。委員長が職員室方向へ体を向けた瞬間、エクスが足音を立てずに一瞬で教室から出る
「エクス、情報収集はもういい。厄介ごとになる前に逃げよう」
「学級委員長なんですね。彼女」
「次から委員長には気をつけよう」
玄関で靴を履いて自分たちの家へと一目散に走り去っていった
***
「先生!!舞月ちゃんが学校に来たんですよ~!」
「あら本当?顔、拝もうかしら」
「トイレまで迎えに行きましょう!!」
うまく丸め込まれて逃げられたことに気づいていない
「ちょっと恥ずかしがり屋さんみたいでトイレに逃げちゃいました~」
「先生嬉しいわ~♪」
「着きました、ここのトイレだと思います!!」
とても目を輝かせている委員長
「誰も……いないようだけれど?」
そう……もう校外なのだ。トイレにはいない
「ん……本当に逃げちゃったみたいです……」
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